遮光がトマト黄変果発生に及ぼす影響

はじめに

近年のトマト栽培において、果実の肩部が赤色に着色せずに黄色になる「黄変果」(図1)の発生が問題となっています。
これまでの報告によると、黄変果は果実が高温(約30℃以上)になることで赤色色素であるリコペンが生成されにくくなり、赤色に着色しないため発生するといわれています。このことから、黄変果を防ぐためには果実温度を高くしないことが重要であると考えられます。
そこで、玉名地域のトマト生産ほ場を対象に、遮光の有無が果実温度や黄変果発生に与える影響を調査したのでご紹介します。

図1 トマト黄変果

調査内容

令和元年産のトマトにおいて、遮光をしない無遮光区と4月26日から遮光(遮光率50%)を行う遮光区で「遮光が果実温度と黄変果発生に及ぼす影響」を調査しました。
調査項目はハウス内温度、果実温度、黄変果発生率としました。

 

〔ハウス内温度〕データロガーをハウス中央部、高さ100cmのトマト群落内に設置しました。

 

〔果実温度〕サークルサーモ(放射温度計)を用いて日の当たっている果実(以下、直射下果実)、葉の陰で日が当たっていない果実(以下、葉陰果実)の温度を13~14時に測定しました。

 

〔黄変果発生率〕トマトを室内で常温静置し、赤く色づいてから黄変果の発生程度を調査しました(各区50玉以上)。
果実温度、黄変果発生率は令和2年4~6月に計7回調査を行いました(表1)。

調査結果

〔ハウス内温度〕
晴天日のハウス内温度については、無遮光区は遮光区に比べて最大で5℃以上高くなりました(図2)。
一方、曇雨天日のハウス内温度については、大きな差はありませんでした(図3)

図2 晴天日のハウス気温
図3 曇雨天日のハウス気温

〔果実温度〕
4月27日から5月25日までは無遮光区に比べ、直射下果実、葉陰果実ともに低くなりました。しかし、6月以降は無遮光区と遮光区の差は小さくなりました(図4)。

図4 遮光の有無による果実温度

〔黄変果発生率〕
黄変果は両区とも4月20日から確認され、無遮光区では5月25日に発生率が60%と高くなりました。遮光区の発生率は約27%でした。しかし、6月になると遮光区でも発生率は60%を超えました(図5)。

図5 遮光の有無による黄変果発生率 

考察

黄変果が発生するとされる30℃で線引きし、果実温度と黄変果発生率を比較しました(図6)。無遮光区は、日射下果実、葉陰果実ともに4月27日には30℃を超えました。また、ハウス内最高温度も30℃近くになりました。一方、遮光区は、ハウス内最高温度、日射下果実温度は5月11日に30℃を超えたものの、葉陰果実温度は5月25日まで30℃以下となりました。
ハウス内温度が抑えられることと、直射光の遮断により果実温度の上昇が抑えられて黄変果発生率が低くなったと考えられます。しかし、6月以降は遮光区の葉陰果実温度も30℃を超えており、発生率も高くなりました
これらのことから、遮光の有無による黄変果発生程度の違いはハウス内温度及び果実温度の差によるものと考えられ、遮光によるハウス内温度並びに果実温度の低下は黄変果の発生を抑える効果があると考えられます。
さらに、葉陰果実は直射下果実よりも果実温度が低くなることから、適正な葉数を確保し、葉陰を作ることで黄変果の発生率を下げられる可能性があります。

図6 ハウス内最高気温と果実温度、黄変果発生率

最後に

黄変果はこれまでの報告のとおり果実温度が30℃以上の高温になる場合に発生率が高くなることが確認できました。4月以降の高温、多日射の時期には遮光や妻面の換気等の降温対策が必要となります。
JAたまなトマト部会では、これらの調査を参考にR3年春から遮光開始時期を設定し、黄変果を防止するための取り組みが実施されます。

県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課

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