肉用牛への飼料用米給与のポイント

~SGSやTMRで「飼料費低減」に取組みませんか?~

飼料用米の利用の背景

畜産経営において、飼料費は生産費の約4~6割に及ぶため、飼料費の低減は経営向上の永遠の課題と言えます。
そこで、近年注目されているのが「飼料用米」です。
耕種サイドでは、「水田活用の直接支払交付金」の交付対象となっているため、主食用米と同程度の収入が期待できます。
一方、畜産サイドでは、飼料用米は、輸入配合飼料に比べて低コストであるため、耕畜双方に利点があります。
このような背景を受け、近年県内でも家畜への飼料用米の給与が広がっています。しかし、家畜の栄養生理上、単胃をもつ中小家畜に比べて、反すう胃をもつ牛への給与は、給与量の設定等細心の注意が必要です。
そこで、今回は肉用牛繁殖雌牛への給与を想定した飼料用米の利用について説明します。

飼料用米給与形態 

肉用牛では、籾(もみ)の状態では消化率が低いため、加工する必要があります。給与形態としては、主に以下の二つがあります。

(1)籾米サイレージ(SGS)

籾米を粉砕・加水した後に発酵させた飼料。配合飼料の代替として給与。

(2)完全混合飼料(TMR)

濃厚飼料(飼料用米利用の場合は、飼料用米を粉砕したものか、SGSを利用)と粗飼料を適切な割合で混合し、栄養成分が充足するように調整・発酵させた飼料。

SGSの給与について

SGS(写真1)は、配合飼料の代替として給与することが可能です。しかし、飼料成分を見てみると、市販の配合飼料に近い栄養価ですが、繁殖に大きく影響するタンパク質含量が低いため、大豆かす等でタンパク質を補う必要があります(表1)。併せて、ビタミン剤等の給与も必要となります。

 

農業研究センターや現地実証の試験結果では、牛のし好性は非常に良いことが確認できていますが、既存の配合飼料から切り替える際は、段階を経て牛を少しずつ慣れさせることが重要です。(表2)

写真1 籾米サイレージ(SGS)

発酵TMRの給与について

発酵TMR(写真2)は、必要な栄養充足度を満たすように混合されているため、給餌作業が一度で済むという利点があります。
維持期の給与量は、1日1頭当たり約10kg程度ですが、ビタミン類は発酵過程で変性するためTMRには添加できません。そのため、追加でビタミン剤を給与する必要があります。
こちらも農業研究センターや現地実証試験では牛のし好性も問題なく、従来の飼料に代替できることが確認できています。
なお、分べん前後の増し飼い期の給与量については、TMRの成分値と母牛の養分要求量を比較して、TMRの増給または配合飼料を追加します。

写真2 発酵TMR

SGS・発酵TMRの保管方法

SGSや発酵TMRの収穫調製はフレコンバッグやロールラップサイレージで、重さは200~300kgにもなります。ハンドリングはもとより、保管場所での管理は重要です。主な注意点は以下の通りです。

(1)鳥獣害被害対策

ネズミやイノシシ・カラスによって、袋に穴が開くことがあります。その穴から空気が入り、カビ菌や酵母が活性化し変敗の原因になります。防鳥ネット(写真3)や電気柵等を活用して対策を行います。

写真3 防鳥ネットでの対策

(2)開封後の変敗対策

SGS・発酵TMRともに発酵させた飼料であるため、開封することで空気に触れると、二次発酵が進みます。開封後は、なるべく早く使いきるように心がけ、使うたびに袋の口をしっかりと結びます。

(3)屋外保管での夏場の高温対策

フレコンバックやラップで屋外保管される場合は、夏場の高温(写真4)による品質の悪化が考えられます。寒冷しゃで覆う等の対策を行います。

写真4 SGSフレコンの温度測定

最後に

地元で生産された飼料用米を利用することで、飼料費の低減や、畜産物の安心安全の付加価値化につながるなど、可能性は大きく広がっています。
さらに、発酵TMRについては、給餌作業が一度で済むことで、高齢者の飼養負担を減らすなど高齢農家の営農継続を後押しすることも期待できます。
利用にあたっては、自農場の畜種や飼養規模・経営体系に合った給与形態を選び、飼料用米を使って経営向上を目指しましょう。

写真5 天草地域での給与の様子