促成イチゴの天敵利用技術について

~化学農薬だけの防除体系から脱出!天敵導入してみませんか?~

はじめに

イチゴ栽培では、微小害虫(ハダニ類・アザミウマ類等)の被害を受けると生育や収量に大きな影響がでます(写真1)。
特に、ハダニ類については、薬剤抵抗性の発達で有効な薬剤も少なく、新規薬剤の登録もここしばらくは期待できないことから、化学薬剤のみに依存した防除は難しくなっています。
そこで、玉名地域では、化学薬剤への依存度を下げるため、天敵資材や物理的防除資材を組み合わせた総合的病害虫管理(IPM)技術の確立に取り組んでいます。
今回は、現地実証調査で得られた結果をもとに、天敵利用技術のポイントを紹介します。

写真1 ハダニ類の被害株(写真中央)

天敵の特徴について

ハダニ類の防除には、2種類の天敵を併用します。それぞれの天敵の特徴は以下のとおりです。

1.チリカブリダニ(以下、「チリ」)

移動能力が高く、ハダニ類を積極的に捕食します。ただし、餌となるハダニ類がいないと餓死するため、長期間の定着は期待できません。

2.ミヤコカブリダニ(以下、「ミヤコ」)

ハダニ類の捕食量は少なめですが、花粉やアザミウマの幼虫なども餌として食べるため、高い定着性を有しています。

写真2 利用する天敵
※天敵写真 アリスタライフサイエンス株式会社より提供

天敵放飼タイミングについて

天敵利用技術成功の最も重要なポイントは、放飼前の害虫密度をできるだけゼロにしておくこと(ゼロ放飼)です(表1)。
昨年度の調査ほでも、ゼロ放飼が行えたため、収穫後半まで安定した効果が得られました。
したがって、育苗後期~定植後に、殺ダニ剤でハダニの密度を抑えた上で、頂花房開花後(11月上中旬ごろ)に、チリとミヤコを同時放飼することが重要です。
また、春先の気温上昇に伴い、ハダニ類が急増する場合があるため、厳寒期(1~2月)にも、事前にチリを追加で放飼します(表1)。

表1 ハダニ類の天敵利用体系

天敵放飼後の管理と注意点

放飼後は、天敵に影響の少ない薬剤で防除を行うことが基本となります。
また、低コストで実施可能な耕種的防除(ハウス内外の除草・葉かぎ後の下葉のハウスからの持ち出し等)も必ず行い、微小害虫の発生抑制を図ります。

1.ハダニ類

ハダニ類は、ハウス内の一部の場所から被害が広がるケースがほとんどです。日ごろから発生状況を把握するとともに、スポット防除も入れながら、ハウス内のハダニ密度を長期間低く抑えます。

2.アザミウマ類

アザミウマ類は、年内防除を徹底した上で、春先からの急増に備えて、2月から防除を開始すると効果的です。
2月は天敵への影響が少ない薬剤を使用しますが、4月以降の多発時期は、状況に応じて化学農薬を中心した防除に切り替えます。

H28年度の実証結果について

玉名地域では、H28年度、県事業を活用し、JAたまな横島イチゴ部会の約百名が、天敵導入に取り組みました。栽培後のアンケート調査では、取組農家のうち9割超が、化学農薬のみの防除よりも、天敵を利用した方が高い防除効果があったと評価しました(図1)。「春先の忙しい時期に薬剤散布回数が減ったため、省力化につながり楽になった」「消費者の安全・安心に対する関心は高いため、天敵利用を進めていきたい」という意見がある一方で、「資材代が高い」、「失敗した」との声もありました。今後は、コスト比較を行うとともに、失敗の要因を振り返り、安定した防除効果が得られるよう再検討する必要があると考えています。

図1 JAたまな横島イチゴ部会の天敵利用者のアンケート結果(抜粋)

最後に

微小害虫に対する化学農薬の効果は、生産者間で差があります。まずは、自身のほ場で効く農薬・効かない農薬を見極め、ローテーション防除を行い、限られた農薬が長期間有効に使えるようにしましょう。
また、今回紹介した天敵利用技術は、横島イチゴ部会の結果からも、ポイントを押さえれば取組1年目の方でも十分効果を感じられるような取り組みやすい技術です。注意点や特性などを把握した上で、天敵を利用した防除技術についても実践してみましょう。

2018年1月号
県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課