阿蘇地域で多収が得られる糯(もち)性大麦品種「ホワイトファイバー」の特性
農業研究センター農産園芸研究所高原農業研究所
研究のねらい
阿蘇地域では、冬季の土地利用型作物として大麦が作付けされていますが、その大部分は粳(うるち)性品種「ニシノホシ」となっています。一方で、近年の消費者の健康志向が強まる中、機能性成分であるβ–グルカン(食物繊維)を多く含む糯(もち)性大麦の需要が高まっています。
そこで、高原農業研究所(阿蘇市一の宮町)で実施した糯性大麦の品種比較試験(表1)において、収量性が高く有望であった「ホワイトファイバー」について紹介します。
研究の成果
1.「ニシノホシ」、「ダイシモチ」より穂数は少ないが、精麦重(収量)は多くなります(表2)。
2.出穂期は「ニシノホシ」より10日、「ダイシモチ」より8日程度遅くなります。しかし、成熟期は「ニシノホシ」より3日程度遅く、「ダイシモチ」とは同等です(表2)。
3.稈長は「ニシノホシ」、「ダイシモチ」より30cm程度長いですが、倒伏程度はそれらの品種と同程度で小さいです(表2)。
4.作期分散等を目的に、慣行の播種期(11月上旬)より早播き(10月下旬)すると、減収します(図1・精麦重)。これは、充実が十分でないためです(図1・容積重)。なお、早播きによる減収程度は「ニシノホシ」より小さいです(図1)。
5.精麦粉中の機能性成分β–グルカン(食物繊維)は、「ニシノホシ」、「ダイシモチ」より多く含まれます(表3)。
成果活用面・留意点
1.阿蘇地域における「ホワイトファイバー」栽培の指導資料に活用できます。
2.高原農業研究所内水田(阿蘇市一の宮町:標高543m、黒ボク土、前作水稲)での試験結果です。播種量は、「ホワイトファイバー」と「ダイシモチ」は0.5kg/a、「ニシノホシ」は0.6kg/aで、窒素施肥量は全品種で基肥0.5kg/a、穂肥0.4kg/aです。
3.稈長が長い特性があり、畑地や多肥条件では倒伏の懸念がありますので、必要に応じて施肥量を調整してください。
4.赤かび病抵抗性が十分でないため、開花始め~開花期とその7~10日後の2回防除を行ってください。
No.974(令和4年(2022 年)6月)分類コード 01-02
974_成果情報_高原_ホワイトファイバー特性 (PDFファイル)