トマト黄化葉巻病はトマト黄化葉巻ウイルス(以下、TYLCV)の感染により引き起こされるウイルス性の伝染病です(図2)。発病すると生育が止まってしまうため、栽培初期に感染・発病すると収穫が皆無となる恐れがあり、経営に与える影響が大きくなります。このことから、トマト生産において注意すべき病害の一つです。
本病はタバココナジラミ(以下、コナジラミ)がTYLCVに感染したトマト等を吸汁することでウイルスを保毒し、この保毒したコナジラミが別の健全なトマト株を吸汁することで広がります(図3)。
日本一のトマト産地を守るために!! トマト黄化葉巻病対策とその方法
はじめに
トマト黄化葉巻病は、熊本県内で平成11年に初確認され、本県トマト生産に甚大な被害を与えました。
これまで、本病に対する基本的な対策として、媒介する害虫(タバココナジラミ)をハウス内に「入れない」、ハウス内で「増やさない」、ハウス外に「出さない」対策を柱に、トマト類の栽培休止期間を設けることで、伝染の環を「つなげない」対策を行ってきました。
現在、本病の発生は低水準で推移していますが、ウイルス病はいつ多発生、蔓延(まんえん)するかわかりません(図1)。そこで今回は、上記の基本的な対策とその方法についてご紹介します。
トマト黄化葉巻病とは
トマト黄化葉巻病(コナジラミ)の対策
1.定植前からコナジラミを「入れない」
まず、ハウス等の栽培施設内にコナジラミを入れない対策を実施します。ハウスの出入口やサイド、谷といった換気部に目合い0.4mm以下の防虫ネットを展張し、コナジラミのハウス内への侵入を防ぎます。目合いが大きくなるとコナジラミの侵入量が多くなります。また、定植前にはネットの破れや隙間がないか確認しましょう。
2.定植後はコナジラミをハウス内で「増やさない」
栽培期間中はコナジラミを栽培施設内で増やさない、感染を広げない対策を実施します。
定植前や定植時に農薬の灌注(かんちゅう)処理や粒剤施用を行い、定植直後のコナジラミ寄生・ウイルス感染を防ぎます。また、定期的な防除を行い、ハウス内でコナジラミが増えないように管理します。
万一、トマト黄化葉巻病の症状が見られた株(感染株)は、直ちに抜き取り処分します。抜きとった株はコナジラミの飛散やウイルスの感染源となるのを防ぐため、ビニール袋等で密閉し、適切に処理します(図4)。
3.栽培終了後はコナジラミを野外に「出さない」
栽培終了後はコナジラミを栽培施設外に出さない対策を実施します。コナジラミは、ハウス内で越冬し、春の気温上昇とともに増加します。栽培が終了し、ハウスを片付ける際に保毒虫がハウスから出て行くと、次作トマトの感染リスクを高めることから、栽培終了時にはハウスの閉め込みを実施します(図5)。
栽培終了時にトマトの株元を切断したうえで、ハウスを密閉して閉め込み、ハウス内の温度を高めます。ハウス内の高温と、トマトが枯れてエサ(水分)が無くなることで、コナジラミを死滅させます。トマトが枯れていなかったり、雑草が生えていたりすると閉め込んでもコナジラミが生き残るため、株元の切断や除草を徹底します。
通常、5~9月の晴天日では、3日間以上閉め込めばコナジラミ類は死滅しますが、アザミウマ類や他の病害虫の蔓延防止のため、密閉処理は10日以上継続します。
TYLCVの伝染環を次作に「つなげない」
YLCVに感染したトマト類は次作の感染源にもなることから、栽培休止期間を設けることは地域の感染リスクを下げるうえで非常に効果的な対策です(図6)。伝染環を断つためにも、一定期間トマト類の作付けを行わない等、地域ぐるみで次作に伝染環をつながないようにします。
最後に
トマトの黄化葉巻病の収量や品質などへの影響は、抵抗性品種の開発・導入により、少なくなりつつありますが、トマト黄化病(病原体:ToCV)のように他のウイルス病の発生も散見されます。
今回ご紹介した「入れない、増やさない、出さない、つなげない」対策は、虫媒伝染性のウイルス病の予防、蔓延防止の基本となります。トマトの産地を守っていくために、引き続きウイルス病対策の徹底をお願いします。
県央広域本部 農林部 農業普及・振興課
日本一のトマト産地を守るために!!トマト黄化葉巻病対策とその方法(PDFファイル)
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