八代地域における畑地性カラーの年末出荷技術について

はじめに

八代地域では、温暖な気候を活かした花きの栽培が盛んです。その中でも湿地性カラーを中心としたカラーの栽培は、県内一位の作付面積・出荷量となっています(令和2年産熊本県花き生産実績より)。また、カラー産地としての生産・販売面の強化を狙い、新たに畑地性カラーの栽培にも取り組んでいます。

畑地性カラーの生育環境

畑地性カラーは南アフリカ地方が原産であり、地下に塊茎を形成します。原産地では、冬は休眠して春に芽を出し、初夏に開花というサイクルとなります。

品種選定

畑地性カラーには多くの品種があり、種苗会社のカタログには40品種以上が掲載されています。その中には、切り花栽培に適した品種と鉢物栽培に適した品種があり、用途に応じた品種選定が必要です。また、球根は輸入球となるため、購入を検討する際は作付け前年に注文するように努めましょう。

ほ場準備

ほ場準備の前に作ごとに土壌病害対策、雑草対策として土壌消毒を行います。八代地域では、地温の上がりやすい夏季に土壌消毒が可能であることから太陽熱消毒が一般的に行われています。
畑地性カラーは、湿地性カラーと異なり乾いた土壌環境を好みます。そのため、八代地域の沿岸部のような地下水位の高いほ場では、高畝にする等の排水対策を行います。

栽培管理

1)ジベレリン処理
畑地性カラーは通常は花立ちが悪く、そのままでは収益性が低く営利栽培に向きません。しかし、ジベレリン処理を行うことで花芽分化が誘発され、収益性を向上させることができます。
ジベレリン処理は、定植前の球根を濃度50ppmのジベレリン液に23秒瞬間的に浸漬します。
ジベレリン液の濃度が濃すぎる場合は奇形花が増加するため、50ppmを目安に調整してください。ただし、購入直後の球根は種苗会社でジベレリン処理が施してあり、処理が不要な場合があるので確認が必要です。

2)軟腐病対策
ジベレリンを乾燥させた翌日、スターナ等の殺菌剤吹付の後、早めに定植してください。夏季の高温によって、軟腐病の発生が助長されます。軟腐病が発生すると葉柄や花茎の地際部が軟化腐敗するとともに、腐敗部は軟腐病特有の腐敗臭を生じます。また、隣接株へ進展するため、発病株は速やかにほ場外へ持ち出し処分することが重要です(表1)。

年末出荷に向けた栽培計画

畑地性カラーの収穫開始時期は温度や土壌水分などの栽培環境の影響で多少前後しますが、八代地域における年末出荷作型では定植からおよそ50日前後で出荷開始を迎えます。そのため、10月上旬頃に定植することで、11月下旬~12月上旬に出荷開始を迎え、年末の需要期に出荷最盛期を迎えます(表2、写真1)。
しかし、10月以降は冬に向かって気温が低下していきますので、1015℃となるように加温を行います。加温の設定温度によって収穫時期が前後しますので、目標とする出荷期に応じた管理が必要です。

写真1 出荷時期の様子

球根養成

畑地性カラーは出荷開始からおよそ60日程度で花が立たなくなり、作が終了します。花が立たなくなった株はほ場内で放置し、地上部を枯らすことで、葉に蓄えられている養分が球根に転流し、球根の肥大が促進されます(写真2)。
球根養成期間は、40日以上とし、①地上部が黄化して枯れあがった時、②気温が上昇し軟腐病のリスクが高まる前を目安に堀上げます(写真3)。
堀上げ後は10日間程度ほ場内や倉庫内で乾燥させ、その後、冷蔵庫内で保管します。

写真2 球根養成中の様子
写真3 堀上げた球根

おわりに

畑地性カラーは生育期間中の管理作業が少なく省力的で、定植日から出荷日までの日数のブレが少なく、計画出荷がしやすい品目です。そこで、八代地域では省力化や収入補完を目的に部分的な品目の転換として導入を行っています。
また、畑地性カラーは日持ち性がよく、花色も豊富であることから花束やアレンジメント需要が高く市場性のある品目です。今後も八代地域では、畑地性カラーの導入および安定生産の確立をはじめとし、カラー産地としての生産・販売力向上への取り組みを続けていきます。

県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

 

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