露地野菜の排水対策(キャベツ、ブロッコリー)

1.はじめに

八代地域は、水田を活用して秋から春にかけてキャベツ、ブロッコリー等を多く作付けしている県を代表する露地野菜産地です。
しかし近年、大雨による冠水等の影響により収量や品質の減少が確認されています。露地野菜は、気象条件で作況が大きく左右される品目であるため、日頃からの備えが不可欠となります。
そこで、今回は大雨による生育不良や病害の発生を軽減し、露地野菜の安定生産に有効な高畝成型方法および土づくりを紹介します。

2.高畝成型のメリット

(1)排水性の向上
停滞水による根腐れのリスクを軽減できるため、特に水はけの悪いほ場や雨の多い地域での栽培に適しています。

(2)病害の予防
排水性が良くなるため、アブラナ科特有の根こぶ病等の病害抑制にもつながります。

(3)根張りが良くなる
高畝にするための耕起により空気を含んだ状態(通気性)が保たれ、根がしっかり伸びやすくなります(写真1、写真2)

写真1 畝高28cmの根
写真2 畝高22cmの根

3.高畝成型の手順

(1)作土深の確認
成型機の調整(畝の高さ、幅の設計)を作土深に合わせて行うため、事前にほ場の穴掘りを行い、耕盤までの深さ(作土深)を確認します。ほ場の状態を知る上で重要な工程です(写真3、写真4、写真5)。

写真3 穴掘り 
写真4 耕盤までの深さを測定
写真5 畝立て前の作土深の状況

(2)耕起
【1回目】浅く耕起
稲を刈り取ったあとの切り株や前作の残渣等を砕くことを意識し、ロータリーの回転数を速くして浅く耕起します(写真6)。
【2回目】深く耕起
作土層の厚さを意識し、ロータリーの回転数を遅くして深く耕起します。深耕することで、畝に用いる土の量が増えます(写真7)。

写真6 浅く耕起している様子
写真7 深く耕起している様子

◆ポイント◆

~土塊の大きさを意識しましょう~
小さい土塊が多い畝は、雨が降っても沈みにくくなります。耕起作業を行い、土塊を小さくしましょう(図1)。

図1 土塊による降雨の影響

~通気性と排水性・保水性のよい土にしましょう~
作物の栽培には、降雨による水が適度に保持されるとともに、適度に排水される土壌が必要です。また、根に十分な酸素を供給させることも欠かせません。そのため、「団粒構造」による適度なすき間が必要となります。団粒構造を発達させるには、有機物の施用が有効です。
根を健全に伸長させるため、空気と水分・養分を供給できるように土づくりを行い、土壌環境を整備しましょう(図2、図3、図4)。

図2 単粒構造
図3 団粒構造 
図4 三相分布

(3)成型機の調整・畝立て
成型機の調整(畝の高さ目標30㎝)を行います。作土が浅い場合は、成型機の幅を狭めることで、畝成型に用いる土の量が多くなり、作土層を確保できます(写真8、写真9、写真10)。

写真8 畝上面の成型調整 
写真9 畝幅の成型調整  
写真10 畝立て作業

4.注意点

(1)乾燥しやすくなる
高畝にすることで、水はけは向上するものの、土壌が過乾燥になる場合があります。特に夏場の高温期は水が枯渇しないよう注意しましょう。

(2)明きょ整備(周囲溝、中溝)
高畝にしても、畝間の排水が悪いとたん水しやすく病害の原因になります。降雨時や浸水後に速やかに排水が可能となるよう溝切り(周囲溝、中溝)を行います。併せて、排水口が潰れないよう定期的な点検を心がけましょう(写真11、図5)。

写真11 中溝の様子
図5 明きょ整備のイメージ

5.おわりに

水田を活用した露地野菜栽培にとって、排水対策は安定生産の必須条件となります。畝立てする時は、降雨後に畝が沈むことも考慮した上で高畝に成型し、適切な土壌水分のタイミングで畝立て作業を行うなど、各作業工程のポイントを意識しながらほ場整備に努めましょう。

県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

露地野菜の排水対策(キャベツ、ブロッコリー).

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