ニホンナシ「幸水」「新高」の発芽不良発生軽減対策

~元肥時期の変更と予備枝由来の発育枝利用~

はじめに

近年、ニホンナシ「幸水」「新高」において花芽などが枯死(図1)する発芽不良が発生しています。主な症状は、開花・展葉の遅延や不揃い、花蕾の減少や枯死、芽枯れなどで結実量の減少を招きます。発芽不良の発生率が高いほど、生産量への影響が大きく、経営上の問題となります。
当初、発芽不良は「幸水」の加温ハウス栽培で発生が確認されたことから、ビニール被覆時期までの低温遭遇時間不足が要因と考えられていました。しかし、2009年春、熊本県を含む九州各県で、十分に低温要求量を満たしている露地栽培でも発芽不良が発生したため、低温遭遇時間不足だけがその要因ではないと考えられました。

図1 耐凍性試験のえき花芽の状態(左が生存芽、右が枯死芽)
(熊本県農業研究センター果樹研究所)

発生要因

温暖化の影響により秋冬期の気温低下が遅延し、以前に比べ遅くまで根が動き続けるようになりました。肥料養分を晩秋まで吸収し続けることで樹体、特に花芽の窒素含有量が増加し耐凍性が高まらず、冬の凍害による発芽不良が増加することが農研機構、鹿児島県及び本県果樹研究所の調査で明らかとなりました。
また、発芽不良は長大な長果枝(120cm以上)ほど発生が多く (図2)、中でも主枝・亜主枝から直接とった長果枝は、予備枝由来の長果枝に比べ発生が多くなります(図3)。
つまり発芽不良の発生を軽減するには、花芽の耐凍性を高めるための栽培管理を行う必要があります。

図2 「新高」における長果枝の中庸枝・長大枝の発芽不良の発生程度(2013)
注)中庸枝:80cm程度の長果枝 長大枝:120cm以上かつ太さ
18㎜以上の長果枝(熊本県農業研究センター果樹研究所)
図3 「新高」における直接枝と予備枝由来枝の発芽不良の発生程度(2014)
注)「新高」は41年生 (熊本県農業研究センター果樹研究所)

発生軽減対策

発芽不良の主な要因が凍害であることから以下の対策を行いましょう。

(1)元肥時期の変更

図4は元肥の施用時期の違いが花芽の枯死率に及ぼす影響を示しています。元肥を3月に施用した場合、10月施用に比べ発芽不良の発生が減少しています。そのため発芽不良が発生している園では、元肥の施用時期を見直してみましょう。窒素の遅効きによる耐凍性の低下を防ぐため、秋(10月以降)の施肥は中止し、春(2月下~3月上)に元肥を施用します(表1)。

表1 ナシの施肥時期と施肥割合

(2)せん定(予備枝由来の発育枝利用)

側枝には、主枝・亜主枝(骨格枝)の陰芽から発生した発育枝を利用する(直接枝)のではなく、予備枝由来の発育枝を用いるようにします。そのためには、前もって予備枝を準備する必要があります。
骨格枝の真上から発生した太い発育枝を予備枝とした場合、そこから発生する枝は長大な枝となりやすいため、発芽不良が発生するリスクが大きくなります。予備枝には、骨格枝の横~斜め下から発生した枝で鉛筆大の太さの発育枝を用いるようにします(図5)。
特に「幸水」では、樹勢強化や収量確保のために徒長的な発育枝も予備枝にすることがあります。樹勢の強い樹では、予備枝数と側枝数を同等とし、基部径が16mmを超えるような徒長枝は使わないなど予備枝とする枝の発生位置や太さに留意しましょう。どうしても骨格枝上部しか枝がない場合は、骨格枝上部の徒長枝基部10mm程度を残して切り、骨格枝に近い位置に発育枝を発生させ、翌年の予備枝としましょう(図6)。

図5 予備枝に適した発育枝の位置
図6 「幸水」における徒長枝の管理方法