水稲低省力栽培技術「乾田直播」の現地実証について

はじめに

本県の平坦地から山麓準平坦地にかけての土地利用型農業は、5月下旬からの一か月間、麦収穫から耕起・代かき、そして田植えまでの作業が集中します。複数の集落にまたがるような大規模な経営体や地域営農組織では、この一か月間の機械やオペレーターをどう確保するかが課題となっています。
そこで、本年5月から大津町の大規模地域営農法人「(株)ネットワーク大津」の黒ボク土水田をお借りして、代かきと田植えを省略して麦後のほ場に直接種籾を播く「乾田直播」の実証を行ったので、その概要を紹介します。

「乾田直播」の特徴と安定栽培のポイント

1.「乾田直播」の長所と短所

「乾田直播」は、通常の移植栽培と比べて次のような長所と短所があります。

 

①長所
・省力的である
・スクミリンゴガイの被害を受けにくい

 

乾田直播では、移植栽培で必要な育苗及び代かきを行なわないため、その分の労働力が削減されます。
また、播種後1か月程度は乾田状態で管理するためこの間に稲が固くなり、入水後もスクミリンゴガイの食害を受けにくくなります。(写真1)

 

②短所
・水持ちが悪くなる
・雑草防除の労力がかかる

 

代かきを行わないことで水持ちが悪くなるため、大量の用水が必要となり、肥料持ちも悪くなります。
また、1か月程度の乾田期間の間に雑草が増えやすく、除草剤の散布回数が多くなる傾向があります。

写真1 乾田期間の稲の様子

2.「乾田直播」安定栽培のポイント

乾田直播の安定化のためには、次の方法で前述の短所をできるだけカバーすることが必要です。

 

①鎮圧等による漏水防止
出来るだけ水持ちを良くするため、播種後にローラによる鎮圧作業等を行って漏水を防止する。

 

②除草剤の体系処理による雑草防除
播種直後の土壌処理剤と入水後の一発処理剤の体系処理に加え、必要に応じて入水前の茎葉処理剤を組み合わせて雑草防除を行う。

 

③適切な肥料と施肥量の設定
肥料持ちが悪くなるため、緩効性窒素を主体とした肥料を用い、施肥量もやや多めにする。

「乾田直播」現地実証の概要

1.耕種概要

現地実証ほの耕種概要は次表のとおりです。

※1:K社製施肥播種機(商品名:トリプルエコロジー)を使用。
※2:播種直後(同日)に作業を実施。
※3:(A) 播種同時散布 (B) 乗用管理機で散布 (C) 動力散布機で散布 (D) 乗用管理機で散布

2.実際の作業

①耕起・施肥・播種
麦収穫後、事前の耕起はせず、K社製施肥播種機により耕起・施肥・播種を同時作業で行いました。(写真2)
収穫後の麦わらが残った状態での作業でしたが、播種精度に問題はありませんでした。

 

②鎮圧
播種直後に振動ローラで鎮圧を行いました。土壌水分がやや高い状態でしたが、作業には支障ありませんでした。(写真3)
無鎮圧区の日減水深が870ミリだったのに対して鎮圧区では54ミリとなり、漏水防止の効果が確認できました。

 

③除草剤散布
播種同時+入水前+入水後の3回処理の予定でしたが、入水後にイネ科雑草が増えたため2回処理が必要となり、合計4回の処理を行いました。

写真2 耕起・施肥・播種同時作業
写真3 振動ローラによる鎮圧作業

3.生育・収量等の結果

苗立は94本/㎡を確保しましたが、直播としては分げつが少なく、穂数は194本/㎡、収量も実収で約500kg/10aと、「夢あおば」としては物足りない結果でした。
倒伏や病害虫等の問題はありませんでした。(写真4)

写真4 収穫期の実証ほ場

おわりに

今回、減水深の大きい大津町の黒ボク土水田でも鎮圧を行うことで乾田直播栽培が十分可能であることが確認できました。しかし、収量面では不満足な結果に終わったため、今後は施肥法等についてさらに検討を重ねる予定です。
(執筆協力:県北農業普及・振興課、(株)ネットワーク大津、(株)クボタ)

2018年12月号
熊本県農業革新 支援センター