夏秋ピーマンの栽培管理について

はじめに

上益城地域は県内有数の夏秋ピーマンの産地で、雨よけ栽培と露地栽培により13haで栽培が行われています(写真1)。定植期は45月、収穫期間は611月です。今回は、上益城地域で行われている栽培の事例を交えながら、夏秋ピーマンの収量・品質向上に向けた栽培管理のポイントを紹介します。

 

写真1 ピーマン栽培ほ場の様子(左:雨よけ 右:露地)

育苗~定植時のポイント

①育苗管理
ポット苗購入(9cmポット苗)購入の場合は、2次育苗なしでの若苗定植となるため、過繁茂防止対策としてかん水や基肥は控えめにします(根まわしの水は必要)。また、セル苗(主に128穴トレイ)購入の場合は、12cmポットに鉢上げし2次育苗を行います。育苗期間中は、徒長防止のため適宜鉢広げを行います。定植適期は本葉910枚程度で1番花の開花前の苗です。

 

②排水対策
ピーマンは、過湿に弱い作物です。ハウス周辺の排水溝を定植までに整備し、雨水がハウス内に侵入しないように排水対策を実施します(写真2)。露地栽培でも排水用の溝を整備し、高畝で栽培を行います。

写真2 排水対策の様子

③定植
排水不良や地下水の高いほ場ではかまぼこ形の高畝にし、乾燥しやすいほ場では低めの畝にします。地温と水分を確保するために、マルチは早めに張りましょう。十分に地温を確保しておくと定植後の根の伸長が促進されます。
定植は根鉢の1/3が畝面から露出する程度の浅植えにします(写真3)。定植直後に仮支柱を斜めに差し込み、苗を固定します。定植から4050日後に、株元の根が見える程度に根洗い(ポットの土を洗い流す)を実施し、病気に強い株づくりを行います。

 

写真3 浅植えの様子

温度・水管理、追肥のポイント

①温度管理
ピーマンの生育適温は日中30℃、夜間2025℃で、低温条件下では、生育が悪くなります。雨よけ栽培での定植後は、生育適温を意識して夜間の保温に努めましょう。なお、保温時の過湿による病害(疫病や菌核病など)の発生には注意が必要です。

②高温対策
ピーマンは、気温が高すぎると不完全な花粉が多くなり、落花につながります。高温対策として、雨よけ栽培ではハウスサイドや妻面のビニールなどを完全に開けて、通風、換気をできるだけ良くすることが大切です。

③水管理
ピーマンは浅根性であるため、土壌の乾燥は生育を著しく阻害します。そのため、天候に応じたこまめなかん水が必要です。活着後は、地上部の生育(葉面積の増加や果実の肥大)に応じて徐々にかん水量を増やしましょう。

④追肥
草勢に応じて収穫開始前から、10aあたり窒素成分で23kg1015日間隔で行いましょう。

整枝・誘引方法のポイント

1番果が着果する節(第1分枝)より下のわき芽は除きます。株の内側は繫茂しやすいため混みあってきたらこまめに枝の除去を行い、株の内部まで光が十分当たるように管理を行いましょう(写真4)。また、1番果は株づくりのために必ず摘果を行い、草勢が弱い時は2番果も摘果します。
誘引には、ひも誘引とネット誘引があり、倒伏と必要以上の枝の広がりを防止します(写真5)。ひも誘引は、支柱を互い違いにたて、株を中心に支柱と支柱の間を三角形を描くようにテープを張ります。ネット誘引は、フラワーネットを使用し、1段目のネットが第1分枝から数えて4節目程度の高さに設置します。ひも誘引、ネット誘引ともに、枝の伸長に応じて随時テープやネットを上部に追加していきます。
整枝、誘引作業は株への負担が大きいため、まとめて一度に行うのではなく、収穫のたびに少しずつ行うのが理想的です。

写真4 整枝の方法
写真5 ひも誘引(左)とネット誘引(右)の様子

収穫時のポイント

開花から収穫までの日数は、高温期で20日程度、低温期には40日程度です。収穫の遅れは草勢低下を招き、収量の山谷をつくる原因となります。若どりを心がけましょう。株に負担をかけないようにすることが多収穫につながります。

最後に

上益城地域では、まもなく本格的な収穫期を迎えます。これまでに述べた栽培のポイントを押さえながら、若どりを心がけて草勢維持を図り、安定した夏秋ピーマン栽培を行いましょう。

 

県央広域本部 上益城地域振興局 農業普及・振興課

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