通常、ニンニクは低温により花芽分化し、分球して肥大すると正常球になります。暖冬により低温が不十分だと花芽分化せず、異常球になると言われておりますが、種球の冷蔵処理は異常球の抑制効果があるという報告もなされています。そのため、種球の冷蔵処理が有効な手段と考え、平成30年度から冷蔵処理試験を関係機関と取り組み、その効果を検討しました(表2)。冷蔵処理の効果が確認できたことから、令和元年度には、品種、冷蔵温度や処理期間について検討し、その結果、球磨地域で栽培されている主要品種(「山東」を除く)では、5℃で20日間の冷蔵処理を行うことで「異常球」発生を低減できることが判明しました。
ニンニクの生産安定技術
1.はじめに
球磨地域では、ニンニクが露地野菜の主要品目の1つとして位置づけられており、現在、約70名の生産者が5haの作付けを行っています。平成21年度に生産部会が設立されて以降、順調に出荷量は増加していましたが、平成26年度に「異常球」が発生したことにより、出荷量が大きく減少し、大きな問題となりました。そのため、農業普及・振興課では、生産者やJA営農指導員とともにニンニクの「異常球」発生低減に向けた取組みを進めてきました。そこで、今回はニンニクの「異常球」発生低減に有効と考えられる対策(種球の冷蔵処理、適期植付)を紹介します。
2.「異常球」について
ニンニクは、一般的には9月下旬~10月上旬に種球を植付け、5月以降に収穫します(表1)。この時に、鱗茎に6~12個の鱗片が形成されています(図1)。
「異常球」には、鱗片が正常に分化しない「スポンジ球」や複数形成されるはずの鱗片が1個しか形成されない「中心球」などがあり(図2)「異常球」が多発すると減収に繋がるため、生産者で大きな問題となっています。その原因は、温度や日長等が関係していると言われていますが、品種の違いでも発生条件が異なることから、栽培地域の気候や品種に合わせた対策が必要となります。
なお、球磨地域で栽培されている4つの主要品種のうち、「山東(サントウ)」を除く「嘉定(カテイ)」、「大倉(タイソウ)」及び「燐ぎ(リンギ)」の3品種は「異常球」の発生が多く、令和2年度に生産者へ実施したアンケートによると、収穫物の約30%で「異常球」が発生している状況です。
3.「異常球」発生低減の取組(1) 種球の冷蔵処理
4.「異常球」発生低減の取組(2) 植付時期の検討
令和2年度に「異常球」発生状況について生産者へアンケートした結果、低温処理の有無に加え、植付時期も「異常球」発生に大きく関係していることが分かりました(図3)。
具体的には、10月中旬植付の場合、冷蔵処理により「異常球」の発生が少なくなっていますが、9月中旬植付では、冷蔵処理を行ったにも関わらず「異常球」の発生が多くなっています。つまり、極端な早植えは、冷蔵処理の効果が落ち、「異常球」の発生が多くなるため、植付時期は10月20日頃が適期であると考えられました。
5.まとめ
当課では、ニンニクの「異常球」発生低減には、「冷蔵処理(5℃×20日間)」と「適期植付(10月20日頃)」が有効な対策として、部会への情報提供と対策徹底を図りました(表3)。その結果、令和4年度では異常球発生が10%以下に抑えられています(令和元年度30%程度)。
<ただし、冷蔵処理の温度・期間や植付時期については、栽培地域や品種によって条件が異なるため、球磨地域以外で栽培にあたっては上記の冷蔵処理や植付時期を参考に、ご自身の地域で検討ください。>
今後も、「異常球」発生低減に向けて対策の徹底を図るとともに、新たに「二次生長」という生理障害も増加していることから、生産者や関係機関と一緒にニンニクの安定生産技術を検討していきます。
県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課
ニンニクの生産安定技術(PDFファイル)
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