アブラナ科露地野菜の安定生産に向けた根こぶ病対策について

はじめに

熊本県におけるアブラナ科露地野菜は、令和2年産で平野部を中心に冬キャベツが417ha、ブロッコリーが866ha作付けされており、本県の主要な品目です※1。
そうした中、生産上の大きな問題となっているのがアブラナ科野菜で発病する「根こぶ病」による生育不良の拡大です(写真1、写真2)。
※1「熊本県主要野菜生産状況調査について(令和2年産)」より引用。

写真1 根こぶ病にり病した根部の症状
写真2 根こぶ病によるキャベツの生育不良

根こぶ病とは

根こぶ病は糸状菌(かび)の一種によって引き起こされるアブラナ科特有の土壌病害で、病原菌に感染すると根部が肥大し、養水分の吸収ができなくなることで生育が抑制されます。生育初期に感染した場合、定植後1か月頃から下葉が萎れ、最終的には収穫に至りません。生育後期に感染した場合も、結球部が肥大せず、収量が低下します。
根こぶ病は主に、り病した植物残渣や発生ほ場の土壌から病原菌が持ち込まれることによって広がります。水媒伝染するため、水田や排水が悪いほ場のほか、酸性土壌でも発生が多くなります。一度発生するとほ場内で増加し、大きな被害に繋がりかねません。また、根こぶ病の生育適温は1825℃で、高温期に栽培する年内収穫作型(1012月)では特に発生しやすいため、十分な対策が必要です。
そこで今回は、八代地域で実施している根こぶ病対策の事例と令和4年度に熊本県農業研究センターから発表された農業研究成果情報等を交えながら、総合的な根こぶ病対策について、キャベツの事例をご紹介します。

キャベツ根こぶ病対策について

(1)土壌pHの矯正

県内の910月に定植する冬春作キャベツを対象とした調査により、キャベツ根こぶ病の発病は土壌中病原菌密度と正の相関があり、土壌中病原菌密度が高いほど発病が多くなることがわかりました。一方、pH7.0以上の土壌では発病度の高いほ場はなく、土壌中病原菌密度に関わらず発病が抑制されることも明らかとなりました(図1※2)。
ほ場の土壌分析を実施し、石灰資材等による計画的な土壌pHの矯正を行ってください。
※2「熊本県 農業研究成果情報 No.979」より引用。

図1 菌密度別キャベツ現地ほ場における根こぶ病の土壌pHと発病度の関係

(2)抵抗性品種の利用

本県の冬春作産地で普及しているキャベツ根こぶ病抵抗性品種「YCRこんごう」の防除効果について調査した結果、「YCRこんごう」は、県内で採取された根こぶ病菌に対して抵抗性であり、高菌密度ほ場でも発病抑制効果が高いことが明らかとなりました(表1※3)。「YCRこんごう」は9月上中旬定植に向く品種ですが、発病を完全に抑制するものではないことや、土質によってもその効果に差があることが考えられますので、その他の対策との組み合わせが必要です。
※3「熊本県 農業研究成果情報 No.978」より引用。

 

1) 図1参照。

(3)薬剤による防除

ほ場への土壌混和や定植直前のセル成型苗への灌注(かんちゅう)による薬剤施用は、根こぶ病対策として効果があります。
農薬の成分においてフルスルファミド、フルアジナム、アミスルブロムなどは、根こぶ病の発病を抑制する効果および土壌中病原菌密度の増加を抑制する効果があります※4。また、薬剤の土壌混和とセル成型苗施用を組み合わせることで、より高い発病抑制効果が期待できます。ほ場の発生状況に合わせて薬剤施用を行いましょう。ただし、抵抗性品種の利用と同様、薬剤による防除だけで発病を完全に抑制するものではないことや、土質によってもその効果に差があることが考えられますので、注意してください。
※4「(独)農研機構近畿中国四国農業研究センター 土壌の健康診断に基づいたアブラナ科野菜根こぶ病の診断・対策支援マニュアル」より。

 

(4)その他の対策

土壌中の根こぶ病病原菌はアブラナ科野菜の根があることで発芽し、感染、増加します。耕種的対策として、アブラナ科野菜の連作を行わないようにします。また、根こぶ病病原菌は被害残渣(ざんさ)があることでほ場内に残留し、土壌中病原菌密度が増加していきます。土壌中病原菌密度を増加させないためにも、栽培終了後の後片付けは速やかに行うとともに、被害残渣を持ち出すなど、ほ場外で適切に処分するようにしましょう。
前述したように根こぶ病病原菌は水によって伝染するため、排水の改善も重要な対策となります。地下水の高いほ場では高畝や明きょを設置するなど、排水対策を行いましょう。一方で、株の生育不良状態においても発病しやすくなります。高温乾燥によりほ場が乾いている場合には生育不良になりやすいため、定植後の活着促進および生育促進のための灌水(かんすい)は適宜行いましょう。
前述したように、根こぶ病は発生ほ場からの持ち込みによって感染が急速に拡大します。特に発生ほ場で使用した農業機械や道具類は必ず洗浄し、健全ほ場に病原菌を持ち込まないよう心がけてください。
また、多発生したほ場では、発生しやすい高温下での定植を避け、気温の低下した11月以降の定植を行うようにしましょう。

 

最後に

以上、キャベツを例としてアブラナ科野菜根こぶ病対策について述べましたが、本病の被害を防ぎ、安定生産を図るためには、土壌pHの矯正、抵抗性品種の利用、排水対策、作型の調整、薬剤施用などほ場の発生リスクに合わせた総合的な対策を行ってください。

 

県南広域本部  農林水産部  農業普及・振興課

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