「単棟ハウス遮光システムの設置による夏秋トマト栽培ハウス内の環境改善効果」

農業研究センターアグリシステム総合研究所生産情報システム研究室

研究のねらい

近年の温暖化により、夏季の高温による施設園芸作物の収量・品質の低下や作業者の労働負荷・熱中症リスクの増大など様々な問題が生じています。ハウス内環境の改善には遮光資材の展張が有効であり、単棟ハウスに外張りした遮光資材を日射条件に応じて自動展張できる遮光システムを開発しました。この遮光システムを夏秋トマト栽培ハウスに設置し、ハウス内環境の改善効果について明らかにしました。

研究の成果

1.遮光システムは夏季の晴天日において、1日あたり10分~5時間10分遮光資材を展張し、展張時のハウス内の平均日射値は、40%遮光区で屋外の約50%、30%遮光区で屋外の約60%程度となりました(表1、図1)。

図1 晴天日の日射値の推移(山都町須原)
2021年8月5日 遮光10:30~15:40

2.遮光実施時は、湿度や輻射熱を要素に加えた熱中症予防の指標であるWBGT値が1.53程度低下し、気温に比較して低下の程度が大きくなります(表2)。また、システムの稼働により、日常生活において危険とされるWBGT31以上の時間帯が低減されます(図2)。担当農家や作業者からは、遮光資材の展張時は『涼しく感じられ、作業性の向上・身体的負担の軽減が実感できる』との証言が得られました。

図2 遮光実施日における各WBGT値の積算時間
2021年7月14日~9月9日
WBGT値欠測日を除く(表2脚注参照)

3.遮光システムの稼働(遮光率40%、基準日射値800W/㎡)による総収量、可販果収量について、t検定による無処理区との有意差は認められませんでした(表3)。

成果活用面・留意点

1.遮光システムを、2021年に夏秋トマト栽培ハウス3カ所(山都町須原、山都町新小、阿蘇市宮地高原農業研究所)に設置し、4月下旬から稼働させ、山都町では9月10日まで、阿蘇市では栽培終了まで稼働させました。遮光資材にはそれぞれワリフ明涼40(遮光率40%)、ワリフ明涼30W(遮光率30%)、ダイオネット涼かD40(遮光率40%)を使用しました。遮光の基準となる日射値は、800 W/㎡としたが、山都町では724日以降900W/㎡としました。
2.8月の平均気温は平年より低く、日照時間も平年の7割程度となり、想定していた酷暑とは異なる気象条件でした。
3.遮光の基準となる日射値や遮光資材の遮光率については、地域の気象条件や栽培作物の光要求量、生育・収量・品質の状況を熟考したうえで設定します。

 

No.991(令和4年(2022 年)6月)分類コード 06-04
991_単棟ハウス遮光システムの設置による夏秋トマト栽培ハウス内の環境改善効果