タマネギの栽培管理について~安定生産技術と省力化対策~

はじめに

令和3年産のタマネギ生産は、育苗期は晴天に恵まれ、良質な苗ができました。定植後は好天に恵まれましたが、年明け以降の曇雨天により、タマネギべと病等の病害の発生が多くなりました。
本年は、梅雨明け後から8月上旬までは好天に恵まれましたが、中旬以降の曇雨天により、育苗床の太陽熱消毒の開始が遅れたところでは効果が不十分な場合もあるため、病害発生に注意が必要です。
タマネギは露地栽培であるため、収量や品質は天候に大きく左右されます。そのため、「排水対策」、「良質な苗の生産」及び「適期作業」が安定生産のカギとなります。

育苗

(1)苗床準備
排水性、日当たりの良い、用水の確保が可能な場所を選定します。苗床は連作するとタマネギべと病の卵胞子等が蓄積するため、太陽熱消毒を実施し、病原菌の密度を減らします。
育苗期間中に、苗床が冠水すると根痛みをおこすため、額縁明きょや高畝など排水対策を十分に行います。また、台風に備え、防風ネットを設置し風対策も行います。

写真1 太陽熱消毒の様子

(2)は種
早まきは分球、早期抽だいの原因となりますので、は種は地域や品種に応じて適期に行います。

 

※良質な苗の目安
草 丈:25㎝
茎 径:6~8㎜
100本重:600g程度

 

定植

株間10㎝、条間20㎝の4条植えが基本ですが、葉付タマネギや超極早生品種では、株間、条間を広くし、球の肥大を促進させます。
地下水位が高く排水の悪い水田では高畝(20㎝以上)とします。

施肥

マルチ栽培の場合、全量基肥とし、緩効性肥料を主体に施用します。
芦北地域では、「タマネギ専用肥料」を使用しています。有機質肥料とLP肥料※1及びハイパーCDU※2肥料を組み合わせた有機率50%の肥料です。近年は、植付時期まで高温が続く暖秋暖冬傾向のため、タマネギの生育が進みすぎ、分球や抽だいなどの発生が懸念されます。そこで、ハイパーCDU肥料を使用することにより、植付直後の肥効が緩やかになり、品質が安定します。

※1 LP肥料:緩やかに肥料成分が溶出する被覆肥料で温度が上がる程、溶出が早くなります。
※2 ハイパーCDU:肥効調整型肥料の一種で、温度、水の影響を受けにくく、安定的に窒素が溶出します。

連作障害対策

水田でのタマネギ栽培では、水稲を作付けすることにより連作が可能です。畑作の場合は連作障害が懸念され、また、夏期に何も作付けしないと雑草が繁茂し、タマネギ作での除草が大変なため、ヒマワリ等の緑肥を作付けます。
緑肥としてのヒマワリは、有機物の投入としての狙いの他に、VA菌根菌※3の共生作物として、菌根菌の密度を高め、後作のリン酸吸収促進効果が期待されます。

※3 VA菌根菌:作物の根に共生し宿主にリン酸の吸収を促します。

芦北地域における省力化に向けた取組

(1)良質なセル苗生産
規模拡大に向け、全自動移植機の導入を図っています。セル苗を定植するため、良質な苗生産が重要です。出芽揃いや根鉢の形成等により定植率が変わるため、は種後2週間のかん水には特に注意し、生育を揃えます。

写真2
左:定植適期のセル苗、右:全自動移植機による定植

(2)雑草対策
マルチ栽培であっても植穴から雑草が生えます。全自動移植機で定植すると、植穴が通常より大きくなり、雑草量が増加します。雑草は、早めに除草することで抜きやすく作業も楽で、タマネギの根へのストレスも低減されます

写真3 植穴の比較
(左:手植え(植穴約1㎝)、右:機械定植(植穴約3㎝))

おわりに

安定生産に向けては、「排水対策」、「良質な苗の生産」及び「適期作業」が重要です。
特に、苗の生産においては、は種を適期に行い、かん水は乾燥・過湿を避け、こまめに管理します。
また、近年はタマネギべと病等の発生が増えてきています。病害の発生は天候による影響も大きいため、栽培期間を通して定期的な防除を行い、予防を徹底することが大切です。

写真4 タマネギべと病り病株
(〇:分生胞子が作られた葉身)

県南広域本部  芦北地域振興局  農業普及・振興課

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PDF:タマネギの栽培管理について

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