子牛の寒冷対策のポイント

はじめに

天草地域は地域全体が中山間地域となっており、一部では冬季に降雪が見られるところがあります。
管内では肉用牛繁殖経営が多く行われていますが、子牛は皮下脂肪が薄く、第一胃が未発達であり、体の容積に比較して体表面積が大きいことから寒さへの順応が苦手です。このため、子牛の寒冷対策は特に重要です。
対策のポイントとしては、①換気と寒風・②敷料のこまめな交換・③暖房具の活用・④代用乳給与時の温度管理が挙げられます。
今回は、それぞれの項目におけるポイントを簡潔に説明していきます。

①換気と寒風
冬季は牛舎内の保温を気にするがあまり、換気が十分に行われていない場面が多々見受けられます。換気が不十分だと、ふん尿から発生する有害なアンモニアガス等が溜まり、これらが喉や気管の粘膜を刺激・損傷します。その後、免疫力が低下したところにウイルスが感染し、呼吸器系疾患を発症してしまいます。そのため、外気が低温であってもこまめな換気を行いましょう。
一方、換気の際に直接牛体に寒風が当たると、体温の低下を招き風邪や下痢の原因となってしまいます。子牛が直接寒風にさらされることがないよう、図1のように牛舎全体をシートやカーテン、コンパネで囲うほか、カーフハッチで飼養する場合は北風を避け、入り口を南側にすることも有効です。

 

図1.牛舎側面をコンパネで覆っている様子。
上部は換気の為空けておくことが望ましい。

②敷料のこまめな交換
敷料が濡れていると子牛の体温を急激に奪ってしまいます。そのため、敷料の交換頻度を高めて常に乾燥した敷料になるようにしましょう。
また、厚く敷いた敷料は空気を含み、高い保温効果が期待できます。敷料をたっぷりと投入し、ふかふかな床になるよう心掛けましょう。さらに、100円ショップ等で購入できる風呂用マットなども低コストな牛床の断熱材として応用できます。利用方法としては、スノコの上に風呂用マットを敷き、その上に敷料(稲わら等)を敷くことで尿などが溜まることなく、床が清潔に保たれ、牛体が濡れることも防ぐことができます。

図2.敷料を厚く敷いている様子

③暖房具の活用
換気を損なうことなく寒さ対策を行う手段の一つとして、カーフジャケットを子牛に着用することで表皮体温を維持する事ができます。カーフジャケットは市販されているものや、毛布や大判のタオル等から手作りすることも可能です。また、首には太い血管が通っているためネックウォーマーと併用することでより高い保温効果が期待できます。
その他に現場でよく見る事例として、湯たんぽや赤外線ヒーターの設置が挙げられます。
湯たんぽは、不要なポリ容器に60℃~80℃のお湯を入れてカーフハッチの中に置くと、カーフハッチ内の温度を上げるだけでなく、子牛が直接触れることで体温を上げる効果もあります。その際にやけどが心配な場合は湯たんぽの周りを敷料や布で覆うと安心です。
ヒーターについては、設置位置に注意し、子牛がやけどしないように注意しましょう。また、電気コードを子牛の届く範囲にぶら下げておくと、子牛がかじり断線してしまう危険性があります。牛がいたずらをしないようにしっかりと柱等に固定し、電気コードをホースでカバーする等の対策を行うことが重要です。

図3.手作りのカーフジャケットと
ネックウォーマーを着用している様子

④代用乳給与時の温度管理
子牛に代用乳を与える時の最適な温度は、季節を問わず母牛の体温(39℃~40℃)くらいが理想です。通常代用乳を溶かす温度は45℃~50℃くらいが推奨されますが、厳寒期には冷めてしまわないように、やや高めのお湯で溶かすように心掛けましょう。ただし、お湯の温度が60℃を超えると代用乳のタンパク質が変性して消化不良となりますので、代用乳を溶かす際にはお湯の温度に十分注意しましょう。このほか、冬季に冷水の代わりにお湯を飲ませる農家も見られます。

図4.ミルクを給与する様子

おわりに

これまで、畜舎で出来る寒冷対策について、いくつか紹介をしました。これらのことは基本的な事ですが再度点検を行ってください。
また、以前は夜間の牛舎の巡回は大変でしたが、最近は多くの方が牛舎にカメラを設置されるようになりました。
最近はカメラの解像度も上がっており、詳細な状況が分かるようになっています。このため、子牛や施設の設備機器の異変にも以前よりも早く気づくことができ、素早い対応ができるようになってきました。
ただし、レンズ越しでは実際に異変を感じ取ることは難しいこともあります。決して油断せず、これからますます厳しくなる寒さに備えて、健康で丈夫な子牛づくりを行いましょう。

天草広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

 

添付PDF:子牛の寒冷対策のポイント