茶園の秋整枝・春整枝について

はじめに

秋整枝や春整枝は、次の茶のシーズンの芽の品質や収量などを決める要素の一つです。適切な時期や位置で整枝をすることによって樹冠面が整い、芽ぞろいが良くなり、品質や収量が向上します。今回は秋整枝と春整枝の違いや、整枝のタイミング、整枝位置などを紹介します。品質と収量アップに向けて、茶樹の生育状況に合わせた栽培管理を行いましょう。

秋整枝と春整枝の比較

秋整枝と春整枝は、茶園の生育状況や凍霜害の起きやすさなどによって、どちらを行うかを決めます。基本的には秋整枝を行いますが、凍霜害を受けやすい園や生育があまり良くない園、摘採時期の集中を避けるために摘採時期を遅らせたい園では春整枝を検討しましょう。

秋整枝

①整枝時期
【秋整枝の開始の目安は日平均気温18℃下回る頃】
秋整枝を行う時期は、平坦地では10月下旬頃~11月上旬まで、山間地では10月中旬~10月下旬ごろまでです。平年値でみてみると、鹿本地域(鹿北)で10月12日、球磨地域(上)で10月14日、菊池地域(菊池)で10月17日、上益城地域(甲佐)で10月18日、水俣地域(水俣)で10月22日が日平均気温18℃以下となります。(※標高やその他の環境により異なります。)
秋整枝後に気温が高い場合、一番茶で萌芽するべき芽が秋のうちに萌芽してしまう「再萌芽」が起こります。茶園全体の2割程度の再萌芽であれば一番茶の減収への影響は少ないとされていますが、茶樹へのストレスや一番茶の芽ぞろいを考えると再萌芽を防ぐ必要があります。再萌芽は日中の気温が高いと起きやすいため、秋整枝は日平均気温が18℃を下回る頃から始めましょう。また、暑さが戻り平均気温が上がることがあるため、気象庁ホームページの2週間天気予報等で暑さが戻らないことを確認しましょう。

図1 10月10日~10月31日の日平均気温(平年値)

【秋整枝が遅すぎる場合→寒害の恐れ、越冬芽の充実不足】
秋整枝は時期が遅い場合にも茶へ影響が出るため、注意が必要です。遅い時期に秋整枝を行うと、もともと下にあった葉が表面に出ることで急に寒さにさらされ、葉焼け(寒焼け)を起こすことがあります。秋整枝が遅すぎると越冬芽(一番茶芽)が充実不足になる恐れがあるため、山間地では10月下旬ごろまで、平坦地では11月上旬までに秋整枝が完了するようにしましょう。適期の整枝が難しい場合は、春整枝に切り替えることも検討しましょう。ただし、春整枝は秋整枝と比べ摘採時期が遅くなるため注意が必要です。

【整枝の順番は晩生→早生】
早生品種(さえみどり、きらり31、さえあかり)は気温の変化に対する感受性が高いため、晩生品種(おくみどり、はるみどり)より再萌芽しやすい傾向にあります。茶園の品種構成で、早生品種と晩生品種の茶園をお持ちの方は、晩生品種の秋整枝からスタートし、後半に早生品種の秋整枝を行うことで再萌芽防止の対策となります。

②整枝の位置
整枝の位置は、茶園の今の状態や作りたい園相を考えて判断します。判断する際は、樹勢の良否や葉層をどれくらい作るのか、芽数型にしたいか、芽重型にしたいか等がポイントとなります。
来春の一番茶としたい芽とその上の節との間で、葉層を12cm確保できる位置を目安に整枝を行います。また、芽数型にしたい場合はやや深めに、芽重型にしたい場合は浅めに整枝します。
深めにする場合に注意することは、樹勢が弱くなっていないか、葉層を残すことができるかという点です。このような場合に深く整枝してしまうと、葉層が十分に確保できず、茶樹を弱らせてしまう恐れがありますので切り下げすぎないようにしましょう。

③予備整枝
5cm以上刈落とす場合は、下の葉が急に日に当たり葉焼けすることを防ぐ目的、管理機に長い枝葉が詰まることを防ぎ作業性を向上させる目的から、予備整枝を行いましょう。予備整枝は秋整枝の710日前ごろに、本整枝位置よりやや上(2葉程度)で予備整枝を行った後に、秋整枝を行うとよいでしょう。

 

図3 予備整枝の位置

春整枝

①整枝時期
【萌芽期30~40日前頃】
春整枝の場合、整枝の時期は萌芽期3040日前頃に行います。
平坦地では2月下旬~3月上旬、山間地3月上旬~中旬を目安に行います。春整枝を行う場合、秋整枝を行った場合と比較すると摘採期は34日以上遅くなります。また、摘採時期が集中するのを避けるため、春整枝の時期を遅くすることで萌芽時期を遅らせ、摘採時期を分散させることができます。

②整枝の位置
【摘採したい芽が刃にかからない高さ】
整枝の位置は、摘採したい芽が刃にかからない高さで行います。深く整枝すると生育の遅れや、芽数が減ることで減収につながってしまうため、摘採位置は慎重に決める必要があります。

③春整枝のメリット
【寒害、凍霜害の被害防止】
春整枝を行う一番のメリットは、冬の間、一番茶芽を寒さから守るための葉層を芽の上に残しておくことで凍霜害を防止できるという点です。また、凍霜害が起こった場合も、春整枝によって被害部分の一部を除去することができるため、芽を揃えることができます。

④予備整枝
前年の秋のうちに予備整枝を行っておくと、一番茶芽の芽ぞろいのばらつきをおさえることができます。その場合は、秋の予備整枝で春整枝位置よりやや上(2葉程度)の位置で整枝しましょう。

秋整枝・春整枝に共通した注意点

①整枝の際はためし切りをする
秋整枝や春整枝、摘採など茶園に刃を入れる際には必ず、切る高さが適切かどうか、確認を行います。整枝などの初めに1m程度切り進んで、高さが適切かどうか、確認を行いましょう。

②摘採前の整枝と摘採は方向を合わせて
摘採前に行う整枝ではいくつかのパターンがありますが、いずれも最終の整枝と摘採の方向は合わせるようにしましょう。面ならし(化粧刈り)や春整枝を摘採方向と同じにすることで古葉や遅れ芽の混入を防ぎます。

県南広域本部 芦北城地域振興局 農業普及・振興課

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