近年登録された茶品種について~熊本県で導入が期待される注目の品種~

はじめに

茶は永年作物であり、経済樹齢は約30年~50年といわれています。県内では、茶園面積の4割以上が樹齢30年を経過しており、根系の老化等による収量減少やうまみ成分(アミノ酸)の含量低下等が懸念されています。
台切り更新により樹勢を回復させる方法もありますが、根本的な改善にはならず、品種の転換が図られないというデメリットもあります。
また、県内の茶園の品種構成は、これまでの主要品種である「やぶきた」が7割程度となっています。このため作業の集中や摘み遅れによる品質低下、お茶の風味の画一化等につながり、多様化する消費者ニーズに対応できていないのが現状です。
そのため今回は、近年育成・登録が行われた品種で、本県で導入が期待される品種を紹介します。

注目の品種

せいめい

「せいめい」は2020年に登録された品種です。「ふうしゅん」を種子親に、「さえみどり」を花粉親に持つこの品種は、農研機構(枕崎)で育成されました。
萌芽期は「やぶきた」と比べ、5日程度早く、摘採期も3~5日程度早い「やや早生」の品種です。
収量は全茶期を通じて「やぶきた」、「さえみどり」より多く、被覆栽培を行った場合の品質面が非常に良好です。市場評価はこれからですが、緑茶のみならず、碾茶に適した品種として期待されています。
耐寒性は、赤枯れ抵抗性については「中」、裂傷型凍害抵抗性については「やや強」となっており、「やぶきた」並みとなっています。
主な病害虫に対する抵抗性は、炭疽病が「中」、輪斑病が「強」、赤焼病が「強」、もち病が「やや強」、クワシロカイガラムシが「弱」となっています。このため、クワシロカイガラムシの多発地域では注意が必要です。

「せいめい」の新芽
「せいめい」の園相

きらり31

「きらり31」は2016年に登録された品種です。「さきみどり」を種子親に、「さえみどり」を花粉親に持つこの品種は、宮崎県総合農業試験場で育成されました。
萌芽期及び摘採期は「やぶきた」と比べ3~5日早い「やや早生」の品種です。
収量は一番茶、二番茶ともに「やぶきた」より多く、条件の良い地域では「やぶきた」より5割程度多収です。また、品質はアミノ酸含有率が高く、被覆することで「さえみどり」と同等の品質となり、煎茶にした時の色沢、水色が非常に優れています。
耐寒性は、赤枯れ抵抗性については「やや強」、裂傷型凍害抵抗性については「強」となっており、「やぶきた」より優れています。
主な病害虫に対する抵抗性は、炭疽病が「弱」、輪斑病が「強」、赤焼病が「やや弱」、もち病が「弱」、クワシロカイガラムシが「弱」となっており、輪斑病以外の病虫害発生が多い地域では防除が必要です。

「きらり31」の新芽
「きらり31」の園相

さえあかり

「さえあかり」は2012年に登録された品種です。「Z1」(「たまみどり」の実生選抜品種)を種子親に、「さえみどり」を花粉親に持つこの品種は、農研機構(枕崎)で育成されました。
萌芽期及び摘採期は「やぶきた」と比べ3~4日早い「やや早生」の品種です。
収量は全茶期を通して「やぶきた」、「さえみどり」より多収で、一番茶の製茶品質は「さえみどり」と同等で、「やぶきた」より優れており、特徴的な品種香があります。また、二番茶と三番茶の製茶品質は「やぶきた」や「さえみどり」より優れているため、ペットボトル等のドリンク茶の原料に向いています。
耐寒性は、赤枯れ抵抗性、裂傷型凍害抵抗性ともに「中」となっており、「やぶきた」並みとなっています。
主な病害虫に対する抵抗性は、炭疽病が「やや強」、輪斑病が「強」、赤焼病が「強」、もち病が「やや弱」、クワシロカイガラムシが「やや弱」となっており、もち病やクワシロカイガラムシが多発する地域では防除が必要です。

「さえあかり」の新芽
「さえあかり」の園相

おわりに

茶の新植・改植は、摘採できるまでに45年を要し、未収益期間が発生しますが、近年は茶の改植等に対して、国による支援が行われているため、新植・改植が行いやすい状況にあります。新植・改植の際は、園地の選定や排水対策、うね方向の決定、定植前の土づくり等をしっかりと行いましょう。また、改植にあたっては、抜根後には天地返しを丁寧に行いましょう。
茶苗は生産に時間を要するため、人気のある品種は手に入りにくい場合があります。栽植予定のおよそ1年以上前には茶苗の注文を行いましょう。我が家の品種構成や製造期間等を考慮し、それぞれに合った品種選定を行うことで、更なる収益向上に繋げましょう。

県北広域本部 鹿本地域振興局 農業普及・振興課

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近年登録された茶品種について