トルコギキョウの生産安定

~地域の特性を考慮して稼ぐ! 効率良く・12月と5月の需要期に出荷する二度切り栽培~

はじめに

トルコギキョウは、花の色、大きさ、形と花弁数、また早晩性と品種揃いが良く、高冷地と暖地の産地リレーで周年流通しており、冠婚葬祭、ギフト、仏花などの多様な場面で使われる需要の高い切り花です。
熊本県のトルコギキョウ作付面積と出荷量は長野県に次ぐ全国2位(農林水産省公表平成29年産)ですが、冬季(1月~2月)は台湾、春季(3月~4月)は沖縄県から無加温栽培で品質の良いトルコギキョウが多く出荷されるようになっており、この時期に安定単価を得るためには、これらの産地と品質等で明らかな差が必要となっています。一方で、需要期である、12月と5月は競合産地が少なく単価が安定していること、また、燃油消費量も少なく経費が抑えられることから、天草地域では地域の特性と品種及び技術を組み合わせることで、この時期に商品率が良く、効率よく稼ぐ(稼げる)経営体系の確立に取り組んでいます。
そこで、今回は天草地域で取り組んでいる内容について紹介します。

天草地域(気象とほ場)の特徴

(1)夏季の日差しが強く、残暑が厳しい。
(2)冬季の日照時間が短い(下島)
(3)温暖で春の到来が早い
(4)浸水するほ場が多い
(5)地下水位が高いほ場が多い
(6)土壌は保肥力が低く、透水性が悪い
(7)耐候性ハウスの整備率が高い

具体的な取組み内容

ポイント1 「中輪系品種の導入」

天草地域の特徴が活かせる中輪系品種を導入することでの所得向上に取り組んでいます。
天草地域は、高潮の影響等で浸水するほ場があるため、畝を高くする必要があります。そのため、花の輪が大きくなりにくく、大輪系品種の特徴を出すことが難しい傾向にあります。
中輪系品種は、①大輪系品種より栽培本数が増やせること(大輪系より5千本多い33千本/10a)、②12月出荷での草丈や花数の確保が可能なうえ、二度切り時も開花までの期間が短く、目標とする5月上旬出荷が可能であることから中輪系品種を用いた二度切り栽培を考案しました。(写真1、4)

写真1 中輪系品種導入ほ場
(12月上旬・1番花の開花期)

ポイント2 「欠株の発生抑制」

*欠株発生の抑制(計画的な土壌消毒)による商品率向上で販売数量の増大に取り組んでいます。
*日射量が多い時期に3週間の太陽熱土壌消毒の実施
定植日から定植準備に係る期間を逆算して、前作の片付け及び太陽熱土壌消毒の開始日を設定することで、7月~8月上旬に太陽熱土壌消毒の期間を3週間以上確保して行いました(写真2)。

写真2 太陽熱土壌消毒の実施状況

ポイント3 「RTF苗での定植」

*定植後の生育ステージが揃うRTF苗の育苗並びに定植に取り組んでいます。

 

※RTF苗とは、抽だいしているが未分化でかつ老化していない活力のある苗のこと。(熊本県農業研究センター開発技術)

 

(1)自家育苗でのRTF苗育苗
自家育苗では、底面吸水と冷房育苗及び適正な追肥管理で、成苗率の向上と苗の生育スピードを揃え、RTF苗に仕上げて定植しました。(平成30年4月号「技術と方法」参照)
(2)購入苗の仕上げ(RTF苗)育苗
夜温が下がり始める8月20日以降に納品された本葉2対半以上展開した苗をRTF苗までに育苗しています。
育苗方法は、寒冷紗を被覆した定植するハウス(ほ場)の一角を均平に整え、その上にビニールを敷き、風よけビニール等で苗に直接風が当たらない対策を施した苗置き場を作り、3,000倍に希釈した薄い液肥を毎日施用して管理しています(写真3)。

写真3 購入苗仕上げ育苗での定植前のRTF苗

ポイント4 「5月出荷の二度切り栽培」

*出荷量並びに所得向上を図るための5月出荷の二度切り栽培に取り組んでいます。
天草地域は、冬季が温暖で他産地に比べて気温上昇も早いため、収穫後株にトンネル蒸し込み処理を1月10日から1月20日の間に開始することで4月中旬からの出荷が可能です。天草地域では、フラワーネットを活用したトンネルで蒸し込み処理を行っています(写真4)。
今年産では、この栽培体系に10戸の農家が取り組んでいます。その結果、1番花の出荷は11月下旬~1月中旬、二度切り栽培のトンネル蒸し込み処理も計画通りに行われ、5月の需要期出荷に向けた管理が行なわれています。
この取り組みの結果、天草地域の11月~1月の10aあたりの販売数量(9月3日までに定植)は、取組前(H28年産)の2.2万本が、H29年産が2.3千本、H30年産では2.5万本と年々増加しており、年内から年明けにかけての需要期安定生産が図られています。

写真4 フラワーネットを活用したトンネル蒸し込み処理状況

おわりに

トルコギキョウは、生理生態の多くが解明されており、品種も多様性に富んでいることから、地域特性を活かすことで稼げる経営の実現が可能となっています。ほ場の特性や自分の経営形態を踏まえて品種と定植日の構成を考え、生産安定を目指しましょう。