「促成ピーマン」IPM技術防除体系

~有効的な天敵利用技術の構築~

はじめに

熊本市東部地域の促成ピーマンでは、スワルスキーカブリダニ(以下:スワルスキー)やリモニカスカブリダニ(以下:リモニカス)の天敵資材を利用したアザミウマやコナジラミの害虫防除方法に取り組んでいます。
そこで、これまで熊本市東部地域の促成ピーマンで導入している天敵の防除体系について、検討しましたので、その結果について紹介します。

利用している天敵

1.スワルスキーカブリダニ(写真1)

東部地域で主に利用している天敵資材です。
アザミウマ幼虫、コナジラミ幼虫および卵、チャノホコリダニを捕食し、15℃を下回ると活動が低下するため、厳寒期には生息密度が低下します。

写真1 スワルスキーカブリダニ

2.リモニカスカブリダニ(写真2)

アザミウマ幼虫、コナジラミ幼虫および卵を捕食し、活動温度は最低10℃とスワルスキーに比べ低温に強く厳寒期でも増殖するため、東部地域でも一部生産者が利用しています。前述した2種類の天敵資材を各生産者が選択し、微小害虫を抑制しています。
当課では、平成28年~29年にスワルスキーとリモニカスの定着及び、防除効果試験を行いました。その結果、2種の天敵共に安定した定着と、害虫の防除効果を確認できました。(図1・2)

写真2 リモニカスカブリダニ
図1 スワルスキー実証区における害虫および天敵の発生推移(定植日:9月26日 天敵放飼:10月21日)
図2 リモニカス実証区における害虫および天敵の発生推移(定植日:10月28日 天敵放飼:11月15日)

天敵(スワルスキー)利用スケジュール

天敵導入にまず重要なことは、害虫の発生が0の状態で放飼を行うことです(図3)。そのため、定植2~3日前の苗に(1)プレバソンF+ベストガード粒剤または、(2)プリロッソ粒剤を散布した後に定植を行います。定植し活着後に、放飼前の徹底した害虫防除のため(1)アファーム乳剤(天敵放飼7日前まで)、(2)コルト顆粒水和剤(天敵放飼14日前まで)等の散布を行い放飼前までに害虫の発生密度を低下させます。
スワルスキーは、納品当日に放飼します。放飼時期は定植後2週間を目安に気温が低下する前までに行います。

図3 促成ピーマンのIPM防除体系(案)
農薬情報については平成29年3月時点

放飼後の管理およびリセット防除について

①ハウス内環境:厳寒期は気温の低下によりスワルスキーは定着や活動が低下します。そのため暖房機を利用し15℃以上を保つよう加温します。湿度は、60%以上を保ち天敵の好む環境づくりを行い定着と活動を促します。
②農薬散布:天敵放飼後の農薬散布については、害虫の発生数の状況に応じて天敵への影響がない薬剤を散布します。病害についても同様に天敵への影響を考慮しながら、適期に予防防除を行います。
③害虫密度と農薬散布:害虫密度が急増し、やむを得ず天敵へ影響のある薬剤を散布しなければいけない状況についての判断基準の目安として、大きく3つに分けられます。

(1)葉にアザミウマ、コナジラミがいるが天敵もいる→害虫の発生は今後減少する可能性があります。
(2)天敵はいるけれど、アザミウマ、コナジラミの幼虫が増える傾向にある→天敵に影響のない農薬で防除をします。
(3)ピーマン果実に被害が増え、天敵が見当たらない→天敵防除をやめ、天敵に影響のある薬剤を使用し、農薬による防除に切り替えます(リセット防除)。天敵リセット防除を行う際は、害虫が残っていると、天敵が減少した際に害虫が急増するため、念入りに防除を行います(図3)。

土着天敵タバコカスミカメの導入

以上のように、技術の確立により天敵の利用推進を行ってきましたが、厳寒期の天敵利用には一部課題があり、コスト面も更なる検討が必要と考えています。
そこで、現在県内でも多品目で普及が進んでいるタバコカスミカメ(以下:カスミカメ)のピーマンでの導入を検討しています。カスミカメはクレオメや、ゴマを天敵温存植物として利用して増殖を促します。長所は、捕食量が多く、低温に強いため、厳寒期でも活発な活動が期待できます。従来のスワルスキーに加えた導入を行い、厳寒期以降のカスミカメによる防除効果を向上させたとと考えています。
すでに県外で導入し普及していますが、今年度熊本ピーマンでの導入試験を行うとともに、現在懸念されている果実への加害に対する対応策も含めた利用技術を確立する予定です。
タバコカスミカメは、土着天敵であり、環境への負荷はありません。また、天敵資材のなかでもより安価に取り入れることができます。
農業普及・振興課としても、産地が薬剤散布回数を減らし、労力軽減を図り、今後も安心・安全なピーマンを市場へ届けられるよう支援していきたいと思います。