夏秋雨よけナス栽培における天敵の活用

~アザミウマ対策の強い味方、タバコカスミカメの上手な使い方~

はじめに

阿蘇地域では、高森町を中心に夏秋ナスの生産が盛んです。
しかし、近年、アザミウマ類による果実品質低下が問題となっています。特にアザミウマ類は、世代交代が早く、化学農薬に頼った防除が年々困難な状況にあります。
そこで、冬春ナス栽培で導入が進んでいる天敵利用技術(スワルスキーカブリダニ、タバコカスミカメ)について、阿蘇地域の夏秋作型で検討しましたので、その効果と注意点について説明します。

バンカープラントの準備

夏秋ナスにおいても、タバコカスミカメの定着を目的に、クレオメやゴマといった植物(以下バンカープラント)をハウス内に植えておく必要があります(写真1)。
バンカープラントは、ハウスの妻面やサイド、谷下などに10m毎に植え、タバコカスミカメを放飼するまでにある程度成長させておきます。したがって、計画的なほ場準備と種まきが重要です。

写真1 クレオメ(右)とクレオメ上のタバコカスミカメ(左:矢印)

1.クレオメ

初期生育が遅いのが難点ですが、栽培期間を通してタバコカスミカメの増殖が期待できます。
また、株の充実とともに側枝も発生し、初夏から晩秋まで花を咲かせ続けます。

2.ゴマ

クレオメより成長が早く、タバコカスミカメの増殖効率も高い利点があります。ただし、は種後2ヶ月程度で枯れるので、栽培期間中の植え替えが必要となります。

天敵放飼時期について

天敵は、ナスの定植後できるだけ早く放飼します。各天敵の放飼時期と目安となる頭数は以下のとおりです。

1.スワルスキーカブリダニ

定植後10日前後に50,000頭/10aをナスの葉の上に放飼します。

2.タバコカスミカメ

定植後2週間前後に2,000頭/10aを放飼します。

放飼時のポイント

放飼前に薬剤による防除をしっかり行い、ほ場内のアザミウマ類の密度を出来る限り下げておくことが重要です(ゼロ放飼)。
したがって、定植時にシアントラニリプロール水和剤などを処理するとともに、定植1~3日後にエマメクチン安息香酸塩乳剤などでアザミウマ類の徹底防除を行います。
また、放飼後は、天敵の定着を促すため、約2週間程度は、農薬や葉面散布剤の使用を控えます。

天敵放飼後の管理

放飼後は、害虫発生の状況を確認しながら天敵に影響が少ない農薬で防除を行います。
また、タバコカスミカメは、バンカープラントを中心に生息する特性があることから、定期的にほ場全体に虫を広げる必要があります。
タバコカスミカメが増えたら、バンカープラントの先端を30㎝程切り取り、ナスの株上に置いてタバコカスミカメを移動させます(写真2)。
この作業を定期的に繰り返すことで、ハウス内全体にタバコカスミカメが行き渡るようになります。

写真2 クレオメをナス上に静置している様子

現地事例紹介

阿蘇地域で取り組んだ実証展示ほ(表1)の結果を説明します。
実証ほでは、天敵の放飼が遅れたため、5月~6月に約4,000頭/10aの放飼となりました。しかし、ゼロ放飼を行うことができ、特に害虫の多くなる時期(7~8月)に、十分な天敵定着を確認できました。
今年は、栽培期間を通じてアザミウマやコナジラミの発生が少ない傾向でしたが、天敵定着後に急激に害虫が増えることがなかったため、ある一定の抑制効果があったと考えています(図1)。
なお、スワルスキーカブリダニ以外の天敵については、夏秋期の雨よけハウス下での導入事例がほとんどないため、今後も継続して効果を確認していく予定です。

表1 展示ほの耕種概要
図1 ナスの葉上における害虫及び天敵の密度推移

最後に

天敵の導入により化学農薬の使用回数が削減でき、防除に係る労力やコストの削減が期待されます。ただし、化学農薬の種類や使用回数が減ることで、阿蘇地域においてもこれまで問題にならなかった害虫(例:ニジュウヤホシテントウ、ツマジロカメムシ等)が発生する場合がありました(写真3)。
多発すると多少天敵に影響ある農薬での防除が必要となりますので、日頃からほ場をよく観察することが重要です。

写真3 天敵導入ほ場に発生した害虫

2018年2月号
阿蘇地域振興局 農林部 農業普及・振興課