近年、県内ではウンシュウミカンにおいてナシマルカイガラムシの発生が増加し、果実被害の発生や枝枯れ等による樹勢低下が問題となっています(写真1)。
ナシマルカイガラムシは、越冬世代と第1世代幼虫に防除の重点をおくと効率良く防除ができますが、発生のタイミングを図らずに防除ができる越冬世代と異なり、第1世代幼虫は、発生時期と防除のタイミングを合わせるのが困難です。また、他県のリンゴやナシなどの落葉果樹では、有効積算温度からナシマルカイガラムシ歩行幼虫の発生を予測した試験事例があるものの、ウンシュウミカンでの近年の試験事例はありませんでした。
そこで、ウンシュウミカンのナシマルカイガラムシについて、有効積算温度を用いた歩行幼虫の発生予測の可能性を検証したのでご紹介します。
ウンシュウミカンのナシマルカイガラムシは第1世代歩行幼虫の発生時期が予測できる
農業研究センター果樹研究所病虫化学研究室
研究のねらい
研究の成果
アメダスの気象データを活用した有効積算温度(発生初期:約 334 日度、発生ピーク:約 429 日度、起点日:3月1日、発育温度:10.5~32.2℃)※から、ナシマルカイガラムシの第1世代歩行幼虫の発生を予測すると、発生初期及び発生ピークともに、実際の発生消長と予測日がほぼ一致することが明らかになりました(表1、図1)。しかし、第2世代および第3世代の歩行幼虫は発生が継続的に続き、発生のピークが不明瞭であるため、正確な予測が困難と考えられます(表1、図1)。
※有効積算温度
3月1日から、各日の「毎時における有効温度」(その時間ごとの気温が10.5℃~32.2℃の範囲であった場合の、その気温から10.5を引いた値)を算出した後、それらの24時間分の値を平均したものを1日の有効温度とします。今回、予測日の算出には、JPP-NET(一般社団法人日本植物防疫協会 による運営)の有効積算温度シミュレーション version2 を用いました。
成果活用面・留意点
1.本技術は、ウンシュウミカンのナシマルカイガラムシに対して、第1世代幼虫の防除適期の把握に活用できます。
2. 越冬世代の密度が高いと、第1世代の発生が多くなり、歩行幼虫の発生ピークが高止まりしたまま発生が続くため、越冬世代の防除を徹底したうえで、第1世代幼虫の防除を行うことが重要です。
3.防除薬剤については、若齢幼虫(歩行幼虫~1齢幼虫まで)に対して防除効果が高く残効の長い薬剤は、歩行幼虫の発生初期が防除適期となり、残効の短い薬剤は、歩行幼虫の発生ピーク時もしくはピーク直後が適期となります。
★熊本県病害虫防除所では毎年JPP-NETで予測されたナシマルの発生予測日を調査データとしてホームページで報告しています。
掲載ページはこちら
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/75/168705.html
No.1002(令和4年(2022 年)6月)分類コード 04-09
ウンシュウミカンのナシマルカイガラムシは第1世代歩行幼虫の発生時期が予測できる
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