天敵を上手に利用するためには、バンカー植物である「クレオメ」を利用することがポイントの1つです。バンカー植物とは天敵が好む植物で、ハウス内の谷下や妻面に植え付けることで、天敵の定着・増殖促進や産卵場所の提供、農薬散布時の避難場所などの多様な役割を果たしてくれます。ハウス内のバンカー植物はトマトの定植前には植え付けておき、草丈が30~40cmになったら天敵を放飼します。
ハウス内のバンカー植物は、かん水や施肥、下葉の除去などの管理を行う必要があります。特に下葉は害虫の増殖場所になりやすいため、こまめに管理することが重要です。
天敵を活用した冬春トマトの防除技術
1 はじめに
促成トマト栽培では大幅な減収をもたらす「トマト黄化葉巻病」をはじめとしたウイルス病が問題となっています。これらのウイルス病は微小害虫である「タバココナジラミ(以下、害虫という)」が媒介するため、害虫防除が重要な対策となっています。
そこでウイルス病対策として天敵を利用した防除技術についてご紹介します。
2 ウイルス病について
トマト黄化葉巻ウイルス(以下、TYLCVという)に感染したトマトは葉が萎縮し、茎が伸長しなくなり栽培を継続することが困難となります。TYLCVを含むウイルスが一度感染すると治療する方法はないため、媒介する害虫を防除し、ウイルスに感染させないことが唯一の防除対策となります。
対策の1つとして農薬散布による害虫防除が行われていますが、農薬(特に化学合成農薬)に頼った対策が続いているため、害虫が薬剤抵抗性を獲得し、農薬の防除効果の低下などの問題が生じています。そのため、害虫防除では、複数の手段を組み合わせた総合的な対策を講じることが重要であり、天敵の利用も害虫防除対策の1つの手段として挙げられます。


3 天敵について
トマト栽培で利用されている天敵の1つが「タバコカスミカメ(以下、天敵という)」という昆虫です。この天敵が害虫の卵や幼虫(成虫は除く)を捕食するため、ハウス内に放飼することで害虫の増殖を抑制する技術です。この天敵は農薬として販売されているものを購入して利用することもできますが、県内は生息地であるため、野外からハウス内に持ち込む土着天敵として利用することもできます。

4 バンカー植物について

5 天敵導入による害虫防除効果
玉名地域では、実際に天敵を利用しているほ場において天敵や害虫の発生状況を調査しました。ここでは天敵活用の優良事例を紹介します。定植時からバンカー植物上で増殖してきた天敵をトマト上に移動させるため、トマトへの天敵の分散を1月中旬から複数回行われました。その結果、4月以降に天敵が増加傾向で推移することを確認することができました。また、害虫の発生についても栽培期間を通して低い密度で推移していました(図1参照)。
これらの結果から、天敵を上手に活用することで害虫をしっかりと防除できることが確認され、効果的な対策であることが示されました。

※左軸は天敵数、右軸は害虫数

6 天敵利用上のポイント
促成トマト栽培は栽培期間が長期間にわたるため、3つの期間に区切って使用する農薬を変えながら天敵を利用することを推奨しています(図2参照)。
【期間①:定植後~10月ごろ】
この時期は、野外の害虫が多く、成虫がハウス内へ飛び込むリスクが高い時期です。天敵は害虫の成虫は捕食せず、かつ、ウイルス病に罹病した株からの二次感染のリスクが高いことから、栽培期間が長期にわたる作型において、この時期から天敵を中心とした防除は推奨していません。
この時期は、まず、防虫ネット(0.4㎜以下)を展張し野外からの飛び込みを防止します。加えて、黄色粘着板等の資材も活用しながら、天敵への影響が大きな農薬の使用も含めて徹底した防除を行います。しかし、使用する農薬については、天敵への影響日数を考慮する必要があります。
【期間②:11~2月ごろ】
野外の害虫も少なくなるため、天敵への影響が小さい農薬を使用しながら、バンカー植物上で天敵の維持・増殖を図ります。また、1月中旬からバンカー植物上の天敵をトマトへ分散させる作業を行います。
【期間③:3月以降】
トマトへの天敵分散を複数回行い、定着・増殖を促すことで春先以降の天敵を中心とした虫防除に備えます。農薬は、基本的には天敵への影響が少ない剤を使用しますが、害虫の発生状況や残りの栽培期間を考慮した上で選択します。

7 さいごに
トマト黄化葉巻病対策は農薬のみ、天敵のみといった特定の手段に頼るのではなく、複数の手段を組み合わせた総合防除が重要となります。害虫をハウス内に「入れない」、ハウス内で「増やさない」、ハウス外に「出さない」、伝染環を「つなげない」といった基本的な対策を講じたうえで、上手に天敵や農薬を利用していきましょう。
県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課
天敵を活用した冬春トマトの防除技術.(PDFファイル)