いぐさの先刈時期の管理について

~原草の品質を高め良質な畳表を生産しましょう~

はじめに

平成の時代が終わり、新しい年に入って初めて収穫される、いぐさの本格的な肥培管理作業時期となりました。昨年は10月後半から11月の前半にかけては晴天が続き早くから植付けが始まったものの、12月は降雨が多くカセット式移植機械等での植付では苗の準備が遅れ、一枚のほ場で10日以上を要して植付けられたところもあります。1月は日照時間は多めでしたが、2月にはまとまった降雨があり気温も高めで推移したため特に早刈の生育は一株茎長、茎数ともに進み気味でした(2月下旬現在)。また、基肥が多かったところでは、ほ場の表面が緑味を帯びたところもありました。しかし普通刈では苗傷みや植付日のずれ等から同一ほ場での生育ムラが見うけられます。
これらのことから、4月頃には生育が旺盛な反面、一部では茎色が薄くなってくることも予想されます。 本年は特に2月に十分な地干しができず、地上部に比べて地下茎の充実がやや不足しているようですので水管理や施肥等に注意して下さい。

カラーチャートによる生育診断

平成の初め、在来種用に先刈時期のいぐさ茎(一株での最長茎)の中央部分の茎色判定をもとにした生育診断基準が作成されました。
その後、茎色の淡い「ひのみどり」や茎色のやや濃い「夕凪」などの品種が栽培されるようになり、品種別の診断基準作成について検討を行った結果、「涼風」の栽培を契機に新たな基準を設定しました(表1)。「涼風」は「ひのみどり」と同じく5.0~5.5を目安とし、茎色が濃くなりすぎないようにしましょう。「夕凪」は6.0~6.5、「ひのはるか」は在来種と同じ5.5~6.0を目途に管理を行って下さい。

先刈前の生育診断

先刈は親茎や生育前半に生育した茎を切除して、株元に光や風をあて「長い」となる新芽の発生を促すことを目的として行うものです(写真1)。
また、古茎や着花茎の伸長を止め、収穫物に老熟茎が混入するのを防ぐ選別効果もあります。通常収穫60~65日前に高さ40~45㎝で行うのが基本ですが、生育状態にあわせて調整してください。特に「涼風」は先刈茎が極力伸長しないようにしましょう。
また、先刈前に次のようないぐさ株の姿は要注意ですので、こまめな水管理や追肥の調整等で生育を整えて下さい。
1.株全体(節)が締まり過ぎ。
2.新芽が弱々しく白味が強い。
3.葉鞘にツヤがなく黒褐色で汚れている。
4.根が細く白根が少ない。
5.古い茎の枯れ下がりが多く株全体が老化している。

写真1 先刈り作業

収穫時における出芽時期別茎内 での窒素含有状況

図1は広島県立農業技術センターで15Nトレーサーを用いていぐさ茎の出芽時期と施肥窒素の含有率を収穫時(7月26日)に調査したものです(施用した窒素(硫安)の総量は3.9kg/aで品種は「いそなみ」)。
収穫時の出芽時期別の窒素含有率は6月中旬以降に出芽した若い茎で高くなっており、茎の生育のために窒素が転流しているものと考えられます。また、基肥由来は6月中旬(収穫39日前)に出芽した茎で高くなっています。一方で追肥由来は5月12日、24日、6月3日、17日の出芽日直後に施用された窒素の含有率が高くなっていました。なお6月に施用された窒素は5月の出芽茎にも含まれて出芽茎にも含まれていますが、その割合は低くなっています。
地力由来の窒素は各出芽茎とも含有率は高く、この試験では施肥した窒素の吸収率は50%以下と推定されていました(吸収率は調査により数値に幅があります)。
施用した窒素成分が多すぎると品質が低下しますので施肥基準を参考に生育にあわせて時期や施肥量を調整してください。また、根を傷めることのないように水管理等にも注意が必要です。

図1 時期別出芽茎の収穫時における由来別窒素含有率(%)
(広島県立農業技術センター:1993年)

おわりに

表2は「長い」の発生期間における早刈・普通刈の日平均気温、降水量、日照時間について、昭和53年から平成29年までを10年ごとに区切りそれぞれの平均値を示したものです(熊本地方気象台八代観測点)。平均気温は平成10年以降はやや気温が高くなっています。
日照時間は昭和53年~62年の平均では多かったのですが、その後は少ないようです。いぐさの生育においては「長い」の発生期は気象の影響を受けやすい重要な時期であり、いぐさの生産安定のためにも気象変動には留意していく必要があります。
現在、県内の高級畳表向け主力品種「ひのみどり」は、栽培しにくいため安定した生産の確保を、また 「涼風」では品質の高位平準化がそれぞれ求められています。
いぐさ普及指導室におきましてもこれらの課題を克服できるようさらに取組みを進めて参ります。

注)長い発生期:早刈は4月6半旬~6月1半旬、
普通刈は5月3半旬~6月4半旬