そもそもサイレージ調製とは、材料草の栄養価等をできるだけ損なわずに長期間貯蔵するための方法です。そのため、まず何よりも重要なのは、良質な飼料用トウモロコシを作ることです。この良質とは、面積あたりの収量が多く、栄養価が高くて嗜好性の良いことを言います。
一番のポイントは、適切な時期に刈取を行うことです。
飼料用トウモロコシは黄熟期に栄養価が高く、刈取の適期となります。判定の方法は簡単で、「ミルクライン」という子実の白い部分と黄色い部分の境界が、子実の中央部にあるのが黄熟期です。 ほ場でいくつかの子実を割って確認し、この状態になっていれば、収穫適期と言えます。
しかし、日々の作業の合間を縫って、適期に刈取作業を終わらせるのはなかなか難しいことです。そのため、コントラクター等の外部支援組織を積極的に活用していきましょう。
さらに、地域の気候や作型にあった品種の選定と施肥管理も重要です。熊本県では毎年、飼料用トウモロコシを含む飼料作物の奨励品種を紹介した展示ほを設置しています。品種選定の際にはぜひご活用ください。また、2021年2月10日の「技術と方法」の記事「飼料用トウモロコシの栽培のポイントについて」において、飼料用トウモロコシの施肥管理について詳しく説明しているので、参考にされてみてください。
バンカーサイロにおけるトウモロコシサイレージ品質向上のポイント
はじめに
菊池地域では、酪農家を中心に、バンカーサイロを主体としたトウモロコシサイレージが多く作られています。大規模なバンカーサイロで高品質なトウモロコシサイレージを作るには、
①質の良い飼料用トウモロコシ
②均一な踏圧密度
③確実な密封
➃異物の混入防止
が必要です。
今回は、それぞれの項目におけるポイントを簡単に説明していきます。
質の良い飼料用トウモロコシを作る
踏圧は均一にしっかりと!
良質な発酵(乳酸発酵)を行うためには、乳酸菌が活動しやすい嫌気状態を作る必要があります。そのため、サイロに詰める際にしっかりと踏圧することが重要です。バンカーサイロにおける踏圧のポイントは、広く薄く拡散させることです(目安は30㎝以下)。
材料草の拡散と踏圧を繰り返しながら、徐々になだらかなスロープを作っていきます。そうすることで踏圧の効果が高まるだけでなく、踏圧に使用する車両の転倒リスクも軽減することができます。
使用する車両は重量が重いほど密度が高まり、特に接地圧の高いホイール式のトラクターやホイールローダーが有効です。もちろん台数を増やすことも有効ですが、接触等の事故には気を付けましょう。
踏圧にかける時間は長ければ長いほど密度が高くなります。材料草の投入に追われ十分に踏圧できないことがないように、2本のバンカーサイロを同時に詰めたり、十分な人員を配置したりすることで、効率的に作業を行う必要があります。ダンプトラック1台あたり、拡散を2分以内、踏圧を4分以上が理想です。また、バンカーサイロは壁面付近の踏圧が特に不足しがちなため、安全を確保しながらしっかりと踏圧する必要があります。壁際を高めにすることで、比較的安全に作業が可能です。
確実に密封する
良質な発酵のためには、しっかり密封することも重要です。踏圧を行った後は速やかに密封しましょう。作業が複数日にまたがる場合でも、必ず作業後にシートで被覆し、表面が空気に触れるのを防ぎましょう。プロピオン製材等をかけておくことも、変敗の抑制につながります。シートと材料との間に空気が流入しないよう、シートの上には古タイヤ等を乗せます。この古タイヤは側面のみを薄切りにしたものでも効果があります。また、サイロの全面ではなく、外周部のみに乗せても影響はありません。
異物の混入を防ぐ
収穫や貯蔵を行う際に注意したいのが、異物の混入です。不良発酵の原因となる「酪酸菌」は、土壌中に多く存在します。そのため、刈取の際に土砂が混入することで不良発酵(酪酸発酵)を引き起こすリスクが高くなります。ハーベスターの刈り高さを低く設定しすぎると、土を巻き込む可能性があるため、下げすぎないようにしましょう。
また、運搬トラックからの異物混入を防ぐため、バンカーサイロのエプロン部分にシート等を敷いてタイヤに付着した土砂をできるだけ落とし、サイロの奥まで入らず、手前で材料草をおろすようにしましょう。
長年使用しているサイロ内に付着する汚れや砂利等の異物も、サイレージの品質や給餌する牛に悪影響を与える可能性があります。そのため、サイロ詰めの前にしっかりと清掃を行うとともに、劣化部分は適宜補修を行いましょう。
おわりに
トウモロコシサイレージの収穫調製作業は、忙しい日々の中でどうしても作業性が優先されがちです。しかし、いくつかのポイントに注意して多少の時間をかけることで、嗜好性の高い高品質なサイレージを作ることができ、結果的に経営のプラスにつながります。
作業の中で少しだけポイントを意識して、牛の喜ぶサイレージ作りを目指しましょう。
県北広域本部 農林水産部 農業普及・振興課