サツマイモにおける 病害対策について(育苗期編)

はじめに

熊本県は全国有数のサツマイモ産地であり、県内で593ha(令和4年産熊本県主要野菜生産状況調査より)の作付けが行われています。その中でも、菊池地域は県全体の4割以上のシェアを持つ県内最大の産地です。
平成30年11月に国内で初確認された「サツマイモ基腐病」は、九州を中心に甚大な被害をもたらしています(令和6年12月現在、全国36都道府県において確認)。本県においても発生が確認され、令和2年10月30日に特殊報が発表されています
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/215130.pdf)。
また、基腐病以外にもサツマイモの立枯れ・塊茎腐敗を引き起こす病原菌は複数あり、一度まん延してしまうと甚大な被害に繋がります。農業普及・振興課では、生産者やJA、市町と協力して「サツマイモ基腐病」をはじめとした土壌病害への対策について取り組みを進めてきました。
病害対策の基本は、病原菌を「持ち込まない、増やさない、残さない」ことです(図1)。特に、未発生のほ場では「持ち込まない対策」が最も重要な対策になります。今回はサツマイモ栽培における育苗期の持ち込まない対策(ほ場準備、種芋・苗消毒)と増やさない対策(土壌消毒)について紹介します。

図1 菊池地域におけるサツマイモ栽培暦

育苗ハウス、ほ場の準備

育苗ハウスや作付けほ場では、植付け前に土壌殺菌剤※1(クロルピクリン剤、クロルピクリンを含む混合剤、バスアミド、キルパー※2、フロンサイドSC、フロンサイド粉剤またはフリントフロアブル25)で土壌消毒を行いましょう。土壌消毒は、地温7℃以上を確保でき、土を握って固まる程度の水分があることを確認してから実施してください。
降雨による停滞水や跳ね上がりで病原菌が周辺株へ感染し、発生拡大するため、定植前には、ほ場内に水が溜まらないように、ほ場のまわりの溝(額縁明きょ)や枕畝の間を切る等の排水対策を行いましょう。

育苗ハウスにおける種芋、苗の準備

まず前提として、植付け前には生産履歴がはっきりとしている健全な種芋、又はウイルスフリー苗を使用してください。種芋はトップジンМ水和剤※130分浸漬したものを十分に風乾させてから使用しましょう。
自家種の種芋を使用する場合は、病害未発生のほ場で採取した芋を事前に腐敗等がないか確認し、選別してください。また、自家種芋の連用は病害のまん延を助長する恐れがあるため、定期的にウイルスフリー苗等を導入して、種芋を更新するようにしましょう。

植付け前の準備

まず、育苗ハウスから健全な苗を採ります。採苗は、地際から5㎝以上切り上げて行いましょう。加えて、採苗に使うハサミは、アルコール等でこまめに消毒しながら使用してください。
次に、苗を消毒するためにバケツ等を利用して苗を薬剤で浸漬処理しましょう(図2、ベンレート水和剤およびベンレートT水和剤20は苗全体が薬剤につかるように30分間、トリフミン水和剤は17時間苗の基部の切り口がつかるように浸漬※1)。浸漬処理の後、苗に水滴が残っていると病原菌の侵入を助長するため、薬液が乾いてから植え付けてください。

図2 苗消毒の方法

最後に

今回は「持ち込まない対策」について重点的に説明しました。育苗期の発生を未然に防ぐことで、栽培ほ場における発生を効果的に防ぐことができます。また、ほ場においては薬剤防除や病害が疑われる際の早期抜き取り、排水対策等の「増やさない対策」、収穫後に速やかな残渣を処理する「残さない対策」についても併せて実施することで、総合的に病害発生のリスクを減らすことができます。
今後もサツマイモの安定した生産ができるように正しい対策を継続していきましょう。

※1 農薬を使用する際は、登録内容を確認のうえ、必ずラベルにある注意事項を守りましょう。
※2 各種クロルピクリン剤、クロルピクリンを含む混合剤、バスアミド微粒剤(ガスタード微粒剤)、キルパーで土壌消毒を行う際は、周囲への影響がないか確認のうえ、消毒作業後は必ずビニール等で被覆しましょう。

県北広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

サツマイモにおける病害対策について(育苗期編) (PDFファイル)

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