ホオズキの定植準備と定植後の管理について~高品質・安定生産のポイント~

はじめに

県内のホオズキ栽培は、鹿本地域を中心に7月お盆向けの栽培が行われています。上益城地域の山都町では、準高冷地の冷涼な気候を活かして、高単価が見込める8月お盆向けに出荷しています。
そこで、上益城地域の栽培事例を踏まえて、8月お盆向けホオズキの高品質・安定生産に向けた栽培技術のポイントを紹介します。

本ぽの選定

水が確保でき、排水・風通し・日照条件が良い場所を選びます。また、連作障害を防ぐため、前作にナス科を栽培していない場所が適します。連作地では、堆肥等の有機物を投入後に土壌消毒を実施します。

親株管理

霜除けの保温ハウスで前作の実生から得られた親株を1月中旬頃まで生育させます。1月下旬以降は、ハウス側面を開放し、低温で地上部を枯らして地下茎を充実させます。親株が大きく育てば、1株から10本以上の苗が確保できます。

本ぽ準備

(1)ハウス内外の整備
ホオズキの生育適温は15~25℃ですが、定植時期である2月下旬~3月上旬の山都町の平均気温は15℃未満のため、定植前にハウスビニルを被覆しハウス内の地温・気温を確保します。また、雨水が浸水すると不揃いや病気の発生につながるため、ハウス周囲に明きょを堀ります。その上に古ビニルを敷くことで、ハウス周辺の雨水を速やかにほ場外に流すことができます(図1)。

図1  明きょの設置

(2)施肥
基肥は成分量で、10a当たり、N:10 kg、P:20kg、K:10kgが目安です。肥料分の過剰や不足は着花(果)不良の原因となるため土壌分析を行った上で施肥します。

 

(3)畝作り
かん水ムラによる生育不良を防ぐため、畝面を均平にし、均一に湿らせます。畝は、幅70㎝、条間40㎝、株間15㎝(図2)を目安とします。畝の高さは、土質に合わせて作ります。粘土質土壌(排水性の悪いほ場)では、土壌が過湿になりやすく根腐れや白絹病の発生を助長するため、高畝にします。さらに、排水性を向上させるため有機物の投入等による土質改善が重要です。一方、火山灰土壌(排水性の良いほ場)では、保水力が低く水分不足による生育不揃いになりやすいため、極端な高畝は控えるとともに、畝を軽く鎮圧し、保水性を確保します。また、定植後の地温確保並びに乾燥防止のため黒マルチを被覆します。

図2  畝の概略

定植

(1)苗の準備
苗数は、栽培面積10a当たり約一万本が必要となります。病害虫のない充実した苗を選びます。
2月中旬頃に親株を堀上げ(写真1)、根(挿し穂)を2芽程度の長さで調整します(写真2)。穂は、根の先端(生長点)部分が最も活力があり、定植後の出芽揃いや生育が良いため、できるだけ根の先端部分を使用します。なお、穂の数が不足する場合は、根の間部分を調整します。同一ほ場内の生育を揃えるため、ほ場を分けて定植します。定植まで風通しの良い日陰や冷蔵庫で保管します。

 

(2)定植
(1)で調整した穂の芽が上向きになるよう畝面に挿し、上部に1㎝程度覆土します。

写真1 堀上げの様子
写真2 調整後の挿し穂(根の先端部分)
写真3 定植後の様子(4月)

定植後の管理

(1)温度管理
定植直後は、ホオズキの生育適温(15~25℃)でしっかりと保温します。気温が高くなり、日中のハウス内が30℃を超える場合は換気を行います。高温・高湿度な環境は、着花(果)不良や病気の発生につながります。

(2)かん水
生育初期は株周りが乾燥しないようにこまめにかん水します。低温期は地温低下を防ぐため、天気の良い日中に行います。

(3)株整理、わき芽除去
株整理並びにわき芽除去は、栄養の分散や株が込み合うことで風通しが悪くなり、病害の発生並びに花(実)飛びや節間の間延びによる草姿の低下を防ぎます。株整理は、1穂から複数発芽することがあるため、草丈が15cm程度になる頃(4月上旬)に1穴あたり1株にします。わき芽除去は、生長に伴って発生するため、定期的に早めに摘み取ります。

(4)着果促進
着果促進を図るため、クロマルハナバチを導入します。導入時期の目安は、第1花が開花する時期(5月上旬頃)です。クロマルハナバチの使用に当たっては、メーカーの留意事項に従ってください。

(5)天敵による微小害虫防除
天敵放飼は、マルハナバチの導入に合わせて行います。
微小害虫(アザミウマ類、アブラムシ類、ダニ類)は葉や新芽を食害・吸汁し、ウイルス病や芯止まり等の被害を生じ、収量・品質の低下を招きます。これらの微小害虫は、目視での発見が難しく、薬剤による防除は非常に手間がかかります。このため、天敵を導入することで害虫の密度を抑制し、害虫防除回数を大幅に削減でき、労力が軽減されます。また、化学農薬使用の低減により、環境と人にやさしい農業にもつながります。

(6)着色促進
着色は、着果数や草丈が十分に確保できたら、摘芯し、収穫3週間前頃(7月上旬)にエスレル(500~1千倍)を1週間間隔で2回散布します。散布は薬害を防ぐため、日中の高温時を避け、未熟果や出荷時に必要な葉にはかからないようにします。また、均一に色付けを行うために、果実の裏側にもかかるように丁寧に散布します。1回目の散布から1週間後に再度500~700倍程度で軽く散布します。

収穫・出荷調整

収穫は、地際部から切り取り、貯水槽で水揚げを行います。出荷調整は上位葉を5枚程度残し、不用な葉やわき芽を除去します。10本を1束に結束(2か所)し、段ボールで出荷します(写真4)。

写真4  出荷時の梱包の様子

県央広域本部 上益城地域振興局 農業普及・振興課

 

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