露地ナスの栽培管理

~天敵利用を中心に~

はじめに

上益城地域にある吉無田高原では、昭和50年代後半から水田転作作物として夏場の冷涼な気候を活かした露地ナス生産が行われてきました。
平成15年には、県育成品種「ヒゴムラサキ」をいち早く導入し、主力品種として栽培されていました。しかし、「ヒゴムラサキ」では舌出し果や着色不良果等の発生が課題となっていました。その課題を解決した「ヒゴムラサキ2号」が発表されたのを機に導入を検討し、不良果の発生が少なかったことや、これまでの栽培法を変える必要が無かったことから、平成30年度には全面的に「ヒゴムラサキ2号」が導入されました。

ナス栽培ではアザミウマ類の防除が課題となっていたので、平成29年度に環境保全型農業推進展示ほの事業を活用して天敵の効果を検討しました(表1、表2)。
天敵を利用したほ場では防除回数が慣行栽培の20回から7回に減らしてもアザミウマ類は増殖せず、アザミウマ類をほとんど見ることなく栽培が終了しました。
一方慣行栽培では例年同様アザミウマ類が増殖し防除に苦慮しました。
良好な結果が得られたことから、平成30年度には部会員全員で天敵を利用した栽培が開始されました。
今回は露地ナス栽培の作業および天敵利用のポイントについて紹介します。

表1 天敵利用ほ場の天敵、害虫数
表2 慣行栽培ほ場の害虫数

栽培管理

(1)ほ場の選定

青枯病や半身萎凋病等の土壌病害を防ぐため、5年以上ナス科の作物が栽培されておらず、かつ水稲が栽培されていたほ場を選んで栽培することとしています。
このようなほ場を選ぶことで、当地では土壌病害の発生は見られていません。

(2)ほ場の設計

防風対策として、ソルゴーを播種する場所の確保や天敵温存作物の植え付け場所を考慮し、また、排水性を勘案して畝の方向を決め、作付け前にほ場の設計をします。
栽培期間中の降雨やかん水後のぬかるみ対策として、通路に防草シート等を張ると作業性が向上します。(図1)

図1 通路に張られた防草シート

天敵利用

(1)天敵導入の前に

スワルスキーカブリダニは定植後1ヶ月ほどして導入しますが、導入前から天敵に影響の少ない農薬を選んで防除します。
天敵の放飼日を決めたら、その前にアザミウマ類の防除を実施し、天敵導入時にほ場に害虫がいない状態を作り、天敵が定着するまで、できる限り農薬を散布しなくてもよい環境をつくります(ゼロ放飼)。

(2)天敵放飼以降の管理

天敵は生き物なので、到着後決められた使用方法で一株ずつなるべく早く放飼します。
放飼後10日から14日は農薬防除をしない方が定着性は良いようです。
その後はほ場の状態をよく観察し、天敵の増殖よりも飛び込んでくる害虫の量が多く、果実被害が増加するようであれば、天敵に影響の少ない農薬を選んで防除をします。
天敵にやさしい農薬を選んで防除することで、ヒメハナカメムシやタバコカスミカメ等ほ場内で土着の天敵が増殖し、害虫防除に一役買ってくれます(図1)。
天敵や害虫は小さいので、ルーペ等を使用すると確認しやすくなります。

天敵温存植物の利用

これまで、管内ではマリーゴールドを栽培作物の間に植えることが多かったのですが、前年作では、併せてタバコカスミカメの天敵温存植物となっているクレオメも試験的に植え、期待通りアザミウマ類の天敵(タバコカスミカメ)が集まってきていました(図2)。

図2 天敵利用により見られるようになった土着天敵

(4)天敵利用上の課題

スワルスキーカブリダニや土着天敵を利用することで農薬散布回数が減り、微小害虫であるアザミウマ類やコナジラミ類等が劇的に減少し、栽培終了まで大きな被害は見られませんでした。
しかし、梅雨明け後ホオズキカメムシやニジュウヤホシテントウが飛来しましたが、天敵への配慮が必要となることから、農薬数が制限され、農薬剤の選定に苦慮しました。
今後、これらの防除対策について考えていく必要があります。

最後に

天敵を利用することでアザミウマ類が減少し、農薬散布回数が減ったので、その時間を他の作業に振り向けることができるようになりました。
吉無田高原野菜振興会茄子部会では、今年度も天敵とクレオメを利用される予定です。
今後も天敵利用を始め、産地の安定生産へ向けた支援を行っていきます。