飼料用トウモロコシの栽培のポイント

~良質トウモロコシ、しっかり獲るには!?~

はじめに

飼料用トウモロコシは、乾物収量と栄養価に優れた飼料の王様的な作物ですが、本県の作付面積は平成2年の約7千8百haをピークに減少を続け、現在では3割程度の約2千5百haとなっています。
そこで今回は、飼料用トウモロコシの優位性を最大限に引き出すための栽培上のポイントについて考えてみます。

飼料用トウモロコシの播種(はしゅ)適期

トウモロコシの生育には、最低でも10度以上の気温が必要で、平均気温が10度を超える時期に播種するのはこのためです。
また、みなさん「有効積算気温」という言葉を聞かれたことがあると思いますが、これは平均気温10度を基準として10度以上の温度を積み上げて算出するものです。
トウモロコシが黄熟期に達するには、有効積算気温が1千2百度程度必要であるとされています。
二期作については、年平均気温が15度以上であり、一作目と二作目をとおした期間の有効積算気温が2千4百度以上である必要があります。
表1は、県内主要地点の平年の気象データを示したものです。これを見ると、平坦地では前述の気象条件を満たしていることが分かります。ただし、たとえば熊本では3月中旬には平均気温が10度以上となりますが、4月1日に霜が発生していることを考えると、平均気温が10度を上回ってから数日の余裕をもって播種した方が安全です。

表1 県内主要地点の平年の気象データ

飼料用トウモロコシの生長と収穫適期

トウモロコシの生長は、絹糸(けんし)抽出期(ちゅうしゅつき)(実から糸状のものが出てくる時期:写真1)を境に、ステージが変わります。発芽から絹糸抽出期までの茎葉が生長する期間を「栄養生長期」、絹糸抽出期以降の子実が充実する期間を「生殖生長期」といいます。
早生や晩生などの早晩性は「栄養生長期」の長さの違いによるもので、晩生になるほど「栄養生長期」が長くなり、その分収量が多くなります。
飼料用トウモロコシの収穫適期は黄熟期とされています。ひとつには、でん粉の蓄積がすすみ栄養価が高まること、もうひとつは水分が低下してサイレージに適した水分含量となることです。
十分に登熟がすすんでいないものをサイレージ化すると、水分と一緒に栄養も排汁として流れ出てしまいます。生産ロスを防ぐためにも、収穫時期までに確実に黄熟期に達している必要があるのです。

写真1 絹糸(けんし)が出ている様子

二期作トウモロコシの品種選定

二期作栽培には有効積算温度が2千4百度以上必要であることは前にも述べました。
もう一度、表1を見てみましょう。
阿蘇乙姫は、有効積算気温が2千4百度に達していないので二期作栽培を行うことはできません。牛深は3千度ありますので、かなり余裕があります。
熊本は、2千8百度ですので、一作目の播種時期の霜を考慮しても、二作目の播種まで若干の余裕があります。
菊池と人吉は、2千4百度を少し上回る程度ですので、ほとんど余裕はありません。7月下旬から8月中旬ごろの有効積算気温100度というと、5日弱となります。繁忙期の5日間は決して余裕があるとはいえません。余裕をもって栽培するためにも一作目には早生品種をもちいた方が安全です。
また、二期作目は高温多湿で病虫害が発生やすい時期に播種することになります。耐病性などを考慮して育成された二期作や夏播き専用品種を選ぶようにしましょう。

熊本県の飼料用トウモロコシ奨励品種

種苗メーカーでは、早晩性のめやすとして品種ごとにRM(相対熟度)を表示しています。RMとは、有効積算気温をその品種を育成した土地の平均気温で割って算出したものです。地域によって気象条件は異なりますので、実際に栽培したときの熟度を同じように算出しても、表示されているRMと一致するわけではありません。数字が小さいものは早生、大きくなるほど晩生になると考えると良いでしょう。
このようなことから、県では、合志市にある熊本県農業研究センター畜産研究所で毎年度、試験を行い、県内で栽培したときの収量性や耐病性などについて評価しています(写真2)。優良であると評価された品種は「奨励品種」として選定しています。
奨励品種は、飼料用トウモロコシだけでなく牧草についても選定を行っています。県のホームページに一覧が掲載されていますので、品種選定の参考にお役立てください(「熊本県 牧草・飼料作物奨励品種」で検索してください)。

写真2 奨励品種選定試験ほ場の様子

さいごに

近年、飼料用トウモロコシの二期作栽培は本州でも行われていますが、関東地方では有効積算気温が低いため、二作目の登熟が不十分で収量が不安定となる条件下で栽培されています。それに比べると、熊本県はとても恵まれた気象条件にあるといえます。

トウモロコシは、よくできているように見えても見た目ほどには収量が得られないことがあります。こういった場合は播種時期が遅かったため短期間で生長し、軟弱徒長となったことが考えられます。
また、耕起や鎮圧は、除草剤の効果、発芽の良否やその後の根の生育などにも影響を及ぼします。

自給飼料の生産には、収量に関わらず一定の経費がかかります。せっかく労力と経費をかけて生産するのですから、丁寧に作って確実に収量を確保するとともに、いま一度、飼料用トウモロコシを作ることの優位性を見直し、利用してみてはいかがでしょうか。