レタスの栽培管理 (育苗~本ぽ)

はじめに

天草地域では冬場の温暖な気候を活かし、早期水稲との輪作でレタス栽培が行われています。現在の冬レタスの栽培面積は184haとなっており(令和5年産熊本県主要野菜生産状況調査より)、県内でも有数の冬レタス産地です。
天草地域の作型は、11月~12月までの年内どりと翌1~3月までの年明けどりとに大別され、各作期により推奨品種が定められています。
ただし、レタスの生育は、気象や栽培ほ場の地力などの影響を大きく受けるため、品種選定にあたっては長期予報を参考のうえ、自分の営農体系に合った品種を選定する必要があります(表1)。

播種(はしゅ)

レタス栽培は、苗の状態が定植後の生育や収穫物の収量、品質の良し悪しを決めるため、育苗期の管理が非常に重要です。
年内獲りの播種は、9月上旬から行います。この時期の気温は高いため、抽苔(ちゅうだい)の恐れがない晩抽性の品種を選定します。種子は、発芽促進のためプライミング処理※1されたコート種子※2を用い、5℃以下の冷蔵庫で保管した後、播種作業直前に取り出し、播種作業に取り掛かります。
播種作業は、直射日光の当たらない、作業小屋等の日陰で行います。200穴のプラグポットに培土を均一に詰め、全ての底穴から水が滴るくらい十分にかん水し、各セルの中央に深さ3~5mmの播種穴を開けます。穴に種子を入れたら、種子がわずかに隠れる程度に薄く覆土し、そのまま育苗箱を5段程度に積み重ね、乾燥を防ぐためにブルーシート等をかけ、涼しい場所に置いておきます。
一般的にレタスの種子は、25℃以上になると休眠し、発芽しにくくなる性質があります。近年の高温により、9月上旬でも晴天時には気温30℃以上になるときもあり、発芽には適さない環境になっています。そのため、播種後、約2日程度は軒下など涼しい場所に置くか、資材(遮光ネット、寒冷紗など)で直射日光を避ける対策が必要です。また、播種作業を行う時間帯を午前、または夕方の涼しい時間に行うことも効果的です。
播種作業後、半分以上の種子のコート(被膜)が割れたら育苗箱を育苗場所に移して広げます。育苗場所は、コンクリートブロックやパイプ等で架台を作り、その上に育苗箱を並べ、排水、風通しを良くします。

※1 プライミング処理:種子の発芽を促進するために、種子を一定期間、水分や化学物質にさらすことで、種子内部の酵素活動を活性化させ、発芽準備を整えること。
※2 コート種子:種子を保護し、播種しやすくするために特別なコーティングで覆った種子のこと。

育苗

レタスにおいて健苗育成の一番のポイントは、水分管理です。育苗期間中は、苗を徒長させないことを第一に考え、かん水過多にならないように注意しましょう。
かん水は、基本的に朝の涼しい時間帯にムラなくたっぷりと行います。この時、かん水時の水圧には注意をしてください。水圧が高いと、土の表面が固まったり、培土の上で種子が転がったりして、根が土へ貫入するのに時間がかかり、苗の生育にバラつきが生じます。そのため、霧状ノズルを用い静かにかん水を行います。トレイの縁周りのセルは特に乾燥しやすいため、日中の管理は、トレイの端を持ち上げ、その重さから土の乾燥具合を確認するなどして、追加でかん水を行います。かん水量の目安としては、夕方にはトレイ全体の土の表面が乾き始める程度の管理を行いましょう。夕方以降、土の水分量が多すぎると夜間に徒長が進みます。徒長を防ぐため、発芽直後から本葉が展開するまでは蒸散量が少なく、最も徒長しやすい時期であることを考慮し、かん水量を控えめにします。本葉が展開してからは、急激に水分要求量が増えるので、苗の生育に合わせてかん水量を増やしていきます。ただし、レタスは総じて過湿に弱く、かん水過多は病気や枯死の原因となりますので、過かん水には注意が必要です。
また、病虫害、鳥獣害対策として、育苗時には防虫ネット(あるいは防風ネット)をべたがけやトンネル状にかける等の対策を行いましょう(図1、写真1)。

図1 育苗箱の設置例
写真1 育苗の様子

本ぽ

計画的な定植を行うため、早めにほ場準備を行います。天草地域では、早期水稲後の水田を利用し作付けするため、特に排水対策が重要です。地下排水対策として補助暗きょ(弾丸暗きょ等)を施し、地表排水対策としては20cm以上の高うねとし、ほ場の周囲には排水溝(額縁明きょ)を掘ります。額縁明きょは、ほ場の周囲に沿って20cm30cmの深さの溝を掘り、その溝を通じて効率的に地表水を排出する方法です。額縁明きょを設置する際は、排水路への接続、周囲の水位等、ほ場内からほ場外まですべて一気通貫して接続されてはじめて効果を発揮します。そのため、事前に土質や排水環境などを確認し、施工にあたってはしっかりと計画を立てて行いましょう(図2)。

図2 排水対策イメージ図

本葉が3.5~4枚展開したら定植を行います。気温の高い10月上旬頃までは、夕方の時間帯に定植を行い、定植後は直ちにかん水を十分に行い、活着を促します。また、若苗と老化苗とを同じ日に定植した場合、収穫適期が異なり、収穫物の品質にバラつきが生じますので、均質な苗を定植するよう心がけましょう(図3、写真2)。

図3 本ぽへの定植(栽植様式の例)
写真2 定植前の苗の様子
(播種後20日)

天草広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

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