天敵を活用したクリタマバチの防除

~適切な天敵保護によりクリの安定生産を目指しましょう!~

はじめに

近年、県内クリ産地でクリタマバチによる被害が問題となっています。
クリの害虫であるクリタマバチは、中国から侵入した害虫で、熊本では昭和20年代に被害が確認されています。当時、その防除対策として抵抗性品種の育成など様々な取組が行われ、昭和50年代にクリタマバチの天敵であるチュウゴクオナガコバチを中国から導入し、クリ産地に放飼され定着したことで、平成初期以降ほとんど被害がありませんでした。ところが、最近になって再び、クリタマバチによる被害が県内各地で増加しています。
そこで、被害発生状況や天敵であるチュウゴクオナガコバチの寄生数を調査するとともに、天敵利用による環境に配慮した防除体系の確立に向けて取組みましたので紹介します。

被害再発生の原因と天敵の寄生サイクル

天敵の導入後、いったん低下した被害が最近になって再び増加した原因の一つとして、天敵の個体数が減ったことが考えられます。
天敵は害虫に寄生することで害虫を駆除しますが、餌となる害虫が減ると天敵も減ります。また、クリタマバチの天敵であるチュウゴクオナガコバチには、クリタマオナガコバチ等の高次寄生蜂と呼ばれる天敵(言わば天敵の天敵)が数種類存在します。害虫が再び増え始めても、高次寄生蜂により天敵の増殖が抑えられ、その機能が上手く発揮されず、結果的に今回の被害の再発生につながったと考えられます。
そのため、それぞれの生態を考慮した管理方法で、天敵を増やす必要があります。今回の被害の再発生に繋がったと考えられます。

クリタマバチ、チュウゴクオナガコバチおよび高次寄生蜂の生態

1.クリタマバチ

クリタマバチは6月頃にクリの新芽に卵を産み、越冬した幼虫が春になって大きくなると緑色や赤色の球形のゴール(虫こぶ)を作り、このゴールができた芽は新梢が正常に伸びません(写真1)。クリは新梢(結果枝)が伸びた先に雌花が着くため、頂芽付近の芽が寄生されると着毬数が減り、収量が少なくなります。

写真1 クリタマバチによる被害(ゴール)

2.チュウゴクオナガコバチ

チュウゴクオナガコバチ(写真2)は、ゴール内にいるクリタマバチの幼虫に寄生し、ゴールの中で蛹となって越冬します。翌年、3月下旬から4月上旬に羽化した成虫が、またクリタマバチの幼虫に卵を産みつけ餌にすることで、クリタマバチを駆除します。

写真2 チュウゴクオナガコバチ
成虫とゴール内の幼虫

3.高次寄生蜂

羽化したチュウゴクオナガコバチは、ゴール内のクリタマバチの幼虫に産卵し、5月には幼虫期を迎えます。このチュウゴクオナガコバチより遅れて羽化・産卵を迎える高次寄生蜂は、幼虫期にあるゴール内のチュウゴクオナガコバチに卵を産み付け、餌とします。

天敵と高次寄生蜂の羽化時期の違いを考慮した天敵保護

1.せん定枝の処分時期に注意

クリタマバチの幼虫を餌として成長したチュウゴクオナガコバチは、ゴールの中で蛹の状態で越冬するため、せん定等で切ったゴールの着いた枝を園外に除去すると、天敵も一緒に捨てることとなります。そのため、せん定した枝は、しばらく園内に置いておくことが必要です(写真3)。
しかし、いつまでも放置しておくと、今度は高次寄生蜂が羽化し、天敵の密度低下につながるため、チュウゴクオナガコバチの羽化が終わったら、すぐにせん定枝を処分してください。
なお、枯れたゴールの中にはチュウゴクオナガコバチか高次寄生蜂しかおらず、クリタマバチは入っていません。

写真3 ゴールが付いた剪定枝

2.天敵保護のポイント

これらのことから、天敵を増やすために次の2つのことを行ってください。

①せん定した枝をチュウゴクオナガコバチの羽化が終了する4月中旬まで園内に残す。

②高次寄生蜂が羽化する前の4月下旬にはせん定枝を焼却または埋没する(図1)。

図1 クリタマバチとチュウゴクオナガコバチおよび高次寄生蜂の羽化・産卵時期

現地事例紹介

再び被害が増加したことを受け、本県では、平成27年から県内主要産地で被害調査を行い、翌年からチュウゴクオナガコバチと高次寄生蜂の羽化調査を行っています。本年度行った調査では、すべての産地でチュウゴクオナガコバチが確認されていますが、一部地域では寄生率が低い状態でした。
玉名地域では、南関町、和水町の2園(丹沢、杉光)で調査を行っており、いずれの園でもチュウゴクオナガコバチの定着を確認し、クリタマバチゴールへの寄生率は前年よりも高くなっていました。また、チュウゴクオナガコバチの羽化は4月12日までに終了し、4月26日から高次寄生蜂の羽化が始まっており、玉名地域ではこの間の時期にせん定枝の処分を推進しています(図2)。
防除対策の取組によって玉名地域のクリタマバチの被害は徐々に減少してきたものの、抵抗性が低いとされる杉光等を中心にまだまだ被害が見られるため、今後も、この取組を進めていきます。

最後に

クリタマバチはコストの割に殺虫剤による防除効果が低く、天敵の活用が最も効率の良い防除方法と考えられます。
継続的な天敵の保護・活用をしてクリタマバチの被害を減らし、クリの安定生産を目指しましょう。

2019年3月号
県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課