ハウスミカンでは1月中旬に天敵保護資材を用いた天敵放飼でダニ剤を削減できる

研究のねらい

カンキツの重要害虫であるミカンハダニは、露地栽培より施設栽培で発生が多いため、施設栽培では防除回数が増え、薬剤抵抗性が発達しやすく、特にハウスミカンでは薬剤感受性低下が顕著となっています。そのため、施設カンキツで化学農薬に代わる技術として天敵カブリダニ類を用いた試験を実施してきましたが、ハウス内の乾燥等により天敵の効果が不安定でした。
そこで、天敵を乾燥から守り、比較的安定して増殖・定着させる新たな天敵保護資材(図1および写真1)が開発されましたので、ハウスミカンにおいて、天敵保護資材を用いた天敵類放飼によるミカンハダニの防除効果を明らかにしました。

研究の成果

ハウス内にミカンハダニが低密度で発生している状態から、

1.1月中旬に天敵保護資材を用いて天敵を放飼することで、5月下旬までミカンハダニを抑制でき、殺ダニ剤の散布を削減することができます(図2)。

2.天敵を放飼した後、ミカンハダニが増加した場合でも、レスキュー防除を実施することで5月下旬までミカンハダニを抑制でき、殺ダニ剤を削減することができます(図3)。

*レスキュー防除:ハダニの増殖に応じて、天敵の働きを補い臨機で実施する殺ダニ剤の散布    

普及上の留意点等

1.本試験で用いた天敵保護資材は「バンカーシート®」、天敵カブリダニ類は「スワルスキーカブリダニ」です。

2.水切り期後期の乾燥とハウス開放時の気温および湿度の低下により、スワルスキーカブリダニの活動が抑制される場合があります。その時期にミカンハダニの増加が見られたら、レスキュー防除を実施します。

3.他の病害虫として、灰色かび病、黒点病、チャノホコリダニ、カイガラムシ類、アブラムシ類、アザミウマ類の防除が必要と考えられますので、スワルスキーカブリダニに影響の少ない農薬で防除します(参照:農研機構「新果樹のハダニ防除マニュアル」)。

お問い合わせ先

農業研究センター 果樹研究所 病虫化学研究室   【TEL】0964(32)1723