高品質ないぐさ生産に向けた今後の栽培管理のポイント
はじめに
令和3年産のいぐさは、2月の好天にも恵まれたため地干しがしっかりできており、全体的に根の状態も良好です。また、暖かい日が多かったため、茎数は平年より多く推移しています。
いぐさの生育ステージは今後、第1図に示すように「長い」発生期~伸長期~充実期へと進み、ほ場での管理作業も慌ただしくなります。
品種や生育状態に応じた適正な栽培管理や収穫作業を行い、高品質ないぐさの収穫につなげましょう。
(1)先刈
先刈には、いぐさの先端を刈り込むことで地表への透光性を改善し新芽の出芽を促す効果と、いぐさにストレスを与えることで新芽への栄養の転流を促進する効果があります。
標準としては、収穫65~60日前に地上45㎝の高さで刈りそろえます。先刈時の生育状態としては、1株あたり茎数が「ひのみどり」で130本、その他品種では100本程度の状態が目安です。また、着花が多い「夕凪」では、収穫60日前に高さ35㎝の先刈を行うことで、着花茎混入率を低減させることができます。
(2)病害虫防除
イグサシンムシガの幼虫は、1頭あたり3~4本の若い茎を食害するため、「長い」発生期に幼虫数が多いと減収が著しくなります。「長い」発生期にあたる6月の第2回成虫(第1世代)の発生を抑制するためには、4月に発生する第1世代幼虫を対象とした防除が重要です。
本年の特徴としては、気温が高めで推移しているため、イグサシンムシガの活動が昨年よりも早まっていますので、注意が必要です。
3月25日に八代管内で行った越冬虫調査の結果では、本年の越冬世代の発蛾最盛予想日は4月3日と、昨年(予察灯による誘殺最盛日:4月8日)よりも早くなりました。
今後も気温が高い傾向が続けば、第1世代の発生も昨年(6月2日)より早くなると思われますので、今後の気温の推移に注意してください。また、病害虫防除所等のホームページなどで情報収集するとともに、ほ場をよく観察し、防除適期を逃さないようにしましょう。
なお、イグサシンムシガに対しては、有効成分ジノテフランを含む粒剤と顆粒水溶剤が昨年新たに適用拡大されています(第1表)。
いぐさに適用のある農薬は少ないため、これらの殺虫剤に対する抵抗性をつけさせないよう注意する必要があります。作用機構分類(RACコード)の異なる種類の薬剤をローテーションさせながら、体系的な防除を行いましょう。
(3)雑草防除
本田での一年生イネ科雑草対策として、有効成分キザロホップエチルを含むフロアブル剤(ポルトフロアブル)が適用拡大されています。3~8葉期までのイネ科雑草(スズメノカタビラを除く)に対して効果があるので、イネ科雑草や漏生イネが多発するほ場では散布を検討しましょう。一方で、イネ科作物に対しても殺草効果があるので、周囲にイネ科作物がある場合は薬剤が飛散しないように注意して散布しましょう。
また、畑苗床での雑草対策としては、有効成分ペンディメタリンを含む粉粒剤(ゴーゴーサン細粒剤F)が昨年新たに適用拡大となっています。雑草発生前の土壌処理でイネ科・広葉一年生雑草を同時に防除しますが、キク科雑草とツユクサには効果が劣るため注意が必要です。農薬の使用については、ラベルをよく確認し、適正に使用しましょう。
(4)水管理
気温が上昇し、いぐさの分けつ・伸長が旺盛になる4月以降は、生育量増加に伴い水需要が増大します。
4月以降は3日湛水4日落水のこまめな間断灌水を基本とし、地下茎と根に十分な酸素を送り込みましょう。
5月以降は最も水を必要とする時期です。収穫前に早すぎる落水を行うと茎は萎れ、ムラ染めや変色茎の発生要因となります。特に「ひのみどり」では、極端にほ場が乾燥するといぐさが萎れて品質低下の原因になるため注意が必要です。
収穫10日前の暗渠落水は、晴天が続くと土壌の乾燥が激しくなるため、暗渠落水は収穫の5日前程度を目安に行いましょう。
(5)収穫
早刈品種である「夕凪」「涼風」は6月20日~7月5日、普通刈品種である「ひのみどり」は7月5日~15日が収穫適期です。
特に「ひのみどり」は高級品向け品種ですが、早刈した場合は普通刈と比べて品質が低下します。
具体的には、茎が太くなり、部分変色茎が増加するほか、硬度、引っ張り強度、摩耗強度が低下します。「ひのみどり」本来の高品質な特性を失うので、収穫適期を遵守しましょう。
一方で「涼風」については、刈り遅れと品質低下の関係が示唆されています。当課が設置した令和2年産展示ほの結果では、6月15日頃まで「涼風」の収穫を早めた場合でも収量・品質ともに従来の早刈と同程度で、また60日前の先刈で古茎の選別が可能であることが確認されました。
刈り遅れによる品質低下を防止するためにも、施肥設計を調整して収穫の早期化を検討するなど、計画的な収穫作業を行いましょう。
(6)泥染め・乾燥
泥染めを行う際は、その後の水切り方式により、染土の濃度を調整します。一束ずつ染める従来型の「横水切り方式」の場合、染土の付着が良いため、ボーメ濃度21度が適当です。一方で、泥染め乾燥一貫型のような「縦水切り方式」の場合、高濃度(ボーメ濃度25度以上)での調整が必要です。
また、「涼風」は茎色が明るいため、泥染めの染土の使用量を減らすることが可能です。「ひのみどり専用染土」と「三原染土」を用いて重量比1対1で調整する場合には、縦水切り方式の基準濃度よりも染土使用量を20%減らした場合(ボーメ濃度21度)でも、畳表の評価は同等でした。ただし、これより減量すると、色調や染ムラの評価が劣るため、注意が必要です。
最後に
畳表産地としての信頼に応えるため、品種に応じた適期収穫などの基本技術の徹底を心がけ、良質ないぐさ生産を目指しましょう。
県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課
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