7月出荷ホオズキの系統選抜・実生栽培による生産安定対策について

はじめに

本県では、鑑賞用ホオズキは約400aで栽培されており、7月お盆向けは、鹿本地域・球磨地域、8月旧盆向けは、上益城地域の山都町や阿蘇地域など準高冷地を中心に行われています。
ホオズキは、お盆用の飾り物として一定の需要が見込まれ比較的単価が安定しており、中山間地域など狭小なほ場でも栽培可能なことから新規栽培者が多く、年々栽培面積が増加しています。
玉名地域では、平成31年から集落営農組織の所得増大を図るため新規作物としてホオズキ栽培を開始し、新たな産地づくりに取り組んでいます。
そこで、玉名地域で取り組んでいる実生栽培による、7月お盆向けホオズキの生産安定に向けた栽培技術のポイントをご紹介します。

実生栽培のメリット

実生栽培は、優良系統を選抜・採種を行い、均質な優良苗を育成することで、品質の均一化が図られます。さらに、苗による土壌病害(白絹病、半身萎凋病)やネコブセンチュウ、ウイルス(TMGMV)などの新植ほ場への持ち込みや株の劣化を防ぐことができます。

系統選抜

玉名地域では、地域の環境に適した、高品質なホオズキの栽培を目指すため、自家採種による優良系統の選抜を行っています。
収穫前の6月下旬頃に優良な株(①病害虫に強い、②形質が良い…草丈、草姿、着花・果、ホウの大きさ・形・着色具合等)を選抜し、種子の充実を図るため誤って収穫しないよう、ヒモ等で目印を付けておきます。
1株当たり10果、1果実当たり親株用の種子が100~200粒確保でき、親株から10本程度採苗できます。次期作の作付面積に合わせた株数を残します。
(参考:本ぽ面積10a8千~1万株)で、採種用に3株程度必要。)

親株苗播種準備

①採種
8月上旬頃、選抜した株を収穫します。
熟した果実(写真1)を選び、水洗いでザル等を使用し、種子から果肉をきれいに取り除きます(写真2)。取り出した種子は、日陰で風通しの良い場所で新聞紙等に広げて乾燥させます。

②種子消毒
種子から次作地へのウイルスや病原菌の持ち込みを防ぐため、水洗・乾燥した種子を紙封筒に入れ、乾熱機で70℃・72時間の熱処理を行います。

催芽処理
ホオズキの種子は、発芽率が低いため、発芽促進のため100ppmのジベレリン溶液に24時間浸漬します。処理後、日陰で風通しの良い場所で新聞紙等に広げて乾燥させた後、すぐには種します。

写真1 完熟果(左)と未熟果(右)
写真2 ザル等を使い果肉を取り除く

親株苗播種~発芽

8月下旬頃、200穴程度のセルトレイに1穴に2~3粒播種し、種子がわずかに見えなくなる程度に軽く覆土します。覆土が厚いと発芽が遅れるため注意します。十分にかん水した後、寒冷紗(かんれいしゃ)(遮光率70%程度)を被覆した雨よけハウス内に置き、乾燥防止のためセルトレイに新聞紙を被せ、1日1回程度新聞紙の上からかん水します。
は種後、7~10日程度で発芽するので、徒長する前に新聞紙を除去する(写真3)とともに、朝日が当たるように東側の寒冷紗を少しずつ解放し、日光に慣れさせていきます。

写真3 新聞紙を除去するタイミング

親株床移植準備

親株床は、本ぽと同様に排水性、保水性、日当たりが良く、水が十分に確保できる場所を選びます。また、冬季に温度が確保でき、霜の影響を受けにくい雨よけハウスが適切です。
基肥は、1a当たりN0.5kgP:1kgK0.4kg程度です。
栽植様式は、株間・条間710cm程度の6条植えにします。根が張りやすいように過度な鎮圧はしないようにします。

親株床移植

親株苗が本葉23枚展開したら(播種後約3035日前後)親株床に移植します。移植後、1週間程度は活着促進のため50%程度の遮光を行います。夜温が15℃を下回る時期になったら、ハウス側面にもビニルを張り、保温し生育を進めます。12月下旬頃から、ハウスを開放し、低温に当て地上部を枯らす(写真4)ことで地下部に栄養が転流し苗が充実します。

写真4 地上部が枯れている状態

本ぽ苗準備

苗は、1月下旬~2月上旬頃に親株の根(地下茎)を堀上げ、病虫害がなく、白くて太い栄養状態の良いものを選び、先端部(成長点)から2芽分の長さ(4cm程度)に調整(写真5)します。苗数が不足する場合は、先端部以外も使用します。
苗調整後は、すぐに定植します。すぐに定植できない場合は、調整した苗を冷蔵庫でビニルを軽く被せて乾燥しないように保管します。

写真5 調整した苗

本ぽ定植

2月上旬に定植します。栽植様式は、10a当たり8千~1万株程度で、条間3540cm、株間1315cm程度で列ごとにかん水チューブを設置し、黒マルチを使用します。
調整した苗を殺菌剤等で消毒し、植穴に1つずつ芽が上を向くように垂直に定植します。覆土は1cm程度とします。厚く覆土すると出芽が遅れます。定植直後は、かん水むらがないようにジョウロ等を使用し、上部かん水します。

定植後管理

定植後は、ホオズキの生育適温(1525℃)でしっかりと保温します。日中、ハウス内が30℃を超える場合は換気します。かん水は、生育初期は株回りが乾燥しないようにこまめにかん水し、生育や天候に合わせて少量多回数のかん水を心がけます。

最後に

ホオズキは、需要期であるお盆前に出荷する必要があります。そのため、適期作業による均質な苗作りを行いましょう。
なお、紹介した管理は玉名地域での事例となります。時期や期間は地域の環境特性によって異なる場合があるためご注意ください。

県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課

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