いぐさ栽培では通常収穫後に泥染・乾燥(乾燥機)を行いますが、泥染めを行わず無染土で乾燥させる場合は、乾燥に時間を要したり、いぐさ束の根元が湾曲しやすいなどの課題があります。
そこで、その課題を解決するために、既存の乾燥機の背板を可動式に改良し、乾燥途中に段階的に傾斜させることで、いぐさの乾燥速度や湾曲程度にどのような変化があるのかを検証し、効率的な無染土いぐさの乾燥方法を探ることを目的に試験・調査を行いました。
乾燥機背板の可動式への改良で、無染土乾燥時のいぐさの湾曲を軽減
研究のねらい

研究の成果
1.従来の固定式のいぐさ乾燥機の背板を段階的に傾斜できるように、可動式(以下、可動式乾燥法)に改良します。(図2、図3)


2.可動式乾燥法においていぐさを無染土で乾燥させる場合、乾燥開始6時間後に15度、10時間後にさらに15度(計30度)背板を傾斜させることにより、背板傾斜後の含水率が、固定式乾燥法と比べ平均7.8ポイント早く低下しました。(図4)

注1)5か所から5本ずついぐさ茎を採取し、含水率を測定した。
注2)n=2
注3)含水率は、生重測定後ドライオーブンにて70℃で乾燥させ、乾物中を測定し、その差で計算した。
3.可動式乾燥法においては、同様に乾燥後に乾燥不良率が、14.2ポイント低くなっていました。(図5)

注1)乾燥終了後に1束ずつ完全乾燥の有無を確認した。
注2)n=342
4.又、可動式乾燥法においては、同様に乾燥後の湾曲程度が、0.97ポイント低くなっていました。(図6、図7)

図6 乾燥後のいぐさの湾曲の様子



注1)湾曲(大):3点、湾曲(中):2点、湾曲(小):1点とし、各試験区の平均点を算出した。
注2)n=342
普及上の留意点等
1.本試験は平成30年産の「涼風」を使用し、平成30年6月から7月にかけて実施したものです。
2.本技術は、平成28~令和元年度「革新的技術開発・緊急展開事業」(うち地域戦略プロジェクト)で取り組んだ試験研究の成果です。
3.乾燥試験は平成30年6月及び7月に計4回実施しましたが、外気温及び試験実施条件は別紙(図8、表1)のとおりです。


4.可動式乾燥を実施するためには、乾燥機の背板の工事が必要です。試験調査時の背板の稼働は、ウインチを使用して手動式によるものです。
お問い合わせ先
アグリシステム総合研究所 いぐさ研究室
TEL:0965-52-0380
特産
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低温嫌気処理によるγ―アミノ酪酸高含有てん茶の製造技術
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いぐさ「涼風」の追肥を耕種基準より早く始めると、畳表の品質は低下する
CTC緑茶製造工程における標準的な製造時間及び茶葉含水率
蒸し製緑茶製造ラインを用いた加工食品向け粉末茶原料の連続的な生産方法
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