ズッキーニの栽培管理

はじめに

球磨地域のズッキーニ栽培は、春作と秋作の年2作で栽培されており、栽培面積は年間で延べ13haにわたります。また、初期投資が非常に少なく、既存の施設(雨よけハウス等)も有効利用できることから、新規導入品目や複合経営の品目のひとつとして面積が拡大してきました。今回は、「雨よけハウス栽培」(写真1)と「露地栽培」(写真2)の管理方法について、球磨地域での事例を交えながらご紹介します。

写真1 雨よけハウス栽培
写真2 露地栽培

春作および秋作の管理方法

(1)品種および作型
球磨地域では、「KZ-2」(ヴィルモランみかど(株))や「モスグリーン」(ナント種苗(株))といった品種が用いられています。春作の「雨よけハウス栽培」では3月中に、「露地栽培」では4月中に播種(はしゅ)または定植を行い、いずれの作型も定植後約1か月後から6月下旬まで収穫を行います。梅雨時期は不良果が増えるため、6月下旬が栽培終了の目安となっています。秋作では9月中に播種または定植を行い、定植後約1か月後から収穫を開始し、「露地栽培」では霜が降りる11月下旬まで、「雨よけハウス栽培」では12月中旬まで収穫を行います(表1)。

(2)ほ場準備
ズッキーニは、肥料切れを起こすと果形が曲がり果となるため、播種または定植の1か月前には堆肥をほ場全体に施用し、有機質に富んだ保肥力が高い土づくりを目指します(表2)。葉の展開幅が広いため、通路幅は広くとります。ベッド幅120cm、株間60~80cmが目安です。また、かん水は、通路かん水やかん水チューブで行います。かん水チューブで行う場合は、1畝に1本設置し、状況に応じて通路かん水を併用します(図1)。強風で主茎が簡単に折れるため、露地栽培では、防風対策のためほ場周囲を防風ネットやソルゴー等で囲みます。
ズッキーニの生育適温は18℃~25℃です。春作では、地温が低すぎると活着不良となるため、定植の1か月以上前にマルチを張って、地温15℃以上を確保します。秋作では、栽培後半に気温が低下するため、株間を広くとり地面に日光が当たるようにし、地温を確保します。

図1 株間及びベッド幅の目安

(3)誘引方法
誘引方法は、株のとなりに支柱を立てて、株が倒れないように株と支柱を結びつける「支柱誘引」や、株の両サイドに支柱を1.5~2メートルおき程度に立てヒモを張り、株が倒れないように支える「ヒモ挟み込み誘引」等があります。「支柱誘引」の際は、根を痛めないように根量が少ない生育初期に支柱を立てておきます。誘引方法は複数あるので、所持資材に合わせた誘引方法を検討してください(図2)。

図2 「支柱誘引(左)」と「ヒモ挟み込み誘引(右)」

(4)交配
交配は「手交配」が原則です。1花の雄花で3~5本の雌花の交配が可能です。降雨時や気温が低い時期は花粉量が減少するため、より多くの雄花を必要とします。樹勢が旺盛になると雄花率が低くなりやすくなります。

(5)追肥
水や肥料不足により、樹勢が低下し、果形が尻太果や曲がり果となるため、定植後30日頃から週に1回の間隔で追肥を行います。1回当たりの追肥の目安は窒素成分で2~3kg/10aです(表2)。また、ズッキーニは根域が広いため、通路やマルチ下への追肥、かん水チューブでの液肥施用も効果的です。

(6)収穫
花弁は腐敗の原因となるため、雄花・雌花ともに、開花終了後は取り除きます。収穫は基本的に「長さ」を基準とし、20cm前後で収穫します。なるべくハサミ・カッター等を使って収穫します。

(7)病害虫対策
ズッキーニの主要な病害虫は、アブラムシ類によって媒介されるウイルス病「ズッキーニモザイク病」と、「軟腐病」です。「ズッキーニモザイク病」は、ズッキーニの病害で最も被害が大きく、初期には葉に黄斑、末期には葉のわい化や反りがみられ、変形果実が多発します。対策は、定植時に薬剤の植穴処理を行うなど、発生初期からアブラムシ類の防除に努めるとともに、収穫ハサミをこまめにアルコール消毒します。罹病(りびょう)株は見つけ次第、速やかに抜き取りほ場外で処分します。
「軟腐病」は、親づるの基部に水浸状(すいしんじょう)の病斑が発生し、罹病株からは腐敗臭がします。対策は、降雨後や台風通過後に薬剤散布を行います。排水不良ほ場では高畝とし、明きょを設けます。

 

おわりに

ズッキーニ栽培は、既存の施設を利用して栽培できる省力的な品目です。安定生産のためには、地温の確保や、正常な果形を維持するための適切な追肥やかん水管理が重要となります。さらに、収穫を最後まで行うためには、誘引と病害虫対策を徹底してください。

県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課

ズッキーニの栽培管理 (PDFファイル)

野菜