落葉果樹の晩霜害対策と病害虫防除について

はじめに

近年、地球温暖化による暖冬の影響でナシ、モモ、スモモ等の開花、カキ、クリの発芽が早まる傾向があり、晩霜害(写真1)の発生リスクが高まっています。同様に、病害虫の発生量や発生時期にも変化が見られ、気象変動に対応した病害虫管理が求められています。
そこで、落葉果樹の晩霜対策と病害虫防除についてご説明します。

写真1 モモの開花期の晩霜害
(R6.2月錦町)

晩霜対策について

(1)晩霜害発生の要因
【果樹の発育ステージの条件】
ナシ、モモ、スモモは開花期、カキ、クリ、ブドウは発芽間もない時期が最も低温に弱い特徴があります。また、凍霜害を受ける安全限界温度は樹種や発育ステージによって異なり、特に発育ステージが進むほど危険性は高くなります(図1)。

図1 発育ステージ別の安全限界温度

【気象環境】
午後6時の気温が10℃以下で、1時間に1度以上の気温の低下が見られる晴天無風の日は、翌朝降霜の恐れが高いため、常に気象情報を確認し、低温注意報、霜注意報等の発令に十分注意してください。

 

(2)対策
晩霜害の対策を以下のとおり、作型別に記載しました。園の状況に応じて、可能な対策をとってください。

①直接防止対策

【露地栽培の場合】
◯スプリンクラーで樹上から散水。0℃を下回らない時間から散水を開始し、結氷が溶け終わるまで散水を続ける(散水氷結法、写真2)。
◯市販の燃焼資材等を10aあたり30個以上配置し、0℃を目安に点火する。ただし、煙が発生するため、周辺環境には十分配慮する。

 

【ハウス、トンネル栽培の場合】

◯加温設備・資材による加温を行う。早めに試運転を行い、晩霜に備える。
◯防霜ファンの施設があるほ場では、防霜ファンを4℃にセットする。昇温効果は1~2℃であるため、外気温が-3℃以下に下がる場合は、燃焼法を併用する。また、翌朝は気温が十分に上がる8~9時まで作動させておく。
◯加温機がない場合は冷気が停滞しないように両サイドをあけておく。または、気温が高い時間に地表面散水を行い、湿度を高く保ち、温度低下を防ぐ。

写真2 スプリンクラー散水
(開花期)

②間接防止対策
【事前対策(全作型共通)】
◯冷気が停滞しやすい園地では、防風ネットの裾を上げたり、防風樹の下枝を刈り込んでおく(ただし、傾斜地の最上段の下枝は冷気の下降防止のため、刈り込みはしない)。
◯除草を徹底し、敷きわらは5月上旬以降に行う。
◯新植の際は凍霜害の発生しやすい場所を避ける(盆地などの寒がたまりやすいところ)。
◯晩霜害が予想される年(1、2月の気温が高い年)は摘雷を控えめに行い、花数を確保する。

【事後対策(全作型共通)】
◯被害にあった場合は、残った花への人工受粉を徹底する。
◯被害が大きく、結果数が少なくなってしまうと、枝葉が繁茂しやすいため、追肥や葉面散布は見合わせ、捻枝や摘芯を徹底する(モモでは夏季せん定を徹底)。

病害虫防除について

(1)虫害
【カイガラムシ類】
12月下旬~1月上旬にマシン油乳剤散布ができなかった場合は、ナシでは2月中旬~3月上旬(厳冬期を過ぎた発芽前の時期)にアプロード水和剤倍+アビオンE散布による防除が効果的です。薬剤の感受性低下を防ぐため、アプロード水和剤の使用は年1回に留めるなど、注意して使用してください。

【ニセナシサビダニ(ナシ)】
越冬期にマシン油乳剤や石灰硫黄合剤を散布できなかった園では、2月下旬の水和硫黄剤(クムラス)300倍の散布により、幼果の果梗裂傷、果そう葉の退緑斑点症状の発生を軽減できます。なお、クムラス水和硫黄剤とアプロード水剤・アビオンEは混用できるため、カイガラムシとニセナシサビダニとの同時防除ができます。

(2)病害

【黒星病(ナシ)】
黒星病は罹病(りびょう)した葉や枝等により越冬します。菌密度を低下させるため、落葉は園外への持ち出しや埋却に努めましょう。黒星病の菌は芽基部のりん片(写真3)部分に昨年秋に感染し潜んでおり、萌芽(ほうが)と共に1次感染が始まります。萌芽期の3月上中旬から4月上旬の開花期前後の約1ヶ月間の発病が多いとその後の発病を抑えることが難しくなるため、開花期の前後幼果期の防除が重要です。DMI剤等主要剤の連用は菌の感受性低下を助長しますので、DMI剤2回、QOI剤2回、SDHI剤2回、DHODHI剤1回までの使用を基本とし、同一系統剤の連用を避けましょう。
また、感受性低下を防ぐためには他の保護殺菌剤との混用も効果的です。

写真3 黒星病に感染した芽基部

【せん孔細菌病(モモ)】
本病原菌は葉や枝の傷口から感染するため、風当たりが強い園では防風対策を行いましょう。また、開花期頃の春型枝病斑のせん除は効果が高いため、摘雷や摘果作業と併せて実施してください。
薬剤防除は発芽前の無機銅剤散布と、開花後の殺菌剤散布、収穫後の無機銅剤散布(最低2回)が重要ですので、必ず散布をお願いします。

 

【炭そ病(カキ)】
本病は生育期間中の降雨等で伝染します。湿度が高いと発生が増加するため、風通しの良い環境となるよう冬季のせん定が重要です。併せて、せん定時には発病枝の除去と園外持ち出しに努めてください。
薬剤防除は新梢や幼果への感染が増える梅雨期秋雨期を中心に行いますが、昨年多発した園では開花前~落弁後の防除も徹底してください。

県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課

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病害虫