①退緑黄化病
退緑黄化病はウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV)によって引き起こされるウイルス病です。CCYVはタバココナジラミQ及びBタイプによって伝搬され、汁液伝染、土壌伝染、種子伝染はしません。感染したキュウリは、葉に退緑小斑点が現れ、その後、葉全体が黄化します(写真1)。
天敵を利用した夏秋キュウリの防除技術
はじめに
夏秋キュウリは、コナジラミ類やアザミウマ類などの微小害虫が多発する時期と栽培が重なるため、これらが媒介する病原ウイルスによる病害(ウイルス病)の発生が問題となっています。
植物のウイルス病は、一度感染すると治療する方法がないため、病原ウイルスを媒介する微小害虫を防除し、ウイルスに感染させないことが、唯一の対策です。現在、微小害虫の防除は、主に農薬による防除が行われていますが、微小害虫は薬剤抵抗性が発達しやすく、化学農薬のみでの防除は困難です。そのため近年はIPM(総合防除)技術の活用がより重要になっています。
今回はIPM技術の中でも天敵を利用した防除技術の効果やポイントについて紹介します。
1 ウイルス病について

②黄化えそ病
黄化えそ病はメロン黄化えそウイルス(MYSV)によって引き起こされるウイルス病です。MYSVはミナミキイロアザミウマにより伝搬され、汁液伝染、土壌伝染、種子伝染はしません。感染するとはじめ葉脈が透けて、その後、黄化したり、えそ病斑点を生じ、品種によっては、果実にモザイク症状が発生します(写真2)。

2 天敵について
①スワルスキーカブリダニ
コナジラミ類、アザミウマ類、チャノホコリダニを捕食し、施設内での増殖を抑制します。また花粉を餌にして増殖が可能です。加えて、高温に強く、夏秋期の栽培でも、問題なく定着し利用することができます。
②タバコカスミカメ
コナジラミ類、アザミウマ類を捕食する天敵です。本県では、野外に生息しているため、天敵誘引植物(クレオメ等)を用いてハウス内に持ち込み、土着天敵として、利用することができます。雑食性のため害虫が少ない状態でも定着が可能です。ただし、密度が高くなるとキュウリの葉や果実へ食害するため注意が必要です(写真3)。

3 天敵導入技術の調査
球磨地域では夏秋キュウリ栽培において天敵(スワルスキーカブリダニ、タバコカスミカメの2種類)を導入してIPM技術の検討を行いました。
スワルスキーカブリダニは、夏秋期の高温でも問題なく定着が確認されました。タバコカスミカメは、クレオメを7月頃に定植することで、土着のタバコカスミカメが誘引され、R6年の展示ほ調査では栽培期間を通じて、キュウリ葉上で確認された個体数は0.1頭/葉程度で推移しました。
また上記2種の天敵を導入したほ場では、天敵を導入しなかったほ場に比べて、害虫の密度を抑制することができ、それに伴いウイルス病の発生低下が確認されました(図1、図2)。
このことから、球磨地域では夏秋キュウリ栽培において天敵を利用したIPM技術が有効であると考えられます。


4 天敵利用技術のポイント
①天敵のゼロ放飼
害虫の密度が高い状態で放飼すると、害虫の増殖力が天敵による捕食力を上回るため、害虫密度を減らした状態(害虫が見えない状態)で天敵を放飼することが重要です。また、スワルスキーカブリダニ、タバコカスミカメは雑食性のため、害虫が少なくても定着に問題はありません。
②天敵に影響の少ない農薬の選択
一般的に天敵に比べて害虫の増殖は早いため、ハウス内で害虫が増加傾向になった場合は、農薬による防除を実施します。ただし、天敵に対して影響の大きい農薬を使用すると、天敵の密度が大きく低下してしまうため、天敵に対して影響の少ない農薬を選択して使用します。また、農薬を散布する際は、ハウス内に定植したクレオメに薬剤が飛散しないように注意します。
③タバコカスミカメの密度調整
ハウス内のタバコカスミカメの密度が高まると、キュウリの葉や果実に刺し傷が見られることがあります(写真4)。出荷に影響がある場合は、タバコカスミカメの密度を一時的に下げる必要があります。この場合、クレオメの抜き取り等を行うことで、密度を制御します。

最後に
今回は球磨地域の夏秋キュウリにおける天敵利用技術を紹介しました。夏秋期は微小害虫が多発生する時期です。加えてハウス内の生産者には熱中症のリスクが付きまとう過酷な環境であり、とりわけ農薬の散布は重労働です。一方で夏秋期は土着天敵(タバコカスミカメ)の野外の生息数が多く、IPM技術として、利用し易い時期でもあります。本技術の導入により、夏季の軽労化が図れるとともに、害虫の農薬に対する抵抗性発達を遅らせる効果も合わせて期待できます。
しかし、県内の一部地域では、微小害虫の病原ウイルス保毒率が高いため、当該技術の導入には、事前の検討が必要です。
県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課
天敵を利用した夏秋キュウリの防除技術 (PDFファイル)