ウリ科野菜類 (メロン、キュウリ、スイカ)の ウイルス病対策について

はじめに

メロン、キュウリやスイカといったウリ科野菜の栽培は、多くのウイルス病が報告されています。特に、微小害虫が媒介するウイルス病は、ほ場内で蔓延(まんえん)しやすく、その被害は、県内各地で問題となっています。
これまで、これらのウイルス病に対する対策として、ウイルスを媒介する微小害虫を「入れない」、「増やさない」、「出さない」の3つの対策に取り組んできました。
今回は、主なウイルス病とウイルス病を蔓延させない基本的な対策及びその方法についてご紹介します。

ウイルス病の種類とその症状

ウイルス病の種類

ウリ科野菜類において微小害虫が媒介するウイルスは、主にウリ類退緑黄化ウイルス(以下、CCYV)とメロン黄化えそウイルス(以下、MYSV)が挙げられます。なお、病名やウイルス病を媒介する微小害虫は、表1のとおりとなっています。
表から分かるとおり、同一ウイルスの感染が原因であっても、品目によっては病名が異なる場合があります。しかし、品目の違いに関わらず、感染・発病しますので、それぞれの品目に配慮した防除対策の実施が求められます。

ウイルス病の症状

①ウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV
CCYVに感染したメロンやキュウリは、葉に退緑小斑点(図1)が現れ、やがて症状が進むと葉全体が黄化し、果実重量の減少や糖度の低下がみられ、最終的に収量が減少します。
同じく感染したスイカは、葉に不鮮明な退緑斑紋(図2)を生じ、次第に葉全体が黄化します。さらに黄化症状が進むとえそ斑が葉の周辺または葉脈間から生じ、メロン同様に果実重量が減少します。

図1 メロン退緑黄化病
図2 スイカ退緑えそ病

(「熊本県病害虫防除指針 E 野菜 スイカ及びメロン」から引用)

②メロン黄化えそウイルス(MYSV
MYSVに感染したメロンは、葉に退緑小斑点(図3)を生じ、新葉にモザイク症状も見られます。さらに、果実のネット形成が異常になる場合があります。
同じくキュウリでは、葉の葉脈付近が透けて見える症状が現れ、その後激しく黄化し、えそ斑を生じます。加えて、一部品種では果実にモザイク症状が生じることがあります。

図3 メロン黄化えそ病

(「熊本県病害虫防除指針 E 野菜 メロン」から引用)

ウイルス対策

1.入れない対策

ハウス内外の除草を徹底し、野外の微小害虫の侵入を防ぎます。
コナジラミ類等の害虫は、紫外線(UV)を可視光として行動するため、UVカットフィルム展張の施設には、野外からの侵入が抑制されます。このため、育苗ハウスにはUVカットフィルムを展張します。さらに、入口は二重扉にすることで、害虫の侵入を防ぎます。
次に、苗を本ぽに移動する際は、野外からの微小害虫の飛び込みを防ぐため、幌付きのトラックや防虫ネットで覆って移動します。この時期に感染すると被害が大きいため、特に注意します。
本ぽにおいては、防虫ネット0.4㎜目合い以下のネットを展張します。既に防虫ネットを展張されている方においては、ネットの破れや隙間が無いか確認しましょう。
令和6年度にスイカほ場を対象に実施した防虫ネット展張効果の調査において、0.4㎜目合いでは、微小害虫であるコナジラミ類の侵入はあるものの、スイカ退緑えそ病の感染率は1%程度に抑えることができました(表2)。
このことから、育苗から定植後の生育初期にコナジラミ類の侵入を防ぐことで、退緑えそ病の発生を抑えることができると考えられます。

2.増やさない対策

栽培期間中は微小害虫をハウス内で増やさない、ウイルス感染を広げない対策を実施します。育苗後期以降の粒剤処理や定植前もしくは定植時に農薬の灌注(かんちゅう)処理を行い、定植直後の害虫寄生・ウイルス感染を防ぎます(図4)。また、農薬による定期的な防除を行い、ハウス内で微小害虫が増えないように管理します。
また、定植後2週間までの早い段階に感染が確認された株は抜き取り、ハウス外へ持ち出してください。

図4 メロン退緑黄化病に対する育苗期後半粒剤処理と定植時粒剤処理の効果
(熊本県農業研究センター 研究成果 平成21年9月より)

3.出さない対策

ウイルスを媒介する微小害虫の防除においては、薬剤抵抗性の発達が問題となっています。そのため、栽培終了時のハウス密閉処理により微小害虫を物理的に死滅させることで、①薬剤抵抗性の発達した微小害虫の増加を防ぐ、②次作へのウイルス伝染を断ち切るという2つの重要な対策が実施できます。
具体的には、ハウス内の除草を行った上で、作物は根を引き抜くか、地際で切り、すみやかに密閉処理を開始します(図5)。雑草や作物が枯れた後、10日以上ハウスを閉め込み、害虫を死滅させます。

図5 密閉処理を実施しなかった場合の保毒虫増加モデル図

さいごに

地域でのウイルス病の感染拡大を防ぐために、ウイルスを保毒した微小害虫(保毒虫)を次作へ「つなげない」ための対策を産地一体となって取り組む必要があります。そこで、微小害虫が寄生するウリ科以外のトマトやナス、ピーマン等の栽培ほ場についても、栽培終了後にはハウスの密閉処理をお願いします。
また、近年、メロンの退緑黄化病抵抗性品種の栽培が各地で増加しています。これらの品種は、”ウイルスに感染しない”のではなく、”感染しても症状が出にくい”品種であるため、従来の防除対策を徹底しなかった場合は、保毒虫の密度を高める可能性があります。そのため、抵抗性品種を導入したほ場においても、引き続き微小害虫の防除対策の徹底をお願いします。

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

ウリ科野菜類(メロン、キュウリ、スイカ)のウイルス病対策について

 

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