カンキツの整枝・せん定のポイント

はじめに

整枝・せん定の目的は、①高品質果実の連年安定生産、②着果量の制限、樹勢の調整、③作業性の改善にあります。令和7年産の着花予想に応じて、樹体に合ったせん定を心がけましょう。

縮伐・間伐

せん定に入る前に、まずは園内を見渡し、密植になっていないか確認しましょう。密植園では、樹冠内部が日照不足になることで光合成能力が低下し、品質低下を招きます。また、枯れ枝が発生しやすいため、病害虫の発生を助長し、防除・摘果・収穫作業などの作業効率が悪くなるといった様々な弊害があります。
密植状態にある園は、縮伐や間伐を実施し、樹と樹の間は1m程度(人が樹に触れず通れるくらい)を目安に通路を確保しましょう(図1)。

図1 間伐のイメージ

整枝・せん定

せん定の際は、先に述べたせん定の目的を意識して行います。
基本的な樹形は、図2のように3本程度の主枝を配置し、それぞれの主枝から亜主枝を2~3本程度配置する開心自然形とします(図2)。この基本配置がきちんとできていれば、作業性・防除効率の向上や収量確保につながります。

図2 開心自然形の樹形(岸野功氏作図)

せん定すべき枝は以下のとおりです(図3)。
①主枝の先端(低樹高化)
樹高は2.5m程度が目安です。急激な切り下げは枯れ込みや樹勢低下を招きますので、段階的に2~3年かけて行います。
②主枝と競合する枝
本来主枝となるべき枝が弱る原因となり、樹形が乱れます。
③逆行枝
樹冠内部の日照不足・風通しの悪さの原因となります。
④亜主枝から出た立ち枝
放置すると亜主枝が弱り樹形が乱れます。
⑤重なり枝
混んでいる部分やかぶさっている枝は同格の枝まで切り戻します。
⑥伸びすぎた側枝、枯れ枝
伸びすぎて地面につくような側枝は、傷果の発生を招きます。

図3 せん定が必要な枝

温州みかんのせん定

前年の収穫量や樹の状態を踏まえて、着花予想に応じたせん定を行います。
◯着花が多いと予想される樹
せん定は厳寒期を過ぎた2月中旬頃から取り掛かります。切り返しせん定を多めに取り入れて、太枝の除去や作業の妨げになる枝を含め整枝を考えたせん定を実施しましょう。また、翌年の結果母枝確保のために、予備枝の作成を行い新梢(しんしょう)の発生を促します。
◯着花が少ないと予想される樹
花芽への影響が少なくなる3月中旬以降からせん定を始めます。間引きせん定主体のせん定とし、立ち枝や果梗枝を間引く程度の軽めのせん定にとどめます。極端に着花が少なくなると予想される樹では、花芽が確認できてから、花蕾(からい)が着いた新梢に被さっている枝や、立ち枝、徒長している新梢を除去して着果を促進します。

不知火類のせん定

せん定は厳寒期を過ぎた2月中旬頃から取り掛かります。不知火類は品種によって樹勢が異なります。「肥の豊」は、M-16A「不知火」と比べて樹勢が強いことから、M-16A「不知火」の後にせん定するようにします。
不知火類は、節間が短く枝梢発生が多いため、枝が混みやすくなります。そのため、間引きせん定を主体に、混み合った部分の枝をせん除して、樹冠内部まで日当たりをよくするようにします。
着花が多いと予想される樹は、総状花が多いため養分の消耗が大きく、結実率の低下や樹勢の低下にもつながります。また、新梢の発生が少なく、長さも短くなるため、来年の優良な結果母枝も少なくなります。総状花は確認でき次第、早めに優良な結果枝まで切り戻し、残した花の充実を図りましょう。
着花が少ないと予想される樹は、着花を確認後、花周辺の芽かき、摘心、かぶさり枝の除去を行い、花に日を当てて充実を図りましょう。

さいごに

高品質果実の安定生産には、せん定をはじめとして、土づくり、施肥、かん水、摘果など様々な作業を適切に行うことが重要となってきます。まずは、せん定により、園内の作業性や環境改善から始め、令和7年産の果実生産のスタートをきりましょう。

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

カンキツの整枝・せん定のポイント(PDFファイル)