ミニトマトにおける土壌病害対策

~低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒技術~

はじめに

ミニトマト栽培において、青枯病や萎凋病などを始めとする土壌病害は、発病しても栽培期間中の防除対策がとれず、甚大な経済的損失につながります。
土壌病害の対策としては、化学合成農薬による土壌消毒が行われていますが、環境保全の観点から、化学合成農薬を使用しない防除技術に対する注目が高まっています。
そこで、「低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒」の防除効果等について紹介します。

取り組み内容について

土壌還元消毒とは、クロルピクリン等の土壌消毒剤を使用せず、土壌に有機物(米ぬか、フスマ、糖蜜など)と水を投入し、ビニール被覆するだけの簡便な土壌消毒方法です。
効果の仕組みは、太陽熱によって土壌微生物が急激に増殖し、有機物を分解することによって酸素が欠乏し、土壌が還元状態になることや有機酸・金属イオンの発生等の複合的な要因によって、病原菌密度を低下させます。
しかし、以前から有機物として利用されていた、米ぬかやフスマは土壌への混和が必要で、作業が大変であること、糖蜜は安定的な入手が困難であったことが問題でした。
そこで今回、処理が簡易で、土壌の深層まで消毒可能な低濃度エタノール(商品名:エコロジアール)を用い、7月上旬に処理を行いました。
土壌還元消毒が安定した効果を発揮するためには、30℃以上の地温を確保することが必要とされています。処理期間中の地下20cmの温度を計測したところ、期間を通して30℃を上回っていました(表1)。
処理後に、ジピリジル試薬を用いて土壌還元状態を調査したところ、表層から20cmまでの部分では、発色が見られ、還元状態となっていました。試験を実施したほ場では、表層から約30cmの部分に粘土層があり、低濃度エタノールが浸透しなかったことから、還元状態になっていなかったと考えられます(写真2)。
しかし、線虫やフザリウム属菌が処理後には検出されず、本ぽでも青枯病を始めとした立枯症状の発生率を前年の10.6%(212株)から1.1%(24株)まで抑制したことから、低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒の効果を確認することができました(表2)。

表1 処理期間中の地温推移
表2 試験前後の土壌生物相分析結果
写真2 土壌還元状態の調査

土壌還元消毒の注意点

土壌還元消毒では、「太陽熱」、「水分」、「有機物」のうち、どれか一つでも欠けると正しく効果を発揮できません。そのため以下の3点に注意して処理することが必要です。

1.処理期間中の地温と水分

処理期間中において地温30℃以上を確保し、適度な水分が必要です。そのためには、湛水後に廃ビニールを隙間なく被覆をすることが効果的です。

2.有機物の流出

低濃度エタノールは水に溶けやすく、作業中や処理中に周辺のほ場や側溝等に流出する場合があります。そのため、水はけが良すぎるほ場では使用を避ける必要があります。

3.施肥量の再検討

土壌還元消毒を行うと有機物が分解されて窒素源となります。土壌還元消毒後に土壌分析を行い、窒素をはじめとした施肥量の再検討が必要です。

最後に

今回紹介した、低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒技術は、環境や人体に影響が少なく、正しく処理することで、安定した高い効果を得られる方法です。
さらに近年、トマト等では、土壌還元消毒の有機物として使用する、輸入フスマに含まれるクロピラリドによる生育障害の発生が懸念されています。低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒は、今後普及が見込まれる技術です。
しかし、低濃度エタノールの資材コストは決して安くありません。注意点をしっかり理解して活用しましょう(表3)。

表3 既存土壌消毒技術との比較

2018年4月号
県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課