いちご本ぽ期の病害対策 (灰色かび病、うどんこ病)

はじめに

いちごを長期的に安定生産するためには、育苗期のみならず本ぽ期における病害対策をしっかりと実施することが重要です。本ぽ期の病害対策を怠ると、果実の品質低下や草勢低下による収量の減少につながるため、予防的な対策を中心に病害対策を実施しましょう。そこで、今回は本ぽ期の病害対策のポイントについてご紹介します。

本ぽ期の主な病害について

(1)灰色かび病

<特徴>
灰色かび病は、糸状菌(カビ)によって引き起こされます。初めは、花弁や下葉など枯死した部分に病原菌が寄生し、これが果実への伝染源となります(図1)。感染した部分は腐敗し、表面に灰色のかびと胞子が密生します(図2)。
本病原菌の生育適温は、20℃前後です。多湿条件下で発生が多くなり、葉の混みすぎや、枯死部位(花弁・葉)などがあると発生を助長します。病斑部分に多数の分生胞子を形成し、胞子がハウス内の空中を飛散することで周囲の株に伝染します。

<対策>
◯発病果や発病葉は見つけ次第早めに除去し、施設外に持ち出し、処分を行います。また、発病部位以外にも薬害や生理障害により枯死した葉も本病の伝染源となる恐れがあるため適正に処分を行います。
◯植物体や果実の結露を防ぐため、積極的に暖房機を稼働させ、夜間や早朝のハウス内の湿度を低下させます。暖房機が稼働できない場合は、循環扇(常時)で空気を循環させ、ハウス内での湿度の偏りをなくします。
◯薬剤防除による予防的防除を実施します。薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤とのローテーション散布を行います。

図1 果実の病徴
図2 果実の病徴

(2)うどんこ病

<特徴>
うどんこ病は、糸状菌(カビ)によって引き起こされます。本病に感染し発病すると、植物体表面にクモの糸状のカビを生じ、後にうどん粉(小麦粉)をまぶしたような白い粉状のカビが発生します(図3、4)。
本病原菌は親株から子苗に容易に伝染し、イチゴの植物体上で生活を繰り返します。植物体上で形成された分生胞子がハウス内の空中を飛散することで周囲の株に伝染します。
本病原菌の発病適温は、20℃前後です。夏期高温時には発病が停滞するため、感染していても気づきにくく注意が必要です。また、気温の低下とともに発病が増加するため、本ぽ期では活着後から開花期
前頃に発生が増加します。なお、育苗期はランナー発生期~採苗開始期頃に発生します。

<対策>
◯発病果、発病葉は見つけ次第早めに除去し、施設外に持ち出し、処分を行います。また、葉が繁茂しすぎないよう下葉かきを実施します。
◯ほ場の排水を良くし多湿を避け、通風換気に努めます。
◯一度多発すると防除が極めて困難になるため、症状の見えにくい育苗期から定期的な薬剤防除を徹底して実施することが重要です。本ぽ期の防除は、活着後から開花期前頃を重点に置いて実施します。
◯薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤とのローテーション散布を行います。

図3 葉裏の病徴
図4 果実の病徴

最後に

上益城地域では、昨シーズン春先以降に灰色かび病の発生が多発したことから、ローテ―ション散布を徹底し、予防的な対策を実施しています。
病害の被害を抑えるためには、予防的な薬剤防除と発生初期の早期防除が効果的です。定期的な農薬散布による防除だけでなく、換気や排水対策、葉かきなどの耕種的防除も同時に実施し、総合防除に努めましょう。

 ※図1、3、4は、熊本県病害虫・雑草防除指針<令和6年度(2024年度)版>より引用

県央広域本部 上益城地域振興局 農業普及・振興課

いちご本ぽ期の病害対策(灰色かび病、うどんこ病) (PDFファイル)

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