大豆の後期管理(カメムシ対策)

はじめに

大豆は開花期後にさやを着け、子実が肥大していきますが、開花する頃からカメムシ類がほ場に侵入すると、子実に被害が発生します。
カメムシ類はさやに口針を刺し、子実を吸汁するため、品質の低下や減収につながります。吸汁加害が大きいと茎葉がいつまで経っても成熟しない青立ちになってしまいます。そのため、大豆のこの時期におけるカメムシ類の防除管理が必要となります。
カメムシ類は時として大発生し、甚大な被害をもたらすことがあり、効果的な対策とするためには、適切なタイミングで薬剤散布を行う必要があります。そこで、カメムシの生態と防除のポイントについて説明します。

カメムシ類の発生生態

熊本県内では、アオクサカメムシ、ホソヘリカメムシ、イチモンジカメムシ、マルカメムシ、ミナミアオカメムシが多く見られます。

・アオクサカメムシ:体長13㎜程度で体全体が緑色、大豆以外にも各種植物の種子を吸汁(図1)。
・ホソヘリカメムシ:体長15㎜程度、褐色の細長い形態、マメ科植物の子実を吸汁(図2)。
・イチモンジカメムシ:体長10㎜程度、背に一文字の白色や淡紅色の横線、マメ科植物の子実を吸汁(図3)。
・マルカメムシ:体長5㎜程度でマメ科植物の茎葉を加害。
・ミナミアオカメムシ:体長13㎜程度で外見はアオクサカメムシと類似、アオクサカメムシより体形が縦長、触角が褐色等から判別可。広食性で水稲や大豆等を吸汁。

これらカメムシの成虫は、常緑植物の葉間や日当たりのよい草むら等で越冬し、年2~3回ほど発生するとみられます。
植物の種子を好み、大豆以外の植物も餌となるため、普段は雑草地等に生息しており、開花期頃から大豆のほ場に移動して吸汁加害します。また、植物上に産卵するため、9月下旬頃から幼虫の集団を見かけるようになります。昼間は大豆の葉や茎の陰に隠れており、上から見てもカメムシがいないように見えるため、ほ場内部の着さや部位と葉陰の確認が必要となります。防除適期の9月上中旬の幼虫は1齢幼虫で小さく見つけにくいので、注意深く観察してください。

図1 アオクサカメムシ成虫
図2 ホソヘリカメムシ成虫
図3 イチモンジカメムシ成虫

子実の被害

さやが小さい時期に吸汁されると、さやが落下したり、種皮だけが残る(板ざや)等により減収します。
また、子実が大きくなってから吸汁されると、表面に吸汁された後の黒い斑点が残り、子実の形が変形し表面の陥没が見られ、色も変色し検査等級の低下につながります。
被害が大きい場合は、大豆の茎葉がいつまでも黄化せず、水分を多く含んだ青立ち状態になります。青立ちした株があると、コンバインで収穫する際に茎葉の水分が子実に付着し汚損粒となります。対策としては、収穫作業の前にほ場を見回り、青立ち株は抜き捨てるようにしてください

図4 吸汁による被害粒

防除対策

子実を直接吸汁するため、少発生でも被害が大きくなる可能性があります。そのため、カメムシ類の発生が確認された場合は薬剤防除を行ってください。
防除は開花終期から子実肥大期にかけて7日から10日間隔で2~3回の薬剤散布を行います。薬剤散布の際には、着さや部分に薬剤がかかるように散布してください。
また、散布数日後に、まだカメムシ類が生息している場合は追加で防除を行ってください。カメムシ類は主にイネ科やマメ科などの雑草に生息し、そこからほ場に飛んできます。ほ場周辺の除草が行われていない場合、カメムシ類の被害が大きくなる傾向があります。そのため、ほ場周辺にカメムシ類が生息しにくいよう畦畔(けいはん)に生えた雑草を除草することも防除につながります。

 

図5 さやに群がる幼虫

薬剤の選択

薬剤の選定は県の病害虫防除指針や地域の耕種基準に従いますが、アオクサカメムシ、ミナミアオカメムシに対しては合成ピレスロイド系の薬剤効果が近年やや効きにくくなってきていますので、発生の中心となる虫の種に応じて薬剤を選択してください。また、追加防除を行う際には、先に使用した薬剤では防除効果が低くなる可能性がありますので、同じ薬剤ではなく別の薬剤を使用することが望ましいです。
また、防除を行う際は、ラベル等の説明をよく読んで、散布の回数や収穫前防除の可能数を確認のうえ、適正な防除を行って下さい。

おわりに

カメムシ類の種類とその被害と防除対策について記載致しました。記載したような管理を実施し収量・品質の良い大豆を目指しましょう。

 

県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課

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