宿根カスミソウの生産安定

~高温期定植作型におけるタイベックマルチの利用と土壌還元消毒について~

はじめに

本県では、菊池、熊本、宇城および天草地域を中心に宿根カスミソウの生産が盛んであり、作付面積、出荷本数ともに日本一の産地となっています。
宇城管内での宿根カスミソウの定植は、高温期でも草丈が確保できる耐暑性品種の導入により、早いところで7月下旬より始まります。しかし、近年、夏場の異常高温等の影響により、草丈が十分に確保できずに咲いてしまい(短茎開花)、特に、7月下旬~8月中旬に定植し、9月下旬~10月に開花する作型(以下、高温期定植作型)で切り花品質の低下が多く見受けられます。また、この作型では、フザリウムや萎凋細菌等による土壌病害が多く発生する時期にもなるため、病気による欠株もかなり発生しています。
そこで、今回は、高温期定植作型において、宇城管内で行ったタイベックマルチと土壌消毒の展示ほ結果を中心に、高品質かつ欠株を減らすための管理ポイントついて紹介します。

タイベックマルチについて

宿根カスミソウは、本来、生育適温が15~25℃と、比較的冷涼な気候を好む作物です。そのため、耐暑性品種が導入されたとはいえ、高温期定植作型において高品質な切り花を生産するためには、十分な降温対策を実施する必要があります。その対策方法として
1.定植の2週間前から、寒冷紗等でほ場を被覆し、地温を低下させる。
2.定植後は、天井ビニルを被覆せず、降雨・遮光対策として4mm目の防風ネットで開花直前までハウスを覆う。
等が挙げられますが、これ以外に、タイベックマルチの利用も有効な手段になります。
タイベックマルチは、白黒マルチに比べ、遮熱性、通気性、透湿性が優れるため、菊池地域では、高温期定植作型において広く利用されていますが、宇城管内での利用者は少ない状況でした。そこで、管内でのタイベックマルチの普及拡大を目的とした展示ほを設置し、地温の推移、平均採花日および切り花品質について調査を行い、その効果について検討を行いました。

まず、地温の推移については、タイベックマルチが白黒マルチより、8月で平均地温が2.7℃、9月で1.5℃低くなりました(図1)。
次に、平均採花日および切り花品質については、タイベックマルチが白黒マルチに比べ、平均採花日が1週間程度早くなり、切り花品質は、2L、Lの割合が多くなり、全体的にボリュームアップしました(表1)。
これらの結果から、高温期定植作型におけるタイベックマルチの有効性について確認することができましたが、使用する際にはいくつかの注意点があります。それは、①白黒マルチと比較すると、透湿性が高く、乾燥しやすくなるため、土壌の状態を見ながら、潅水をやや多めにする。②母の日に向けた二度切り時においてタイベックマルチを用いた場合、地温の低下により、2番花の開花が遅れる事例があります。そのため、生育状況を確認しながら電照による長日処理や暖房による加温等を行います。
また、タイベックマルチ自体、白黒マルチと比較し、高価な資材であるため、最低でも3年間は使えるように、丁寧に扱うようにしましょう。

土壌消毒について

近年、前述したように、糸状菌や細菌による土壌病害が問題となっています。そのため、定植日から定植準備にかかる期間を逆算して、確実に土壌消毒を実施するようにし、特に、前作で萎凋細菌病の発生が確認されたほ場については、クロルピクリン等による薬剤処理を規定の使用量を守り行ってください。
また、宇城管内では、近年、薬剤消毒に代わる新たな土壌消毒方法として、低濃度エタノール(商品名:エコロジアール)を用いた土壌還元消毒が注目されています。この資材の特徴として、従来のフスマ等を使った還元消毒と比べ、より深い部分まで消毒できるため、萎凋細菌等の土壌の深い部分に生息している病原菌に対して効果が高いといわれています。
そこで、宇城管内において、前作で萎凋細菌病が多発し、採花がほぼ出来なかったほ場で低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒の試験を行ったところ、病原菌数を大幅に減少させ(表2、表3)、また、定植後の欠株もほぼゼロに抑えることができました。

この結果より、宿根カスミソウ栽培において、低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒は有効であるということが確認されましたが、このような成果を出すには、いくつかポイントがありますので紹介します。

1.土壌還元消毒を行う際には、土壌全面をしっかりとビニルで被覆し、空気が入らないようにする。
2.低濃度エタノール散布後1週間は、日射により高温を保てるほうが消毒効果が高い事例が多いことから、事前に天気予報で晴天がしばらく続く日を確認してから散布を行う。
3.土壌をある程度湿らせ、消毒ムラをなくし、効果を安定させるため、低濃度エタノールの散布2~3日前に事前潅水を行う。
等が挙げられます。

この外にも注意点として、低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒を実施する場合、大量の水が必要となるので、基本的には、ボーリング等の潅水設備が整っているほ場が対象となります。また、ほ場の土質や発生している土壌病害の種類により、資材投入量や潅水量が変わってくるので、事前にメーカーや指導員等と相談し、投入量等を決定してください。