球磨地域では、春メロン作後の6~7月に定植、10~11月まで収穫する夏秋キュウリ栽培が盛んです。
この作型は、初期投資が少なく、安定した収益が見込まれることから、新規就農者の経営品目や新規導入品目として推奨しています。一方で、梅雨時期の豪雨や台風の襲来等、気象災害のリスクも大きい作型です。また、栽培期間を通してタバココナジラミやミナミキイロアザミウマ等の微小害虫が多発し、退緑黄化病や黄化えそ病(写真1)といったウイルス病の蔓延が問題となっています。
今回は、夏秋キュウリの安定生産・所得向上を図るためのポイントとして、総合的病害虫管理(IPM)によるウイルス病対策及び気象災害対策についてご紹介します。
球磨地域における夏秋キュウリの安定生産対策について~ウイルス病と気象災害対策~
はじめに
IPMによるウイルス病対策
①スワルスキーカブリダニの導入
近年、コナジラミ類、アザミウマ類(以下微小害虫と表記)の防除手段として、天敵殺虫剤「スワルスキー」の利用が進んでいます。そこで、導入効果を検証するため、サイド部に4㎜目合いの防虫ネットを展張したキュウリハウスで試験を行いました。
その結果、スワルスキーは栽培期間を通して、定着の目安となる1頭/葉以上が確認されました。また、スワルスキーに影響の少ない農薬を組み合わせることで、無放飼ほ場に比べ、微小害虫の発生は抑えられました(図1、図2)。
さらに、放飼ほ場では1か月ほど収穫期間が延長しました。
導入に当たっては、スワルスキーがスムーズに定着できるよう、微小害虫の密度をゼロにした状態での放飼「ゼロ放飼」の徹底が重要です。また、栽培期間を通して害虫が多発する時期ですので、放飼後も天敵に影響の少ない農薬による防除を併せて行います。
②4㎜目合い防虫ネットの導入
球磨地域における夏秋キュウリ栽培は、夏の暑さが厳しいため、微小害虫の侵入抑制に効果のある0.4㎜目合い防虫ネットの展張は、ハウス内が高温となり、キュウリの生育や作業性に悪影響を及ぼします。そこで、通気性に優れ、ハスモンヨトウやオオタバコガ等の大型チョウ目害虫に効果のある、4㎜目合いの防虫ネット導入を推進しています(表1、写真2)。天敵を導入する場合は、使用農薬が制限されるため、防虫ネットを設置して害虫の侵入を防ぎます。
気象災害対策
①豪雨対策
夏秋キュウリ栽培は、栽培期間が梅雨時期や秋雨時期と重なるため、冠水による被害のリスクが大きい作型です。キュウリの根は、他の品目に比べ酸素要求量が高く、7~8時間の冠水で被害が著しいと言われています。そのため、豪雨時の冠水に備え、ほ場の排水対策が必要です。
具体的には、明きょ・暗きょの整備による排水路の確保や、高畝成型などにより、冠水による被害を防ぎます。万が一ほ場が冠水した場合、ほ場内の水をできるだけ早急に、ほ場外に出すことが重要です。ハウス周囲に排水溝を設置し、場合によっては、集水場所を作り、ポンプアップによる強制排水を行います。
冠水後には、べと病や灰色かび病、細菌性病害等の発生や、樹勢の低下が懸念されます。わずかな天候回復を逃さず、殺菌剤を中心に散布を行い、病害の発生を防ぎます。また、果実の摘果や老化葉の摘葉、葉面散布を実施するなどし、早期の樹勢回復に努めましょう。
②台風対策
被害が予想される場合は、支柱からワイヤーを外し、つるを下ろします。また、ハウスはビニールを剥がして台風に備えます(写真3)。
台風通過後は、下ろしたキュウリの「つり上げ」と「ビニール被覆」を速やかに行います。
事後対策は前項豪雨対策と同様ですが、キュウリは強風と雨により著しく損傷しているため、より徹底した病害対策が必要です。
近年球磨地域では、風速25m/s以上35m/s未満に耐える強度の耐風性ハウス(単棟強化ハウス)の導入が進んでいます。夏秋キュウリの生産安定のためには、耐風性ハウスの導入も非常に有効です。
おわりに
夏秋キュウリの安定生産・所得向上のためには、ウイルス病と気象災害への徹底した対策が不可欠です。気象災害の規模によっては対応が難しい場面もありますが、災害に負けない、強い夏秋キュウリ産地を目指し、地域一丸となって取り組んでいきましょう。
県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課
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球磨地域における夏秋キュウリの安定生産対策について
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