人工知能やICT機器の活用により放牧牛の発情予測および位置把握が可能である

農業研究センター草地畜産研究所

研究のねらい

放牧を利用した畜産経営は、多くの管理作業が省力化でき、コスト低減が可能です。しかし、放牧牛の個体ごとの観察は現地に行く必要があり、また行動観察や発情発見は、天候、放牧地の広さや牛の居場所に左右され、苦労を要することがあります。
そこで本研究では、放牧牛の行動量データをもとに人工知能を活用した発情予測技術およびGPSによる位置監視技術を組み合わせた周年親子放牧管理システムの有効性を明らかにしたので紹介します。

研究の成果

1.生体センサ(加速度計)およびGPSを内蔵した機器を放牧牛に装着し、その得られたデータをクラウド上に送信することで、遠隔地からでも牛の行動量および位置情報をモニタリングできるため、牛の探索作業の省力化、霧や大雨時などの探索不能時でも居場所が特定できます(図1、2)。

図1 放牧牛計測デバイスと当試験を実施した放牧地の概略図
図2 放牧牛のGPSデータの表示(青:現在地、灰:過去履歴)

2.放牧牛計測デバイスは、見通しが良ければ基地局から1,500m程度離れていても通信可能であり、中山間地に位置する放牧地でも利用可能です。
3.放牧牛の発情予測精度は、人工知能の発情予測日に、±2日内で発情が確認される事例は、66.7%(44/66回)で、放牧牛の発情発見の目安として活用できます(図3)。

図3 人工知能による発情予測精度

成果活用面・留意点

1.放牧牛の位置情報の把握ができることで、放牧に関する業務を一手に引き受ける牧番等の飼養管理者による牛の探索の省力化、牛群から離れた安否の怪しい牛への早急な対応ができます。また放牧地に牛を預けている飼養者は、自宅で手軽に自牛の所在が確認できるため、放牧地に対する不安を解消することができます。

2.本試験のGPSによる位置情報の取得は60分間隔で、その精度は、まれに30~50mのズレが生じることがあります。また、バッテリーは3か月程度で交換が必要です。今後、機器の性能向上により、位置情報取得の間隔やバッテリー持続時間の向上が期待されます。

 

No.987(令和4年(2022 年)6月)分類コード 08-14
987_成果情報_草地畜産_位置情報、発情予測 (PDFファイル)

畜産