落葉果樹の安定生産に向けて(晩霜害対策)

~気象災害は「備えること」。この時期を乗り越えて、笑顔で収穫期を迎えましょう。〜

はじめに

3月に入り、生産者の皆様はせん定の仕上げに入られていることと思います。暖かくなるにつれ、人でも体が動き、作業もしやすくなるのと同じく、樹体も休眠を終了し、樹液が流れ始め、萌芽、発芽、開花と生育が進み始めます。
開花前後の時期は、気象条件によって、その年の作況を左右する重要な時期です。特に晩霜害を受けると収量の減少、品質の低下につながりますので注意が必要です。

落葉果樹の晩霜害

落葉果樹は、休眠中、マイナス15~20℃の低温に耐えることができます。しかし、気温の上昇とともに休眠が終了すると耐凍性が低下し、わずかに氷点下を下回る温度でも被害を受けてしまいます(表1、2)。

表1 発育ステージ別の危険限界温度
表2 凍害危険温度

ナシ、モモ等の開花期、カキ等の発芽期以降は、低温被害に遭いやすくなるため気象情報に耳を傾けましょう。特に、次のような条件で晩霜害の危険が高まります。

 

(生育条件)
2~3月の気温が平年より高く、生育が早く進んでいる。

 

(気象条件)
①無風の晴天日で午後6時の気温が10℃以下で、気温が1時間に1℃以上が低下し、氷点下となる。
②気温が氷点下まで低下した当日の朝、急激に気温が上昇したとき。

写真1 晩霜害にあったナシの幼果
(傷のようなものがついている)
写真2 晩霜害にあったカキの新芽

昨年、菊池地域では4月8日の低温によりナシ、カキで被害が発生し、収穫がほぼできなかった園もありました(写真1、2)。昨年は、3~4月の気温が高く、生育は全般的に早く進んでいました。被害が発生した時の気象が表3です。前日(4月7日)18時の気温は10℃以下、晴天で風も弱く(風速1.4m/s以下が無風と定義されている)、1時間に1℃以上気温が低下しました。日付が変わると1℃以下が6時間以上続いた後、日が昇ると気温は上昇しており、被害が発生しやすい条件でした。この表は観測地点のデータですので、園地によってそれ以下の温度となっていたと考えられます。
一方、3月11日(表4)は低温情報が発表されましたが、被害は発生しませんでした。4月8日と違う点は、生育段階が異なること、気温1℃以下の時間が短く、その後の温度上昇も小さいことです。

表3 アメダスデータ
(菊池、2018年4月7〜8日)
表4 アメダスデータ
(菊池、2018年3月10〜11日)

事前対策

1.園地整備
・冷気は園地の低い場所にたまり、窪地だと園地全体に冷気が溜まります。そのため冷気を動かすことが重要です。園地の低い方にある防風ネットは巻き上げ、防風樹があれば下枝を刈ります。
・雑草が繁茂している場合や敷きワラは地温の放熱を妨げ、霜害を助長します。そのため除草を行い、敷きワラ(草)は晩霜の危険がなくなってから実施します。

2.燃焼法
固形燃料等を燃焼させて園内の気温を高める方法です。市販の燃焼資材では30個/10a以上を使用し、気温0℃を目安に点火します。真夜中の作業となりますので、燃焼資材や着火器具、照明(ヘッドライト等)の準備をし、あらかじめほ場の片づけをしておきましょう。

3.散水氷結法
スプリンクラーで樹上から散水し、水が凍る時の潜熱により植物体温を0℃より下がらないように維持し被害を防ぐ方法です。気温が氷点下に下がる前に散水を開始し翌朝、氷が溶け終わるまで散水を継続します。

4.送風法
放射冷却で発生する逆転層上部の暖かい空気をファンで下層に送り、気温と樹体温の低下を防ぐ方法です。防霜ファンがある園では、4℃を目安に起動します。昇温効果は1~2℃のため、外気温がマイナス3℃に下がる場合は燃焼剤を併用します。

事後対策

晩霜被害を受けた場合、結実量の確保が重要です。

1.ナシ、モモ、スモモなどでは、雌しべが健全な花に対し、梵天(ぼんてん)、毛ばたきによる人工受粉を行います。ナシの受粉適期は、開花後から4日程度ですので、事前に花粉を準備し遅れないように実施します。

2.結実期以降の場合、着果が確認できるまで摘果を控えます。

3.被害が大きく、結果量が極端に少なくなった場合、枝葉が過繁茂になる可能性があるので、樹勢を考慮し、その後の施肥量を調整します。

さいごに

晩霜害対策は準備も実施も大仕事です。特に準備は、発生するか分からない災害に対して時間と労力をかけなければなりません。しかし果樹は1年1作です。収穫期を思い描いて、この時期を乗り越えましょう。

2019年3月号
県北広域本部 農林水産部 農業普及・振興課