定植前のイチゴのハダニ防除技術について

~育苗期における健病苗生産技術の確立~

はじめに

イチゴの安定生産を図るためには、効果的な病害虫防除が不可欠です。特に、難防除害虫の1つであるハダニは、育苗期から防除の徹底を図り、本ぽに持ち込まないことが重要です。
そこで、熊本市の白浜地区で、育苗期にできる効果的なハダニ対策として、新たな防除技術を検討しましたので、得られた結果や課題について紹介します。

育苗期のハダニ防除技術について

今回、苗に寄生したハダニを防除するため、定植直前に蒸熱処理と炭酸ガス処理の2つの防除技術を現地実証しました。
それぞれの主な特徴は、表1のとおりです。

表1 実証した技術の特徴について

1.蒸熱処理

定植苗を50℃の蒸気で10分間くん蒸します。害虫ではハダニやアブラムシ、病気ではうどんこ病が防除できます。
装置は、1~1.5坪の予冷庫での利用を想定した大きさになっており、1回あたり約1,000株を処理することが可能です。

蒸熱処理(①蒸熱処理装置、②予冷庫、③苗搬入)

2.炭酸ガス処理

定植苗を50~60%の高濃度炭酸ガスで24時間くん蒸します。この処理では、害虫のハダニのみを防除できます。
また、処理能力は、装置の種類やイチゴの苗の大きさなどによって異なりますが、今回使用した機材では、約13,780株が処理できます。

炭酸ガス処理

処理効果について

株の1複葉を1葉とし、1コンテナ10株×10コンテナ(計100株)のハダニ数を調査しました。各処理の結果は、以下のとおりです。

1.蒸熱処理

機械の動作や処理効果を複数回確認するため、2回にわけて960株を処理しました(24株/コンテナ×20コンテナ×2回)。
処理前のハダニ密度は、10葉あたり0~2頭とやや低密度でしたが、処理後はハダニが0頭となり、防除効果を確認できました(表2)。

表2 蒸熱処理前後のハダニ数(頭/10葉あたり)

2.炭酸ガス処理

アグリクリーナーBタイプを用い、本ぽの面積に合わせて6,624株を処理しました(46株/コンテナ×144コンテナ)。
処理前のハダニ密度は、10葉あたり0~38とややバラつきがありましたが、処理後はハダニが0頭となり、こちらも防除効果を確認できました(表3)

表3 炭酸ガス処理前後のハダニ数(頭/10葉あたり)

その他(苗への影響等)

炭酸ガス処理および蒸熱処理ともに、処理後に一部の株で葉の傷みが見られましたが(写真1)、10日程度で新しい葉が展開し、生育に大きな影響はありませんでした(写真2)。
なお、処理によるわずかな薬害症状とともに、コンテナ内での葉の痛み等も多かったため、処理する際には、徒長のない苗生産が重要です。

写真1 処理後の葉の傷み
写真2 処理2週間後の苗

まとめ

今回、育苗期における定植苗に蒸熱処理、炭酸ガス処理の現地実証を行い、ハダニ密度をゼロにすることができました。また、本ぽ期の効果的なハダニ防除(天敵利用)にも繋がっており、有効な技術の一つであると言えます。

今後の課題等

両処理とも個人で機材を購入するには、費用がかかります(100万円~)。また、処理できる株数も限られているため、面積の大きな生産者には導入しづらいといった課題が残されています。
したがって、①装置を部会等の組織で共同利用する、②処理の外部委託、③親株への処理など、今後の普及へ向けて引き続き検討する必要があります。

最後に

イチゴは、育苗期、本ぽ期と1年間切れ間ない栽培管理が求められます。このような中でハダニ防除は、育苗期からの防除徹底が重要です。前述の新技術も効果がありますが、通常の葉かぎ後の病害虫防除の励行も、重要な基本管理技術です。H30年産も健苗育成を目指し、できる技術から実践をお願いします。

2018年5月号
県央広域本部 農林部 農業普及・振興課