適切・適量な堆肥・液状きゅう肥の利用について~飼料用トウモロコシの栽培準備に向けて~

はじめに

熊本県は飼料用トウモロコシの二期作やイタリアンライグラスとの二毛作が盛んです。今季の作付けを行う前に、ここでは飼料用トウモロコシの栽培に向けた堆肥・液状きゅう肥施肥のポイントについて説明します。

堆肥・液状きゅう肥を利用した飼料用トウモロコシの栽培

(1)堆肥・液状きゅう肥の成分
本県の畜産農家等で生産される家畜排せつ物由来の堆肥、特に乳牛由来の堆肥含有肥料成分は、目安として窒素0.9%、リン0.9%、カリウム1.6%となっています(表1)。また、乳用牛由来の液状きゅう肥含有の肥料成分はスラリーの場合、目安として窒素0.51%、リン0.24%、カリウム1.44%となっています(表2)。

表1および表2:農業研究成果情報より引用

(2)飼料用トウモロコシの施肥基準
飼料用トウモロコシにおいて、現物あたり6~8t/10aの収量を目指す場合、肥料成分の所要量は窒素16~18㎏/10a、リン8~12㎏/10a、カリウム16~18㎏/10aとなります(図1)。加えて、土壌の酸性化を防止するため、苦土石灰を火山灰土壌では100~150㎏/10a、その他の土壌では50~100㎏/10aの施用が推奨されます。そのため、牛ふん堆肥では2~2.5t/10a、液状きゅう肥では6~10t/10a程度の施肥が推奨されています。堆肥や液状きゅう肥を過剰に施肥した場合にはカリウム含量が高くなるため、作物体のミネラルバランスの悪化を招き、品質への影響も及ぼす可能性があります。また、未熟堆肥や液状きゅう肥を施用する場合には、散布直後のは種は避け、1カ月以上の分解期間を取るようにしましょう。

図1くまもとグリーン農業を進める施肥ガイド2013より引用

(3)環境負荷について
未熟堆肥や液状きゅう肥をほ場に散布する時に発生する悪臭は畜産経営に対する苦情の要因の1つとなっています。そこで、未熟堆肥や液状きゅう肥を表面散布した際には、速やかに耕起することが重要です。また、住宅地が近くなった地域では液状きゅう肥の散布が難しいということも聞きます。このような解決方法の一つとして、ほ場の土中に注入するスラリーインジェクター(図2)という機械を用いた方法を活用することで、悪臭の原因物質であるアンモニアや硫黄化合物の気散を抑制するという効果が得られます(表3および表4)。

図2:スラリーインジェクター

図2および表3、表4:農業研究成果情報より引用

おわりに

家畜排せつ物由来の堆肥および液状きゅう肥を上手に利用することは、畜産農家にとって飼料用トウモロコシをはじめとする自給飼料の収量を確保する大事な技術ですので、継続的な実践をお願いします。
また、飼料作物を作付けする際は熊本県では飼料用トウモロコシをはじめとする草種毎に優良品種の選定を行っていますので参考にしてください。

県北広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

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