水稲新品種「くまさんの輝き」の栽培技術(第2回)

~丈夫で安心の米づくりは「健苗づくり」から!~

はじめに

水稲の育苗は「苗半作」といわれるとおり、米作りの中でも重要で、生産者からの相談が多い管理作業です。
その中で「くまさんの輝き」の育苗では注意するべき点があります。それは、「くまさんの輝き」が「熊本県推奨うまい米基準」のSランク(表1)を前提とした栽培が求められている点で、この基準では「特別栽培米(化学肥料及び化学農薬を慣行の栽培より50%以上減らして作る)」への取組みや「種子更新」が必須です。この基準は美味しいお米を作る基本でもあるで、育苗時から準備をしましょう。

表1 熊本県推奨うまい米基準表

種子の準備

1.種子更新

前述の「熊本県うまい米基準」にもあるように、種子由来の病害虫発生リスクを最小限にするため、種子は毎年必ず更新しましょう。準備する種子の量は10aあたり4kgが目安です

2.塩水選

「発芽率」が保証された購入種子であっても、「発芽勢」にはばらつきがあります。塩水選で発芽勢の良い充実した籾種を選別しましょう。「くまさんの輝き」等のうるち品種の場合、比重は1.13です。

3.種子消毒

購入種子も無菌ではないので、種子消毒が必要です。
ここでは、使用農薬成分数にカウントされない種子消毒法として、「生物農薬」と「温湯消毒」を紹介します。
生物農薬による種子消毒は、浸種の最後の1日間に行います。使用前に希釈量、水温、処理方法など、ラベルをよく確認しましょう。籾に残った薬液は洗い流さず、そのまま播種します。
一方、温湯消毒をする場合は浸種の前に行います。微妙な温度管理ができる、専用の温湯消毒機(写真1)を使用すると良いでしょう。
方法としては、ぬるま湯で籾が吸水しない程度に予熱したのち、60℃で10分間温湯に浸します。その際、籾袋の中心部と外側で温度差が出ないよう、揺するなどします。処理が済んだら直ちに冷水につけて冷却します。

写真1 温湯消毒機

4.浸種処理

浸種は乾燥した種籾に吸水させて発芽を促す行程です。15℃~20℃の水に、できるだけ水温が変化しない環境で5~7日間浸けます。このとき、低温で行うと発芽がそろいます。浸水期間は日水温積算100℃となるまでが目安です。その間、酸素不足等の防止のため、1日1回水の入れ替えを行いましょう。
播種の前日になったら、籾を引き上げて水を切り、「鳩胸状態」となるまで催芽を行います(写真2)。

写真2 鳩胸状態

床土の準備

床土は病気の心配がなく、pHが調整されたものを使用します。市販されている人口床土等を使う場合は、説明書をよく読んで正しく使いましょう。
また、床土の施肥量にも注意します。無肥料では苗丈が伸びにくく、逆に多肥では葉が柔らかくなり、徒長しやすくなります。

苗の種類と播種

1箱あたりの播種量は作る苗の種類によって決めます(表2)。稚苗並の密播として育苗期間を延長しても、中苗にはなりません。
播種の際は、床土に十分に給水してから籾種をまきます。水分が足りないと発芽ムラが生じ、苗の不ぞろいや出芽不良の原因となります。
播種後は、籾が完全に隠れる程度に覆土します。

出芽

出芽の方法には、「積重ね法」と、「平置き法」がありますが、ここでは健苗を得やすい平置き法を紹介します。
平置き法は、播種後の苗箱を苗床に直接並べます。出芽には被覆による保温が必要で、30~32℃を保ちます。被覆資材はアルミ蒸着フィルムなどの高温障害の危険性が少なく、保湿できるものが良いです。
水管理は、過湿による出芽障害を避けるため、原則として出芽までは灌水しないようにし、出芽後も水を与え過ぎないようにしましょう。

硬化

2cm程度まで芽が伸びたら被覆を外します(写真3)。その際、急に強い光にさらすと葉が白化するため、曇天時や夕方に被覆を剥がすようにします。
また、被覆の除去が遅れると、「腰高」で軟弱な苗になります。時期を逃さずに行いましょう。
外気に徐々に慣らし、移植に備えます。表2の「苗の種類」にあった苗丈と葉齢を目指しましょう。
水やりは1日1回の十分な灌水が基本です。水のやり過ぎは、苗が徒長し、根の張りが弱くなります。蒸散量が増し、葉が巻くようなら、回数を増やします。

写真3 苗丈2〜3cmの状態

おわりに

丈夫で健康な苗ができれば、移植の負荷や除草剤のストレスに耐えて早く根を張り、初期生育も良好になります。また、根の張りがよくなれば、猛暑等の環境変化にも強い稲になります。
育苗のポイントを押さえて、まずは健苗づくりから始めましょう。

2018年5月号
県央広域本部 宇城地域振興局 農業普及・振興課