「涼風」は平成26年3月に熊本県の奨励品種に採用(品種登録は平成27年3月)された優品(中級品)向けの品種で平成28年産から栽培・畳表加工が始まっています。
初年目から150ha近く栽培され、平成30年産では全体の作付面積の47%を占め、「ひのみどり」と並ぶ主力品種となりました。
ただ、品種として定着するには数年以上の経過を必要とします。ここでは、「涼風」のより安定した栽培・加工を行っていただくため、主な品種の特性を紹介したいと思います。なお、本稿記載の図・表はアグリシステム総合研究所(旧い業研究所)の試験結果資料です。
いぐさ新品種「涼風」の特性について
~品種特性を理解し良質畳表を生産しましょう~
はじめに

左から「涼風」「ひのみどり」「夕凪」
「涼風」の主な品種特性
「涼風」は概ね以下のような特性があります。
1.生育の推移は1株当りの茎数は標準品種と同程度ですが、茎長は長めとなります。(図1)
2.「夕凪」「ひのみどり」より、特に「長い」の収量が多い。(図2)
3.着花はやや少なく、部分変色茎の発生は少なめです。(表1)
4.本田及び八月苗床での株の枯茎の発生は少なめです。(表1、図3)
5.茎は中太でやや硬い。(表1、図4)
茎がやや硬く中太のため、7月以降の刈取りではいぐさが硬くなりすぎる傾向があり、また部分変色茎の発生も多くなることがありますので、早刈栽培に適しています。現在までの展示ほや現地での生育状況を見ると、「涼風」は他の品種と比べて先刈茎のような早い時期に発生した茎と、その後発生した若い茎の茎色の差がやや大きい傾向があり、先刈茎が「長い」に混入すると品質の低下を招くようです。そのため先刈時には茎色が濃すぎないように生育や茎色を整えるように管理して下さい。また、収穫時には刈残りのいぐさの株元に直射日光が当り続けると「茶元」の要因となることがあります。イガラなどで株元を覆うようにしましょう。(写真2)

(11/25植、6/25収穫 平成21~24年平均)

(11/25植、6/25収穫 平成21~24年平均)


硬度(%):ダイヤルゲージにより測定。高いほど硬いことを示す


「涼風」の加工特性について
「涼風」は「ひのみどり」と比較して、畳表の品質では劣りますが、畳表1枚当りの製織時間が短くて済むので製織効率が高いメリットがあります。次のような特性を踏まえて畳表の製織加工を行って下さい。
1.茎の伸長性が良い反面、「元白」が発生しやすくなります。
2.古い茎と新しい茎の茎色の違いがやや大きいので古い茎の混入程度や原草の色合いに注意します。
3.畳表製織時の適正加湿量は重量比で14~12%程度です。
おわりに
「涼風」畳表は表2に示すように、「ひのみどり」よりもやや明るく黄緑味のある傾向があります、そのため従来の品種とやや異なった感覚があるかもしれません。いぐさ普及指導室では、これらの特性を理解し、さらに安定した栽培、畳表の生産ができるように取り組んで参ります。

2018年9月号
農業研究センター アグリシステム総合研究所 いぐさ普及指導室